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第1021話

 一行の行く先には崖があり、その先はまさに「何もない」状態であった。
 ボーモは、
「気をつけて下さいよ。この崖から落ちたらおしまいですよ。」
「一体これからどこへ行くつもりなんだ?」
 ベルが聞くとボーモは、
「もう見えてますよ。あそこです。」
「な、なんだあれは!」
 その先を見た部長が思わず言った。
そこには巨人の家と思われる巨大な家。
それだけなら一行にはすでに見慣れたものだが、
その巨大な家は崖っぷちに建っていた。ベルは、
「なんていうところに建ってるんだ。」
 ボーモは、
「実はゲームを拡張するために作られたエリアなんです。
 本来なら未完成のこのエリアには入れないのですが……。」
 ダイちゃん(印付)は、
「でもこのゲームをクリアするためのアイテムがあるんだろ。」
「未完成とはいえ、本来なら崖から離れた場所にあったのですが
 不具合の影響で崖が急速に侵食され、
 いつ崩れ落ちるかわからない状況です。」
 ギニフは、
「巨人はもちろんだが、“時間制限”にも気をつけないといけないのか。」
 部長(印付)は、
「とはいうものの、どこから入ればいいんだ?
 俺たちが入れそうな場所がどこにもない。」
 ボーモは、
「そんなこともあろうかと、既に出入口を確保してあります。」
 部長は、
「もう何があっても驚かないぞ。」
 しかし石本が、
「ええー!なにここー!!」 

第1022話

 出入口といっても壁の隙間で、部長たちは楽々入ることができるが
体の大きな石本にとってはぎりぎりのサイズなのだ。部長は、
「まあ、見張りもいないみたいだし、石本ちょっと様子を見てこい。」
 石本は、
「どう見たって無理!とまでといかないけど、
 途中で詰まって動けなくなったらどうしよう。」
 ダイちゃんは、
「ま、その時はその時で考えたらいいよ。」
 石本は仕方なく壁の隙間に入っていった。
それからしばらくして石本の声、
「助けてー、動けなくなっちゃった。」
 ニショブが、
「やはり彼を偵察に向かわせるのは無理があったんじゃ……。」
 するとボーモは、
「いえいえ、むしろこのほうが好都合、
 チートコードを使いましょう。」
 ダイちゃん(印付)は、
「そんなのがあるんだったら、最初から言ってよ。」
 ボーモは、
「私ができるのはサポートまでですから。」
 しばらくするとまたもや石本の声、
「あのー、なんか周りが狭くなってるみたいなんだけど。」
 ボーモは、
「危険ですからしばらく離れてください。」
 さらにしばらくすると

-バリ、ベキ、バキ-

 石本が入っていった壁の隙間から何やら大きな音が聞こえ、
少しずつ広がり始めた。 

第1023話

 部長は、
「言われるまでもなく、なんかヤバくないか?」
 ダイちゃんは、
「あいつのことは諦めよう。」
 大ちゃんは、
「そんな……。石本のお兄ちゃんがかわいそうだよ。」
 ボーモは、
「彼なら大丈夫のはずです。とにかくここから、早く遠くに。」
 部長たちはボーモの指示に従い、いそいでその場を離れた。

- ドドーン -

 轟音と共に巨人の巨大な家が崩れていく。
そこから何かを持って逃げようとする巨人の姿が見えた。
 ニショブは、
「こっちに来るぞ。」
 すると部長は、
「待て、まだ何か出てくるぞ。」
 逃げようとする巨人よりもさらに何倍も巨大な巨人、
その巨人こそ石本だった。
 部長は大声で、
「おい石本、聞こえるか?今逃げようとする奴を捕まえろ!」
 ベルは、
「聞こえるのか?」
 ボーモは、
「大丈夫ですよ。チートですから。」
 石本は、
「え?何?」
 そう言って周りを見回し、
逃げようとする巨人(石本から見れば小人)と目があった。
しばらくの沈黙。部長は、
「そいつを捕まえろ!」
 しゃがむ石本。逃げようとする巨人(石本から見れば小人)を
簡単に捕まえた。
その頃、石本に向かって高速で何かが近づくのに誰も気づかなかった。 

第1024話

 石本は巨人(石本から見れば小人)を捕まえた手を高く上げ、
「とったどぉ〜!!」
 ダイちゃんは、
「そいつが持ってるものを取るんだ。」
 石本は、
「これかな?」
 すると巨人(石本から見れば小人)は、
「わかった、これをやるから潰さないでくれ!」
 と、持っていたものを差し出した。部長は、
「こっちから確認できないか?石本じゃ頼りない。」
 石本は、
「そんなぁ……。せっかく捕まえたのに……。」
 すると巨人(石本から見れば小人)は、
「とにかく持っているもの全部やる!だから命だけは……。」
 大ちゃんは、
「全部じゃなくていいよ。必要なもがあるんだ。それだけで。」
 ダイちゃんは、
「いっそのこともらえるものはもらっといたら。」部長(印付)は、
 その時である。

-ゴゴゴゴゴ…。-

 部長(印付)は、
「ん、なんだ?」
 そう言ったあと突然石本の足元の地面が崩れ始めた。ボーモは、
「早く逃げてください。予測より崖の崩壊が早くなってます。」
 部長は、
「石本!そこから逃げろ!」
 それを聞いた石本は、巨人(石本から見れば小人)を手に持ったまま
その場から逃げ出した。が…。

-ドドドドドーン!-

 間に合わず、崖の下へ落ちてしまう石本。ダイちゃんは、
「いいやつだったのに、お前のことは一生忘れないから。」
 そのとき大ちゃんが、
「あ、あれは……!」 

第1025話

 それを見たダイちゃんは、
「な、なんで戻ってくるんだ?」
 落ちたはずの石本が、戻ってきたのだ。部長(印付)は、
「こっちの石本は、飛べるのか?」
 部長は、
「そんなはずはないのだが……。何かやったのか?」
 ボーモは、
「いえ、私は何も。」
 戻ってきた石本が、
「ただいまー、この人に助けてもらっちゃった。」
 石本は紫に黄色のラインの入ったコスチュームを着た巨人
(石本と同サイズ)に抱きかかえられて戻ってきたのだ。
ニショブは石本を助けた巨人を見上げながら、
「いったい誰なんだ?」
 ベルは、
「ゲームのお助けキャラなのか?」
 ボーモは、
「そんなキャラは存在しないはずですが……。
 本人に聞いてみましょうか。」
 ギニフは、
「大丈夫か?我々の仲間を助けてくれたからといって、
 味方とは限らないぞ。」
 そう言っている間に石本を助けた巨人は、
部長たちの前に石本を下ろして、
「はじめまして。私はレッド・ビーザといいます。」
 ダイちゃんは、
「レッドなんとかってどこにも赤いトコないじゃん。」
 レッド・ビーザは、
「これはパワーアップした時のコスチュームです。
 残念ながら時間がないのでこれにて失礼します。」
 部長は、
「ちょっと待て。お前何者なんだ?」
「いずれわかります。
 それにあなたたちの活躍はよく知ってますよ。」
 そう言ってレッド・ビーザはどこかへ飛んでいってしまった。
ダイちゃんは、
「あいつも気になるけど、手に入れたアイテムも気になるな。」
 ボーモは、
「今から、説明いたします。」 

第1026話

 部長は、
「ところで石本、そのアイテムはちゃんと持ってるんだろうな。
 落としたなんて言ったら…。」
「あ、どうも。私はこれで…。」
 そのアイテムの元の持ち主である巨人は
部長たちに気づかず逃げるように立ち去った。
石本はアイテムを持った手を上げ
「そんなことないよ、ここに……。あれ?」
 ダイちゃんは、
「まさかこれじゃないかもって言うんじゃないだろうな。」
 石本は、
「そうじゃなくって、なんか重くなってるような…。」
 ボーモは、
「時間切れが近づいているようです。巨大化の。」
 そういった直後、石本が小さくなり始めた。

-ズッドーン-

 重さに耐え切れず、
石本が持っているアイテムを部長たちの近くに落とした。部長は石本に、
「オイコラ石本!あぶねぇだろ!!」
 ギニフは、
「ところでこれは一体……?」
 ベルは、
「何か巨大な卵のような……。」
 大ちゃんは、
「なんか光っていて綺麗だね。」
 ボーモは、
「そうでした。これの説明でしたね。」
 部長は、
「一体これはなんなんだ?」
 ダイちゃんは、
「あれだけ苦労したんだから、それに見合うものじゃないとね。」
 ボーモは、
「そこまで期待に添えるかわかりませんが…。これは乗り物です。」 

第1027話

 ニショブは、
「そうには見えんが…。」
 ボーモは、
「そうですね。
 これを持っていた巨人は何らかの装飾品だと思っていたのでしょう。」
 部長(印付)は、
「で、どうやって使うんだ?」
 ボーモは、
「ほら、ここにドアが…。」
 と、言って巨大な卵のような物体に触れると、丸いドアが表面に現れ、開いた。
中には運転席らしいものが1つ。ベルは、
「一人乗りか。」
 ボーモは、
「さきほど手に入れた『見えなくなっちゃうマント』と、
 組み合わせると偵察もできますよ。」
 部長は、
「でも中途半端なサイズだな。俺たちには大きすぎるし、
 かといって石本には小さすぎる。」
 ボーモは、
「大丈夫ですよ。
 これは乗る人のサイズに自動的に合うようになってるんです。」
 部長は、
「気が進まないが、石本乗ってみろ。」
 石本は、
「今回はちょっと面白そうだからやってみよう。」
 そう言って巨大な卵のような物体に乗り込もうとするとその物体は
石本のサイズに合わせて大きくなった。するとベルが、
「このサイズなら全員乗れるんじゃないか?」
 部長(印付)は、
「あまりいい考えとはいえないが、ゲームを早くクリアするためなら仕方ない。」
 ボーモは、
「そうですね。これで皆さん移動しましょう。」 

第1028話

「帰ってくるのは早かったな。」
 部長が言うとダイちゃんは、
「いいアイテムが手に入ってよかったね。」
 石本は、
「あのー、ここまで運転したのは僕なんですけど。」
 ボーモは
「それでは、あの建物を調べに行きましょう。」
 ギニフは、
「先ほどまで見えなかったが、一体どこに?」
 ボーモは
「皆様が乗ってきた乗り物の屋根の部分にいましたよ。」
 その時ニショブは、
「おい隠れろ!誰か来るぞ!」
 部長(印付)は、
「そうか、『見えなくなっちゃうマント』をつけていても
 気づかれず踏み潰されたら終わりだ。」


「あいつらも、あの建物に行ったみたいだな。」
 ベルが言うとギニフは、
「サイズ的にはあの建物の本来使用するサイズのようだが、
 服装からすると不似合いな感じだな。」
 大ちゃんは、
「あの人たち、何の用事で行ったんだろう。」
 部長は、
「石本!とにかくさっきの連中を追うぞ!」
 ボーモは、
「そうですね。追いかけましょう。」
 部長たち一行は再び巨大な卵のような物体に乗り込み、
建物に向かった巨人たちを追った。


「この辺りなんだが……。」
 ベルが言うと部長は、
「石本!お前の運転がトロいから見失ったぞ!」
 ニショブは、
「一体ここは……。」
 そこに何者かが近づきつつあった。 

第1029話

「あの〜。もしもし。」
 何者かは部長たちの後ろから声をかけた。
呼び掛けに振り向いたダイちゃんは、
「ちょっと今取り込み中だから……って誰だお前!」
 部長は、
「石本!怪しい奴が付いてくるのに気づかなかったのか?」
 声の主は部長たちよりは大きいが、石本よりは小さい
中途半端なサイズだった。
 ベルはボーモに耳打ちするように
「アイツ何者かわかるか?」
 ボーモは、
「正式なゲームのキャラではないようですが、もしかしたら……。」
 その時突然ついてきていた声の主は、
「どちらへお出かけでしょうか…。」
 するとダイちゃんは、
「そんなの僕たちの勝手だろ!大体なんだよお前!!」
「すみません。巨人の集団を追っていたのですが、見失ってしまって…。」
 ギニフは、
「正体はよくわからないがどうも目的は同じのようだが…。」
 部長(印付)は、
「どうする?一緒に連れていくのか?」
 ボーモは、
「私は、同行させても問題ないと思いますよ。」
「ありがとうございます。私の名はザールといいます。」
 ベルは、
「ちょっと聞きたいことがあるのだが、以前からここに住んでいたのか?
 それともどこからからここに引っ越してきたのか?」
 ザールは、
「そうですねぇ…。」 

第1030話

「……来てから1年半くらいになりますかねぇ…。」
 ザールが言うと部長(印付)は、
「ここに来るまではどこに住んでいたんだ?」
「信じてもらえないと思いますが、この際だから…。
 やっぱりやめようかな。」
 するとダイちゃんが、
「せっかく一緒について行ってやるんだから、その位ハッキリしろよ。」
 ザールは、
「わかりました。信じてもらえないかもしれませんが、
 私は外の世界から来ました。」
 部長たちがあまり動揺の素振りが見えないのでザールは、
「あの、私外の世界から来たんですよ。」
「それで?」
 ダイちゃんが素っ気無く答えるとザールは、
「あ、えーっとあなたたちはわからないかもしれません。
 もしかしたらものすごく驚くかもしれませんよ。」
 ボーモは、
「多分、あなたの発言を聞いても誰も驚かないと思いますよ。」
 ベルは、
「ここに来る前に
 と、言うかここに来るのに天使の部下とか言う奴にあっただろ。」
 ダイちゃんは、
「なるほど。他にもいたわけだ。」
 ザールはしばらく黙っていたが突然大声で、
「え、えええ〜っ!」
 ダイちゃんは、
「リアクション大げさなんだよ。」
 大ちゃんはボーモに、
「そうだ、だったらこの人も一緒に連れて行こう。」
 ボーモは、
「そうですね。」
 部長たちはザールを一行に加えて歩き始めた 

第1031話

「それにしても、こんなに長期間クリアできないってどこで…。」
 ニショブが聞くとザールは、
「いや、クリアしようなんて思わなければここは天国でした。
 あの事が起こるまでは…。」
 ベルが、
「この世界が壊れていくということか。
 さっきその現場を見てきたとこだ。」
 部長は、
「ところで天国ってどういうことなんだ?」
「そりゃ死ぬようなことがあっても、
 ステージ最初に戻されるだけですから。」
 ザールが言うと石本は、
「そうか。そう考えれば怖がることなんてないよね。」
 するとダイちゃんが、
「一人が死んだら全員ステージ最初に戻されるんだ。
 巻き添えなんてごめんだよ。」
 ザールは、
「なるほど、グループで来たわけですか。」
 部長は、
「俺たちは通常プレーヤーよりずっと
 小さなサイズでスタートしたからな。」
 ダイちゃんは、
「と、するとさっき行ったあいつらも
 このゲームのプレーヤーなのかな?」
 ニショブは、
「しかし、ただ歩いているだけではどうにもならない……ん?」
 ギニフは、
「どうした?」
 ニショブは、
「これ、あいつらの足跡じゃないか?」
 部長は、
「なるほど、大きすぎて逆に見落としていたな。」
 ボーモは、
「そうですね。これを追っていきましょう。」 

第1032話

「でも、これをたどっていくとなるとずいぶん歩く事になるんじゃない?」
 ダイちゃんが言うとボーモは、
「では、先ほどのあれをつかいましょう。」
「そうだね。」
 ダイちゃんが言うと部長が、
「なるほど、あれだな。」
「なんか一ヶ月以上も放置してるような気もするあれのことだな。」
 ギニフが言うとザールは、
「あれ、と言いますと……?」


 10分ぐらいで部長たち一行は例の巨大な卵のような物体のところまで
戻ってきていた。部長は、
「巨人に踏み潰されていなくてよかった。」
 それを見たザールは、
「こ……これは……。」
 ダイちゃんは、
「もういいよ。いちいち大げさに驚くの鬱陶(うっとう)しいから。」
 ニショブが、
「とにかく、足跡を追っていこう。」
 部長たち一行はザールも含め例の巨大な卵のような物体に乗り込み
足跡をたどることになった。ベルが、
「例の大きな建物に続いていると思うが。」
 部長は、
「いや、この方向はちょっと違うようだ。」
 足跡は途中で大きく曲がり、小屋のような建物に続いていた。
もちろん、小屋といっても巨人サイズなので部長たちから見れば
かなり巨大なものだ。ザールは、
「ここに、入るんですか?」
 ザールを除く部長たちは(石本は躊躇したがダイちゃんに半ば強制され)
全員うなずいた。 

第1033話

「くるぞ!」
 ベルが言った直後、

-ドンドンドーン-

 地震のような振動が起こった。部長が、
「踏み潰されたら元も子もない。全員隠れろ!」
 そう言い終わらないうちに巨大な小屋から巨人が飛び出してきた。
「*□Ж※●!」
 意味不明のことを叫んだ巨人はそのままどこかに走り去っていった。
ダイちゃんは、
「なんだあいつ?」
 その時巨大な小屋から、
「この俺様に勝とうなどとは10万年早いわ!」
 ギニフは、
「あの建物の中に先ほどの巨人より強い奴がいるわけか。」
 ダイちゃんは、
「そんな奴なんか、僕が巨大化してすぐやっつけてやるよ。」
 部長は、
「回数制限のこともあるからな。いきなり使って大丈夫か?」
 ボーモは、
「既にステージごとに13回に緩和してますよ。」
 ベルは、
「そういうことはもっと早く言ってくれ!」
「なら、巨大化して小屋ごと踏みつぶそう。」
 ダイちゃんはそう言うと巨大化のポーズを始めた。すると部長が、
「ちょっと待て、巨大化の制限とかがあるんじゃないか?」
 するとボーモは、
「一応制限ははずしてあるはずですが……。」
 ダイちゃんは、
「じゃあ、おもいっきりやってやる!」
 巨大化をはじめるダイちゃん、
しかしその直後思いがけないことが起こったのだ。 

第1034話

- ズブッズブッ -

 ダイちゃんの巨大化が進むと重みで足元が沈み込んでいく。
それだけならまだいいが、沈み込む時の音が変化し始めた

- メリッ、バリッ、ピキピキピキ…… -

 まるで故障寸前の機械が悲鳴を上げるような音が
巨大化するダイちゃんの足元から聞こえてくる。そして、

- バリバリバリッ! -

 大きな音とほぼ同時にダイちゃんの足元に突然巨大な穴があいた。
「うわっ!!」
 そう叫んでダイちゃんはその穴に落ち込んでしまった。
が、巨大化はまだ続いていたため穴に蓋をするような形になった。
部長は、
「巨大化をやめるんだ!このままだと大変な……。」
 部長が言葉を言い終わらないうちにダイちゃんの巨大化は止まった。
ダイちゃんは、
「地面の底が抜けるなんて……でも前にもこんなことがあっような。」
 そう言って穴からはいだし、元のサイズに戻った。
そのときザールが、
「大変です!逃げて!」
 その直後、さきほどまで巨大化していたダイちゃんがはまっていた
穴が崩れて広がり始めた。

- ガラガラ、ガラガラ -

 穴は例の巨大な小屋付近付近まで広がり、
ついにその小屋まで傾き始めた。
「何が起こった!」
 巨大な小屋から巨人が飛び出してきた。 

第1035話

- ドンドンドーン -

 小屋から飛び出した巨人は、轟音を響かせて何処かへ行ってしまった。
「やったな。結果オーライという気もしないでもないが。」
 部長が言うとザールは、
「なんか重要な情報を持っているっぽい感じだと思うんですけど。
 追わなくていいんですか?」
 ニショブが、
「そういえば、あのでかい卵みたいなのは無事か?
 あれがもし踏み潰されたりしてたらまずいぞ。」
 ダイちゃんは、
「あ、それなら大丈夫みたいだよ。」
「移動については一安心だな。」
 ギニフがそういった直後、突然空中にウィンドウが開いた。
「ああ、やっと連絡がついた。」
 あの天使の部下だった。ダイちゃんは、
「なんだよ。今頃になって。」
 ボーモは、
「何かありましたか?今のところこちらは無事ですよ。」
 部長は、
「うーむ、これからどうなるかはわからんが。」
 ダイちゃんは、
「それにしてもなんかキャラ変わってない?」
 ボーモは、
「いつもどうりですよ。」
 ダイちゃんは、
「なんか無茶な注文でも言うんじゃないだろうな。」
 天使の部下は、
「いや、もうそれどころじゃなくなった。
 知っての通りこの世界の崩壊が早まった。
 速やかにここから脱出してほしい。」 

第1036話

 部長はボーモのところに行き、天使の部下に向かって話した。
「ちょっと待て ゲームクリアの件はどうなったんだ?
 今までの感じではこいつからの話を含めてどうあっても
 ゲームをクリアするってことじゃないのか?」
 ダイちゃんは、
「しなくていいってのなら、ちょっとは助かるけど。」
 ボーモは、
「事態は思ったよりかなり深刻化してるということですか?」
「そうだ。悪いが自力で脱出して欲しい。」
 天使の部下が言うとダイちゃんは、
「ほぅら。やっぱり無茶な注文を付ける。」
 天使の部下は、
「無茶と言われても仕方がない。脱出に成功すればすべてを話す。」
 ギニフは、
「今話さないのか?」
 天使の部下は、
「今は詳しく説明する余裕がない。」
 ベルは、
「まったく。一体何を考えてる。本当のことを……。」
 その時ザールは、
「本当に余裕ないみたいですよ。ほら。」
 ダイちゃんが巨大化時にあけた穴がどんどん広がり、
部長たちのすぐ後ろまで迫っていた。部長は、
「仕方ない。ここから脱出だ!
 とりあえずあのでかい卵みたいなのに乗るぞ!」
 部長たち全員は例の巨大な卵のような物体に乗り込み、
その場を離れた。しばらくしてザールは、
「ところで脱出って、出口はどこにあるんです?」 

第1037話

 全員が一瞬沈黙した。そのあとベルがボーモに、
「まさか出口のことを聞いてないって言うんじゃないだろな。」
 ニショブが、
「出口のことでちょっと気になるんだが、
 あいつはどこから入ってどっから出て行ったんだ?」
 ダイちゃんが言った。
「あいつって誰だよ。あ、レッド・ビーザって言ってた……。」
「なんだと!レッド・ビーザだと!」
 その声に全員が振り向いた。言ったのはもちろんあの天使の部下だった。
巨大な卵のような物体の内部モニターにその顔が映っていた。部長は、
「いつの間に……。
 まぁ、ちゃんとアドバイスとかしてくれるんなら助かるが。」
 ベルが、
「なんかあいつのことについて知ってるのか?」
 天使の部下は、
「奴は、このゲームプログラムを共同開発した。奴なら……
 奴をどこで見た!」
 ボーモは、
「例のこのアイテムのある家付近で見ました。」
 天使の部下は、
「なるほど、わかった。今調べる。」
 その直後、モニターの天使の部下は消えた。ダイちゃんは、
「まさか、消えたまま出てこなかったりして。」
 ギニフは、
「ないとは言い切れない。冗談で済めばいいが。」
 さらにしばらく時間が経過した。部長が、
「うーむ、冗談ではすまなく……。」
 その時、再びモニターに天使の部下が現れた。
「調べるのに多少時間がかかったが。出口がわかったぞ!」 

第1038話

 ベルが、
「なんだと!」
 ダイちゃんは、
「わかってもそこに到達するまで大変だったら意味がないよ。」
 天使の部下は、
「本当にすぐだ。上を見たまえ。」
 部長たちが上を見ると雲の形が

"EXIT"

 と、なっていた。部長は、
「あまりにも分かり易すぎるだろ。」
 ボーモは、
「これは盲点でした。急ぎましょう。」
 部長たち一行は巨大な卵のような物体で、わかりやすい出口を目指した。


「今までの苦労はなんだったんだというくらい、あっけなかったな。」
 ゲームの世界からの脱出に成功した部長たち一行。
その部長からの第一声だった。その部長一行を見下ろす天使の部下、
「大変だったな。約束通り知っていることをすべて話そう。」
 部長は、
「それは大いに助かるのだが、最初の約束を忘れていないだろうな。」
 天使の部下は、
「もちろんだ。川はちゃんと埋めておく。」
 ニショブが、
「まず、あのゲームは何のために作ったんだ?
 ただの趣味でと、いうわけではないだろう。」
 天使の部下は、
「よし、わかった。そのことから話そう。」
 部長たちは沈黙した。天使の部下は、
「あのゲームはある目的を達成できる人物を探し出すために作ったのだ。」 

第1039話

 ベルは、
「つまり、何らかのテストだっということか。」
 天使の部下は、
「そうだ。その前に約束を果たさないとな。」
 そう言うと天井から何かスルスルと降りてきた。
それはある程度の高さでぱっと広がり何かを映し出す
スクリーンとなった。そこに映し出されたのはあの川だった。
それを見ていたニショブが、
「な、なんだあれは!」
 川に何かがわらわらと集まってくる。
よく見ると、たくさんの人のようだ。
「あいつら、もしかしてここに来たとき俺たちを
 巨大なコーヒーカップに放り込んだ……。」
 部長が言うとベルが、
「あんなにたくさんいたのか。」
 部長は、
「石本も大量に分身ができたな。」
 石本は、
「嫌なこと思い出させないで。あの時はあの時で大変だったんだから。」
 とかなんとか色々部長たちが話しているうちに川は埋まってしまった。
天使の部下は、
「これで約束は果たした。
 君たちが今までやってきたゲームについて話そう。」
 ギニフは、
「確か“ある目的を達成できる人物を探し出すため”と、言ったな。」
 天使の部下は、
「そうだ、私の兄を倒せる人物を人物を探し出すためだ。」
 ダイちゃんは、
「まさか、
 兄弟げんかの助っ人になってくれってんじゃないだろうね。」
 部長は、
「ちょっと待て、そういえばあいつに似てるような気がする。」 

第1040話

 大ちゃんは、
「そういえばボーモさんが名前を言ってくれたよね。確か……。」
「ムァルーイ様です」
 ボーモが言うと部長(印付)は、
「なんかしばらく出番がなかったような気がするが、この名前は……。」
 しばらくの沈黙のあと、誰ということなく
「「「マジューイ」」」
 ベルが、
「あいつの知り合い!?まて、兄とか言ってたな。もしかして兄弟か?」
 天使の部下はうなずいた。ダイちゃん(印付)は、
「まさか、ゲームとかなんだとか言って僕たちのことを調べて
 報告とかしてたんじゃないだろうな。」
 大ちゃんは、
「でもこの人はそんな悪い人じゃないと思う。」
 部長は、
「いいか悪いかはともかく、すぐに俺たちに危険が及ぶわけでもなさそうだ。
 嘘を言ってるようにも思えないし。話だけでも聞いてみよう。」
 天使の部下は、
「済まない。話を続けよう。ゲーム自体結果的に壊れてしまったが、
 クリアーできれば兄を倒せる能力があると、いうことだ。」
 ベルが、
「もし、ゲームが正常に機能して我々がクリアーしていたら
 マジューイのところへ送り込むつもりだったのか?」
 天使の部下は、
「本当なら気が進まないが、選択肢がそれしかなくなってしまった。
 今は、それすらできなくなった。」
 部長は、
「どういう事なんだ?」 
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