<作>浦沢直樹 小学館 全29巻 |
柔道家の猪熊滋五郎の孫娘として生まれた、柔道の天才少女・猪熊柔と、さえないスポーツ新聞記者・松田耕作とのスポーツラブコメ。この漫画の影響で柔道の強い女の子をヤワラちゃんと呼ぶようになったのは、有名な話。(と思っていたが、最近は知らない人のほうが多いらしい)
内容的には、柔道嫌いの柔が富士子やジョディーと知り合っていくうちに、そしてなにより松田のスポーツへの直向きな愛情に支えられて、自分の中にある柔道への愛着を再確認していく、というような展開。これに、柔の父親がライバルのコーチとして登場したりといろいろあるわけなんだけれども、彼女の恋心が段々風祭から松田に移行する過程が上手く描かれているように思う。この漫画で、浦沢作品に出てくるタイプのキャラがほぼ出揃った感がある。さやかお嬢様、風祭、邦ちゃん、どれもその後の彼の作品にでてくる人物の基本形となっている。
彼はこの漫画に代表されるようなコメディ路線と、『MASTER KEATON』に代表されるシリアス路線の両方を描き分けられる作家だが、コメディ路線の中ではこれが一番面白いと思う。とにかくじれったいというラブコメの王道をいっているのだが、浦沢直樹の卓越した画力に裏づけされた柔道の試合のシーンも、十分に見ごたえがある。これを描くのには随分と苦労しただろう。
なにより柔ちゃんが可愛い。もう男としては、この一言に尽きる漫画。松田が羨ましい限りである。最後のシーンでちゃんと決着がついたとき、こちらまでなんだか嬉しくなってしまった。邦ちゃんの身の引かせ方だとか、風祭がいい気味だとか、読者がそうなって欲しい、というところを実に上手くついている。テレシコワが母親と会話するシーンなどの何気ないところもしっかり作られているし、浦沢直樹という人は、本当にエンターテイメントを生み出す才能があるんだなあ、ということを改めて確認させられる。
アニメも作られたが、こちらもそこそこによい出来栄えだった。原作に忠実だったためか、見ていて嫌な感じはしなかった。ちなみに実写版の映画も作られたが、こちらは止めた方が身のため。
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