愛のさかあがり

<作> とり・みき  
筑摩文庫(上、下) 

 なんちゃって家族には笑った


今はなき雑誌、平凡パンチで連載された漫画エッセイ。非常に人気のある連載だったらしく、エッセイ中で触れられているように作者のとり・みきはテレビにまで出演している。エッセイ漫画といっても、『ゆうきまさみのはてしない物語』に代表されるような身辺雑記ものではなく、どちらかというと深夜番組のノリである。

一応主題としては、漫画家ミキオ(とり・みきのこと)ちゃんの愛を求める探訪記ということになると思う。が、この作者をして一般的意味での「愛」のはずもなく、その愛を求めるパワーはこちらの思いもつかぬ各方面へと波及していくのであった。今ではすっかり有名になってしまい、またある程度定着した感のある路傍探検ものとか、あるいはこれまた定番の怪談やら金縛りやらの不思議体験談なんかを愛の名のもと収集して回るのである。マスメディアについての考察もあって、その観察眼は大したもの。他には有名人へのインタビューや旅行先での与太話、作者がどこぞから拾ってきたと思われる笑える話などがある。路傍探検ものとしては「街角のオジギビト」を読者からの投稿を募って収集、研究するものが面白かった。当時はかなり奇抜なアイディアだったろう。今はみうらじゅん氏らの努力により、少々食傷気味の感すらあるが。
そんななかでも、「イタイ話シリーズ」は不朽の名作だろう。あなたは漫画を読んでいて痛くなったことありますか?体験したかったらこの漫画を読んでみよう。本当に痛い。思い出すだけで痛くなる話が満載である。          
  
あと、キャラクターがよい。とり・みき自身のサングラスをかけたキャラクターも良いが、やはり、下北沢BOOKSオリーブ店員・田北鑑生(当時27)なる人物のアヤシサが際立っている。分度器の丸い部分を下にしたかのような目つきがそもそも怪しいのだが、何にもしてなくてもただ立ってるだけで怪しい。異様な存在感である。こういうのをキャラが立っていると言うのであろうか。おそらく実在の人物がモデルなのだろうが、一度お会いしてみたいものである。 

で、この漫画でいうところの「愛」とは何なのかと言うと、情を感じるというその行為全体のことを指すのだと思う。そこには男女の愛も含まれるし、石ころを集めて悦に入ることもまた愛だ。でも、男女の直接的で性的な愛というよりかは、それをみてなにか感情を抱くと言う行為のことを指している。石ころを集めるにしても、石の特徴を見つけ出す行為そのものへの愛であるといえるだろう。それはまあ、ひねくれたマニア的な愛の感情であると言えるかもしれないが、だから「さかあがり」なんですね。

とり・みき本人があとがきで言っているように、「作者が主人公として動き回るエッセイ・コミック」という意味で、この漫画は確かに先駆的作品であったといえそうだ。男性誌に載っていたので下世話な話が多く、女性向とはとても言えないところが欠点だが、それでも名作といっていいのではないですかね。
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