BEAST TALES

<作>坂田靖子
潮出版社
 円熟の味わい 

坂田版グリム童話。子供のころ、誰もが親しんだ童話をアレンジしてある。眠り姫のその後を描いた「お妃と眠り姫」や、だいぶイメージと違う精霊がでてくる「ガラスのくつ」などが所収されている。しかし、題材となっている童話の細部を随分忘れてしまったため、どこがアレンジされているか明確に指摘できない。困った。題名も微妙に違う。「猫だんな」やら「ランペル・スティルツ・キン」はかなり原作に忠実な気がするが・・・。考えてみれば、そもそもほんとの原作を読んだ人なんてあんまりいないんだろうね、多分。もとの原作は、童話というよりも大人の話だっため、かなり趣が違うという話だが、実際どうなんだろうか。本来民話を集めたものなのだろうから、かなりグロテスクなのやエロティックなものが含まれるのはわかる気がする。

表題を「BEAST TALES」としたのは、そういうグリム童話とは違うものですよ〜、という意思の表明なのかもしれない。彼女のこの手の作品に出てくる不可思議な存在、たとえばお化けとかオウガとかは、基本的に親しげである。人に危害を加える場合でも、何か愛嬌のある存在だ。恐怖の対象という感じではないのである。その意味での「BEAST」なのかもしれない。

とりあえずそれはそれとして、以前から何度も言っていることだが、この人はこういった童話的な話を描かせると、どうもちょっと他に比べられる人がいない。すばらしい完成度である。この短編集は名作『アジア変幻記』の後に出ているのだが、それと同じ感触でヨーロッパ編を描いてみたと言うところだろうか。ただ、『アジア変幻記』が創作(でないとしても、一般的ではない作品のアレンジ)であるのに対して、こちらは超有名な原作付きである点に違いがある。好みの問題と、私が原作を大分忘れていることも大きく影響しているとは思うが、全体としては『アジア変幻記』の方が面白みがあったように思う。あちらの方が、彼女らしさがよく出ているように思えたのだ。どうもこちらは、原作に遠慮しているような印象を受けてしまう。
絵の方は、線に迷いが殆どなくなり完成の粋に達している。坂田靖子は意外と作品によって絵柄を変えたりするのだが、個人的にはこの作品に使われている絵が一番好きである。彼女の持ち味が遺憾なく発揮されているように思う。

この本も単行本の方は絶版になっているみたいだが、同じものが坂田靖子セレクションとして、文庫本になっている。
昔、絵本が好きだった人ならば、買って損はないのでは。私は好きです、こういう漫画。
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