伊平次とわらわ

<作>坂田靖子
潮出版社  全2巻

 よく考えてみると、ポクポク人が死んでるぞ

潮出版社からでているものとしては、一番最近の作品である。そのためか、『天花粉』からはじまる、彼女の潮系ファンタジー作品の集大成的な感がある。その理由としては、この作品が彼女のオリジナルである点があげられるだろう。今までの作品には、原作付きか、あるいはもととなった作品があることが何となくわかるものが多かった。それがその作品のテーマにもなっていたりもした。しかし、この作品は少々違う。伊平次やわらわは、おそらく民話の中から得たモデルではないだろう。いるのかもしれないが、彼女の中で消化されてしまっている。もはや、完全に彼女独自のキャラクターだ。話の内容も、彼女が考え出したものが多そうである。しかも、初期のファンタジーの趣は少ない。系統としては、明らかに今までの潮系ファンタジーの流れを汲んでいる。彼女は、今まで描き続けてきた作品世界を、この作品で自分の世界として物にしたと言えるかもしれない。

物語は、墓守の伊平次のところに物をしゃべる犬がやってくるところから始まる。どうやら野良犬にどっかの姫君の霊が乗り移ったらしいのだが、彼女にその自覚は殆どない。しかも野良犬の本能も残っており、妙な具合で姫君の霊と合体してしまっているのである。自分のことをわらわ、わらわと呼ぶので、伊平次はその野良犬を「わらわ」と呼ぶようになり、そのうちに、いろいろゴタゴタが起きるといういつものパターンが続く。

わらわは本来一話目でのみの登場予定だったらしいが、キャラクターが立っているために3話目以降レギュラー出演、という経緯のようである。確かに、この卑しさと気位の高さが同居しているアンバランスさは、中々捨てがたい魅力がある。

墓守の伊平次は、彼女の作品にはよく出てくる暇なお兄さん(実際は結構忙しそうだが)といったポジションだ。けれども、どこかの書評で読んだのだが、彼の特徴として、ご先祖から譲り受けた魔除けの刀を所持していることを挙げている人がいた。つまり、人の理の外にいる者よりも優位に立っているのである。この指摘は鋭い。このようなタイプの主人公は、彼女の作品の中では珍しい。そのせいか話にも起伏がつき、誰が読んでもそこそこ楽しめる仕上がりになっている。

彼女の代表作の一つといっても、そう間違いではなさそうな出来栄え。おすすめ。
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