希望ヶ峰学園からスカウトが来て、しかも入学することになったのは、まさに青天の霹靂だった。
 料理の道を志し、身を投じている。そんな高校生は世の中に数え切れないほど居るはずで、しかも1期上に“超高校級の料理人”の称号を持って在籍する生徒がいるというのに。……被りとか気にしないのだろうか、希望ヶ峰学園は?
 だけど親も師匠も大喜びで、二つ返事で快諾。笑顔で送り出されては何も言えなかった。
 これから私はどう呼ばれるんだろう。「今期入った超高校級の料理人」とか「女のほうの……」とか。「どっちかっていうとシェフじゃなくてコックさんっぽい方の……」これは長い。そして二番煎じ感がつらい。

 師匠もかつては希望ヶ峰学園の生徒で“超高校級の料理人”と言われていたらしいけど、在籍中に料理人は自分一人だったと言っていた。
 1期違いでは、間違いなく彼と比較されてしまう。今や彼は言わずもがなの有名人。腕も確かだ。…………間近で技術を見られると思えば、最高の機会……そう考えることにした。まだ、わだかまるが。
 ともあれ、渋る気持ちはあったもののスカウトされて嬉しかったのは事実だった。
 師事して早十年……いつまでも師匠のお世話になっているわけにもいかない。希望ヶ峰学園への入学は、これから独り立ちをするためのいい切っ掛けになると思った。

 だから私は自分の足で、ここにやって来た。
 校舎の前に立つ。パンフレットで見たままの景色が目の前にあった。今朝は晴天、新生活の幕開けにはぴったりだった。

 玄関ホールのドアを開けてみる。初めての場所に足を踏み入れるのは、少しドキドキする。
 まずはロビーで教室の位置を確認したい。こういう時は生徒会や先輩が誘導しているはず――――
「…………?」
 突然、視界が歪んだ。目眩? 立ちくらみ? 貧血……? どれとも違う…………――

 ――今まで体験した何とも違う感覚を覚えながら、私の意識は飛んだ。





 ……意識を失ったのは、ほんの一瞬だった、と思う。
 ほんの一瞬のはずなのに、気付いたら校舎の中に居て、近くには『8時に玄関ホールに集合』と落書きみたいな文字の手紙があった。
 まだ要領がつかめないけれど、あてもないのでそれに従って玄関ホールに戻ってみる。すると、私と同じ入学生が同じような体験をしてきたと言う。ますます奇妙だ。
 話を聞いたり自己紹介をしてみたら、私の同期となる人たちはびっくりするほど強烈で個性的な人たちばかりだった。名前を聞いたことのある人もちらほら。それぞれの分野のエキスパートで、ちょっと異世界の住人に思える。
 「ただの幸運で選ばれただけだよ」と謙遜しながら言ったあの男子だって、それだけでもすごいし、何だか可能性を秘めている気がしてしまう。
 やはり希望ヶ峰学園は普通の学校ではないんだと、実感してきた。

 そんな彼らと話せば話すほど、この学園はおかしな事ばかりで不安になっていく。
 窓に鉄板、持っていたはずの荷物がない、入ってきた玄関ホールも塞がれている。もしかして事件に巻き込まれている? 誘拐? 口にされる物騒な言葉にも煽られる。
 最年長の人は「学園が企画したオリエンテーションかなんか」だろうと言うけれど、そこまで楽観的には思えなかった。

 間もなく、何とも形容しがたい声質の校内放送が入って、今度は体育館へ移動する。漠然とした不安は拭えなくても、これも行くほかになかった。
 垂れ幕に絨毯、椅子の並ぶ、ハレの装いの体育館。しかし私たち以外に人はいない。
 全員揃ったところで、壇上から飛び出すように現れたのは――クマだった。
 体の縦半分が白、もう一方が黒。白いほうは普通だけど、黒いほうは獰猛な顔立ち。動くぬいぐるみのようなそれが、先ほどの放送の声の主だった。


 “学園長”モノクマと名乗ったそのクマによって、入学式は一方的に始まり、そして終わった。
 ……今、私は、大混乱だった。
 『私たちは、これからこの学園内だけで一生共同生活をする』
 『ただし誰かを殺した生徒だけは、この学園から“卒業”し外に出られる』
 モノクマが言ってきたことは唐突すぎて、突拍子もなさすぎて、受け入れられるものではなかった。
 それでも、ただの冗談とも思えなかった。
 『“校則違反”は罰せられる』という警告が、生半可なものではなかったから。
 モノクマに対して実力行使に出れば、ソレが周りに構わず爆発するのだと、目の前で見てしまった。

 今日初めて出会った、まだ馴染みのない周りの人たちを見回す。みんな困惑していた。
 嘘か本当かではなく、この話を本気にするヤツがいるかどうかが問題だ。そう冷静に言い放ったあの男子こそ、本気にしているのか、どうなのか。
 ――ここで一生暮らすか、人を殺してでも外に出るか。
 世界の“希望”である私たちが殺し合う、“絶望”的なシチュエーション。そんな事をさせる意味は、理由は……わかるはずもなかった。


>>>PROLOGUE_END


< コロシアイ学園生活 in 私立希望ヶ峰学園 >
【 MEMBER:78th class 】

・苗木誠 a.k.a“超高校級の幸運”
・石丸清多夏 a.k.a“超高校級の風紀委員”
・十神白夜 a.k.a“超高校級の御曹司”
・大和田紋土 a.k.a“超高校級の暴走族”
・桑田怜恩 a.k.a“超高校級の野球選手”
・山田一二三 a.k.a“超高校級の同人作家”
・葉隠康比呂 a.k.a“超高校級の占い師”
・舞園さやか a.k.a“超高校級のアイドル”
・霧切響子 a.k.a“超高校級の???”
・朝日奈葵 a.k.a“超高校級のスイマー”
・腐川冬子 a.k.a“超高校級の文学少女”
・大神さくら a.k.a“超高校級の格闘家”
・セレスティア・ルーデンベルク a.k.a“超高校級のギャンブラー”
・江ノ島盾子 a.k.a“超高校級のギャル”
・不二咲千尋 a.k.a“超高校級のプログラマー”
and...
灯滝(ひたき)実ノ梨(みのり) a.k.a“超高校級の料理人”


>>>生き残りメンバー 残り16人

>>>To Be Continued.

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(→PROLOGUEあとがき)

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