4階まで来ました。
続・氷結クリフト
その四 「お勉強の時間」
「さぁ、お勉強の時間です」
「えー。やだ」
冒険の旅に出たとはいえ、アリーナ姫の勉強時間がなくなったわけではありません。
一応は神官学校を主席で卒業した模範生、今は教師役のクリフトが、自室のテーブルに山のような書物を積み上げ、アリーナ姫を迎えました。
「聖書の書き写しはやったでしょー?」
勉強嫌い、というよりはじっと座っているのが嫌いなアリーナ姫は、渋々といった表情で机の上の教科書を眺めます。
「今日は、ほ、ほ保健体育の授業です」
「ほけんたいく?」
クリフトは鸚鵡返しに言って首を傾げる愛らしいアリーナ姫にどきどきしながら言いました。
「い、いえ! 別にやましい事はありませんよ!」
「?」
クリフトはもじもじと指を遊ばせた後、学習予定のページをパラパラ捲って焦り始めます。
「姫様に部位を見せて恥ずかしがるのを楽しもうとか、
「無理矢理隠語を言わせて愉しもうとか、決してそのような理由では――!」
「そんな理由か……」 (ゴゴゴゴゴゴゴゴ……)
「淫乱ドエロが調子に乗りおって!」
そう言って老魔術師が凍室と化したクリフトの部屋から出て行けば、テーブルの側には一際大きな氷柱(しに)がそびえていました。
「さぁ、別のお部屋で魔法のお勉強をいたしましょう」
「えー」(げんなり)
哀れ、氷結クリフト。
「哀れ」でもなんでもない。
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