6階です。もう戻れません。
続・氷結クリフト
その六 「呪文は唱えずに」
「ラララお洗濯ー」
今日の洗濯当番はクリフトです。
裸の上に鎧を着ているライアン以外の男性衣類は持ち回りで洗濯することになっており、洗濯カゴから洗いざらしの衣類を取り出したクリフトは、次々に洗濯紐に縛りつけていきます。
「ラララ柔軟剤ー、……ってはぁぁあぁ!!」
洗濯カゴの中から、なにか見つけたようです。
「こ、ここコレはまさか! ヒモのおぱんつ!」
脱水を終えてねじねじになった衣類の隙間から、チロリと白いヒモが出ているではありませんか。
「こ、こんなセセクシーな下着を……まさか姫様!?」
モンバーバラの美人姉妹の可能性を一蹴し、最も低確率であろうアリーナ姫のものと確定しているところがおめでたい性格をしています。
「姫様ったら、こんな下着を身につけるようになられて! いつのまに!」
純粋で可憐で愛らしいアリーナ姫が、こんなエッチな下着をつけて野山を歩き、ひいてはモンスターとの戦闘でカカト落としをキメていたのかと思うと、クリフトの鼻からは自然と生温い鮮血が溢れ出るのでした。ハァハァ。
「ま、まさかコレで私と 勝 負 なさるおつもりではっ! ぶはぁ!」
クリフトはわなわなと震えながら、頼りなく顔を覗かせた純白のヒモに手を近づけます。
他の衣類に絡んだそれを引っ張り、そのまま自らのポケットへ忍ばせようとヒモに指がかかったその時。
「クリフト、ワシのふんどし知らんかの」
「ギャー!」
「何か悲鳴が聞こえたんだけど」
「クリフトがくたばってしまいましたが、はて」
声を聞いてやってきたアリーナ姫の前には、精神の凍結によって仮死状態になってしまったクリフトと、「あった」とフンドシを手に疑問符を浮かべ続ける老魔術師という、奇妙な光景が広がっていました。
哀れ、氷結クリフト。
精神的に氷結しました。
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