8階まで来ました。
続・氷結クリフト
その八 「おそろいの服」
「あ、クリフトの上着」
宿屋の滞在中のアリーナ姫は、ソファに掛けられたクリフトの上着を見つけました。
「ぶかぶかだー」
興味本位で羽織ってみれば、裾も袖丈も余ってしまいます。
こんな時は世紀末のアホ神官といえども男性らしい部分を感じるようで、アリーナ姫は苦笑に笑顔を零しながら、彼の上着をギュッと抱き締めました。
「うふふ、」
アリーナ姫がそんな心地よい恋心に包まれた時、
「ひ、姫様!」
「わ、わわっ!」
突然彼の声に驚いて振り向けば、更に衝撃の光景が。
「ク、ククリフト!!」
「姫様、私も同じ気持ちでございます!」
またしてもアリーナ姫の服を着たクリフトが、待ってましたとばかり両手を広げているではありませんか。
「千切れそうだよ!」
危うく悲鳴を挙げそうになったアリーナ姫は、それでもツッ込まなくてはならぬと、ぱつんぱつんのワンピースを見て言いました。
しかしクリフトにはそんな冷静も届かない様子で、
「姫様に包まれた今の私は、この上ない幸福に満たされております!」
「クリフト」(いい加減にして)
「嗚呼! 私は身だけでなく、心も貴女になりたい!」
そうしてクリフトがずんずんと近付いてアリーナ姫を抱き締めようとしたその時。
「死んでも治らぬ脳ミソなら、二度と存在するでないわぁッッッ!」
「そのような上着、捨ててしまいなされ」
そう言って老魔術師がクリフトの上着をゴミ箱に投げつけた後には、アリーナ姿の気色悪い氷柱(目に毒)が数日間ロビーに漂うことになりました。
哀れ、氷結クリフト。
もうド変態。
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