もう帰っていいですか。
魁!氷結クリフト
第6幕 「モンバーバラ劇場」
劇場の観覧席へ向かうつもりが、何故かステージへとあがってしまったアリーナ姫。
「おっ! 飛び入りかー!?」
「いいぞー! 何かやれー!」
「とりあえず脱いどけー!」
突然の展開にお客さんも大盛り上がり。
「ど、どうしよう」
アリーナ姫は観客の野太い声に戸惑いましたが、後ろに居たマーニャが彼女の背中を押すようにして言いました。
「まぁまぁ。ここは華麗に踊っておきましょ」
「えぇ〜」
「いいからいいから」
彼女に促されるままステージの中央へと運ばれたアリーナ姫。客席も飛び切りの美人と可愛らしい少女の登場に更に声を大きくさせます。
ここは覚悟を決めるべきか。
マーニャの微笑につられて、アリーナ姫が声援に応えて両手を挙げようとしたその時。
「ひっめさま! ひっめさま!」
「ク、クリフト!」
客席の最前列に「姫様命」のハチマキをしたクリフトが、目を血走らせながら拳を突き上げているではありませんか。
「ひっめさま! ひっめさま!」
「ちょ、クリフトなんでそんな所に」
「ウヒョー!!!」(奇声)
まるでアイドルに声をかけられた熱狂ファンのように、失神しそうな雄叫びを挙げるクリフト。
アリーナ姫とマーニャがそんな彼をどうしたものかと呆然と眺めていたその時。
「醜態はその存在だけにしておけい! このダニ助めがアァ!」
「誰じゃ生ゴミを持ち込んだのは!」
そう言って老魔術師が路地裏に佇むポリバケツの隣に氷柱(しに)を立てかけた後は、残飯を狙うノラネコさえ近付かなかったということです。
哀れ、氷結クリフト。
えーりん!えーりん!
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