あともう少しお付き合いください。
暁!氷結クリフト
第16弾 「お残しは許しまへん」
「セロリ、嫌い」
「食べ残しはよくないわよ、アリーナ」
アリーナ姫がスープ皿の端っこにセロリの山を築いていくのを見て、ミネアは咄嗟に言います。冒険中は十分な食材が得られる機会も限られているうえ、普段の健康に加えて強靭な体力も培わなくてはならない以上、好き嫌いはよくありません。
「クリフトにあげる」
アリーナ姫はミネアの叱責から逃れるように、向かいに座るクリフトのスープ皿へとセロリを運びます。
「こら、アリーナ」
「だって苦いんだもん」
これには勇者も窘めようと口を開きますが、
「不肖クリフト! 謹んで拝受いたします!」
セロリを運ばれたクリフトの方も有難く受け取っている始末。
「クリフトも甘やかすなよ」
普段の神官ならば、寧ろ旅の仲間として彼女の我儘を注意する筈なのに。
ソロが頭を抱えながら彼を見つめていると、クリフトは興奮の後に激しく鼻血を迸らせて言いました。
「姫様に与えられるものは、このクリフトが全て食べて差し上げます!」
「おい」
この盲目アホ神官、とソロが悪態を吐こうとした時、
「い、いずれは姫様も……っ!」
妄想<※はい妄想開始>
妄想「セロリ食べて」
妄想「はいっ! 喜んで頂戴致しますっ!」
妄想「これも、これも。あーん」
妄想「あぁんっ! 姫様が直々に私のお口に運んでくださるとはっ!」
妄想「クリフト、ついでに私も食べちゃって。うふっ」
妄想「あぁ、姫様! そのような事は!」
妄想「残さず食べてね? きゃっ」
妄想<※はい妄想暴走爆走>
「いただきますっ! い!た!だ!き!ま!す! ぶはぁ!!」
「腹いっぱい喰わせてやるわぁっ!! 氷をなァァァァッッッ!!!」
「姫様も残飯でダニを育ててはなりませぬぞ!」
「えー」
全身どころか胃袋まで氷攻めに遭った神官が人柱となった側で、再びセロリを戻されたアリーナ姫は、食べ終わるまで食卓を立つことは許されなかったということです。
哀れ、氷結クリフト。
セロリうまいよ。
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