レベルは目安です。(嘘)
氷結クリフトの冒険
LV.7 「まるでガマ油」
「姫様、ここは一度撤退しましょう」
「イヤよ!」
最もHPの少ないブライ老が死にました。
クリフトの頼りない魔法力も尽きた今、キメラの翼を使ってサランの町まで戻ろうと彼は提案しましたが、テンペの町を目前にして後戻りする事はアリーナ姫の性格が許しません。
モンスターも強くなってきた矢先にブライ老は棺桶の住民となり、最悪の事態である 全 滅 も考えられる状況です。
「それでは聖水を撒いて進みましょう」
クリフトはそう言うと懐から小さなツボを取り出して言いました。
「これは私の特製の聖水です」
「さすが聖職者ね!」
聖水は神父さまが祈りを捧げながら朝露を小ビンに集めたもので、服に振り撒けばその秘めた聖なる力によってモンスターを退けられるのです。
「これは朝一番に私が搾り出したものです」
なんか濁ってるんですが。
「なにこれ」
「汗です! マイ汗!」
クリフトはあやしいツボをアリーナ姫の目の前に差し出して言います。
「姫様のご武運とご健康とご多幸とご無事、更には子宝に恵まれるようお祈り(妄想)して染み出たものを集めました」
「ドロドロしてるんだけど」
アリーナ姫の美しい柳眉がゲンナリと歪みました。
「え、えっちな汗はかいていませんよ!
「そんな、私とて朝から白濁なんて出よう筈も――」
クリフトが慌てて言葉を付け足したその時、
「おとなしく死んでおればつけあがりおって! こうしてくれるわァァアッッッ!」
「……おもい」(怒)
アリーナ姫は一瞬は生き返った老人の棺桶と、氷柱となった青年神官をひきずりながら、遥か遠くに見えるテンペの町を見てひたすら歩いたのでした。
哀れ、氷結クリフト。
お供が本気でお荷物です。
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