“「クルクート幻想風花」無断再配布事件”は2003年06月12日から始まった。
完全な終結は青木梨が起訴猶予になった2005年12月03日だが、まとめサイトがほぼ今の形で完成した2003年09月16日には事件としては終わっていたと言っていいだろう。
2010年現在、事件から七年、終息から五年が経ったことになる。
2008年には「はじめての著作権侵害への対応」も消滅している。
これは二年遅れの(そしておそらく最後の)更新であり、まとめサイトの管理人としての「後書き」である。
「はじめての著作権侵害への対応」は消滅している。2008年4月25日、ほぼ午前0時に近い時刻のことだった。
まとめサイト管理人として、24日22時22分頃、最後にもう一度ログをとり、消滅を見届けたのを覚えている。
その頃ネットウォッチ@2ch掲示板の、痛いフリーソフト作者レビュアーヲチスレは、Part23だったようだ。
当時はサイトのパスワードを紛失していたこともあって、スレの方は覗いていなかった。
ログを確認することが出来ないが、free100.tvのサービス終了の報せを聞き、chapter2の名前を思い浮かべた人間が何人いたか……そもそも「はじめての著作権侵害への対応」のURLが、http://c2c2.e-city.tv/からhttp://c2c2.free100.tv/に変わっていたことさえ知らない人が多かったのではあるまいか。
おそらく、話題に上りはしなかっただろう。
そのヲチスレも今はない。
現在もっとも一般的なサーチンジンであるGoogleで、主立った単語を検索してみると……
事件が完全に風化している様子が伺える。
(chapter2は前からこんなものだろう。一般名詞はどうしようもない。)
関連サイトはことごとく閉鎖、消滅している。登場人物も、野次馬であるヲチスレ住人もいなくなり、後にはまとめサイトだけが残っている。
五年経ってからこのまとめサイトに追記がを行われるのも、ただ偶然にもサーバーのパスワードが見つかったから……と言うにすぎない。
これ以上更新が行われることはなく、このまとめサイトはサーバー終了の日までひっそりと残るだけになるだろう。著作権は放棄され、転載や追記は自由……となっているが、私以外にそんな酔狂な人間がいるとも考えにくい。
もっとも「ネットトラブル年代記」のようなサイトや書籍が将来的に存在する可能性は否定できない。そしてその時、このサイトの文章が利用されるということはあるかもしれないが……
“「クルクート幻想風花」無断再配布事件”の周辺環境について、どのように変わったかを語ることは出来ない。
RPGツクール界や無断転載について、自分が知っていることはほとんどないからだ。
容量と通信速度が増大したこと、いくつかの大規模な無断転載がニュースになったこと、ゲーム作者にしても素材制作者にしてもユーザーにしても、著作権意識は変わらず、相変わらず入手不能になるゲームが少なくないこと、匿名掲示板などでは別に変わらずそうしたゲームのやりとりが行われていること……そうしたことを聞き知るばかりである。
あらゆる作品は作者の意図とは関わりなく文化の一片であると思うし、後の人々が参照できるようにしておくべき……と個人的には思っているが、当時も今も一般的な考え方ではないようだ。
CreativeCommonsも、当時と比べて劇的に広まっているという様子は伺えない。
自分に語ることが出来るのは、事件に対する感想が少し変わったというぐらいだ。
事件のログを改めて読んでみても、やはりchapter2、青木梨……各人物それぞれに熱くなりすぎていたように感じる。
青木梨に悪意はなかっただろう。「このゲームは面白い! この面白さを皆に知って欲しい!」。そんな気持ちだったのではなかろうか。
chapter2 が怒っていたのは、すでに述べられている被害者意識ゆえだったろう。自分の権利が踏みにじられた、というのを発端して、その後はメンツやプライドの問題も絡んできたのだろう。
青木梨の行動には軽薄な面が目につく。反面、chapter2に対して「そこまでしなくてもいいだろうに」という感情は拭えない。
お互いの行動と性格が悪い方向に噛み合ってしまったのだろう。
結果だけを見れば、青木梨の初動の拙さ、(意図していないにしても)挑発的な振る舞いがchapter2のその後の方向を誤らせたように思える。
当時はchapter2に、もう少し寛容になれないものかと感じていたが、今から思えばそれをchapter2に求めるのは酷だったかもしれない、と今では思える。
昔はchapter2の振る舞いには否定的で、エスケーや青木梨にはそれほど否定的ではなかった。
自分もゲーム作者であり「レビュー禁止」や「自作品の安易な取り下げ」には反感を持っていた。それだけにchapter2には否定感を持っていた。
「作者ならば批判は甘んじて受け入れるべきだし、一度公開したものを取り下げるのは覚悟が足りない」
逆に言えば、「創作者」としてエスケーや青木梨にはそれほど否定的ではなかった。
だが(このサイトではないが)保管庫サイトを二つ、まとめWikiを一つ管理し、「コミュニティの裏方」の視点として、否定的な感情を抱くようになった。
多くの作者は非常に軟弱であり、否定的な感想に非常に弱い。また敷居を低くし、稚拙な作者であっても受け入れることがコミュニティの活発化につながるし、そうした作者に強さを要求するのは無益である……そう感じるようになったからである。
批評やレビューで作者におもねる必要はない。
だが、あえて厳しく、辛口にすることはないだろう……感想がないというだけで十分に厳しいことだろうから。
もっともこれは、かつてはchapter2を過大評価していた……良作の作者には強さを求めていた……が、今から見ればchapter2はそれほどたいした人物ではない……chapter2にそんなことを要求しても仕方がない……と言っていることになってしまうのだが。
“「クルクート幻想風花」無断再配布事件”は完全に終わっている……
登場人物も退場している……
管理人自身の考えを延々語ることは出来るが、多くの人の興味を引くことではないだろう。
まとめサイトの執筆者である◆chap6.UzTE氏により、事件の時系列表に若干の誤りがある、と指摘されたことがあったが、大きな誤りではないと思われる。
スレッドからの引用を減らした要約版を作成するのは、明らかに時機を逸している。
“はじめての著作権侵害への対応”過去ログを比較し、どのように主張が変遷していったかを精査するというのも一興かもしれないが、関心を寄せる人がいるとも思えない。
(もちろん、こういったことを誰かがやるというのなら大歓迎だ)
つまり“「クルクート幻想風花」無断再配布事件 経緯とそのまとめ”の管理人として、あえて書くべき事はほとんど残っていないのだ。
ひょっとした五年、十年経ってから自分語りをはじめ、まとめサイトの晩節を汚すこともあるかもしれないが、その時は冷ややかに笑って頂ければ幸いである。
願わくば、出来るだけ長くRibbon Networkのサービスが続きますように。
サービスが終わった時、誰かがこのサイトを引き継いでくれますように。
それでは皆さん、ごきげんよう!
2010年10月吉日、黒土禾甘 文責:黒土禾甘 このサイトの著作権は放棄されています。