浸蝕

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下腹部が痛くてミリアリアは憂鬱だった。
女にしかわからないその鈍い痛みは病気ではないが
あきらかに作業効率をさげる不快感だった。

はじまって2日目、彼女の一番つらい日だ。

昨夜はディアッカが無理やり, 彼女の性欲を引き出そうとした。
それは彼女にとって不本意だったのであまり得意ではない行為を 彼にする事にしたのだが。
(まあ割りとうまく出来た方だった。途中までは…)
その行為は彼女自身不慣れだったし彼にするのはハジメテだったから恥ずかしかったのだが、
彼が思いもよらず感じてくれたように見えて。
SEXでの主従関係が逆転したように思えて調子に乗ったのがいけなかった。
最後は結局、恥辱に耐える事になってしまった。
(もうお願いされてもやらないんだから)

彼とは暗黙の関係で、
特につきあっているわけではない。

皆の前では相変わらず馴れ馴れしいので周りにひやかされるが
彼は彼女を特に恋人扱いするでもなく
彼女も彼をそっけなく突き放している。
2人が身体の関係をもってると知る人はいないだろう。
そうでないと困る と彼女は思っていた。


彼女の心は今も死んだ恋人のものだ。
それはずっとかわらない。そう彼女は思っていた。
しかし 何かが自分にじわじわとしみこんできているような気がした。
それが何なのか認めてはいけないと彼女は思った。


下腹部の痛みも手伝って早々に部屋に引き上げてきた。
部屋に入るなりベットに横になりお腹を押さえるように縮こまる。
(着替えなきゃ…でも今日はシャワー諦めよう。薬飲んでおこうかな…)

しばらくじっとしていたが痛みがひくわけではないので
薬をのもうと身体を起こすとそこに金色の髪がゆれてみえた。
「わっ!ディアッカ」
いつの間にそこにいたのか「痛いの?」とすみれ色の瞳は
心配そうに彼女を覗き込む。
「ちょっとびっくりするから急に近づかないでよ」
彼女は近づく彼の顔を押しのけて立ち上がる と
急に現われた彼にびっくりして顔に血が集まったせいか、
貧血気味なのに急に立ち上がったせいか。
脳内の血液が急に足りなくなりぐらりと周りが揺れた。

「おっと」手際よく彼は彼女をささえ抱きかかえる。
その手は徐々に力を強め抱きしめられた。

「眩暈?」頭を腕に抱えられぐらぐら感が収まりだす。
「貧血って足上げたほうがいいんだっけ」
そういうと彼女を横に抱きかかえた。
ベットにすわり『お姫様抱っこ』のまま彼女の足の方を少し高さをつける。
「なんかこの体勢ちょっといや」目を瞑りながら彼女は不平をいう。

「おさまった?」からかうような いつもの口調なので
薄めをあけて彼の顔を見ると やさしいけど小ばかにしたあの微笑だ。

「ありがと。おさまったからおろして」
彼女はイヤな予感がして憮然と言った。
彼はにやっと笑ってあげた足を引き寄せ彼女の膝にキスをする。
「せっかくだからちょっと堪能させて。」
口づけながらそういうと
舌と唇で彼女の膝から太ももに這わせはじめた。

ストッキングの上からだったのでそれは奇妙に感度があがる。
「やめ!」あわてて彼女は足を蹴り上げる。
弾みで身体を反転させ彼の腕から転がり離れた。
「もう!昨日言ったでしょ。い・や!」
彼は残念そうに溜息ついた。
「じゃあまた抱っこして寝るだけでもいいから。」
「絶対信用できない。」
「ホントホント!ねっ?」
へこたれ顔になって懇願するように見られると彼女は弱い。
(ぅぅっ。この顔されると断りにくい…)

だが2人で居る時の強引さも知っているので
「ホントにお腹痛いし今だって貧血起こしたし…」
困るのよと彼女も懇願するように答える。

彼はあきらかに落胆の色を浮かべ俯いた。 長い睫で影ができる。
「俺 あしたから『クサナギ』行くんだ。」

「え?」
そんな話は聞いてなかった。
そういえばこの2,3日クサナギの技術者からブリッジに回線をつなぐよう
依頼が多かった。先日の戦闘以来頻繁にマードック曹長や技術者がクサナギに
出かけていたようだ。その流れなのだろうか。
確かにバスターはモルゲンレーテ製だが、今はAAの防御支援にかかせない存在だ。
まさかバスターの配備まで変えるはずはない。
「技術協力で呼ばれた。」
ミリアリアはホッする自分に少し驚いた。(何を安心してるの…?)
深く考えてはいけない。瞬時にうちけした。

ディアッカはミリアリアの葛藤など知らず言葉を続ける。
「多分しばらく帰って来れないからせめて…」
両手を広げて彼女にせがむように言った。
「抱っこして寝たかったな…」

子供みたいな言い方にミリアリアは降参した。
下腹部はあいかわらず鈍い痛みを孕んでいたが、
ここまで言って、まさかこの状態の彼女を襲う事はしないだろう。
「わかったわよ…添い寝だけだからね。」
ミリアリアがあきらめたように言うと
ディアッカは満面の笑みを浮かべ 
その中に 『してやったり』といった表情も含んでいるように見えて。
彼女はまたもや やられた…と溜息をついた。



(H15.9.28)


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