Afterward -その後-
-1-
「ミリアリア 少しいい?」
キャットウォークでMSを見ていたミリアリアは聞き覚えのある声の方向に振り向いた。
「キラ?」
声の主はキラ・ヤマト。彼女の友人であり死んだ恋人の親友でもある。
停戦終結となった今回の戦争で彼ら戦争回避思想の友軍は
艦の補修と今後の指針の話し合いでプラントに在留中だ。
元々プラントでは穏健派だったラクス・クラインはその中心として今調整に忙しい。
『クサナギ』『アークエンジェル』の幹部もその調整に一役かう事になり
カガリやキラはプラント内の首都議場に詰めているはずだった。
何故ここにキラがいるのかといった風にミリアリアは驚いたので
そのようすをみて
「カガリがクサナギに用があってね。」
と説明してみせた。やはり昔からの友人ともなるとある程度察しがつくものだ。
「忙しいんでしょ?」
「んーまあね、僕がやる事なんてたかがしれてるけど。今話し合ってるのは政治的な色が濃いし。」
「サイには得意分野ね。」
「そうだね…艦長の秘書みたいになってるよ。」
キラがカップのコーヒーを持ってきて彼女は渡される。
「ありがと」
2人は休憩用のイスに腰掛けた。
「アークエンジェルはどう?」
「だいぶ修繕作業も終わってきたみたいよ。私も久々に工業科生らしい仕事したわ。」
「そう」
あたりさわりのない会話が途切れ途切れに続く。
だがキラはミリアリアに用があってここに来たのだろう。
でないと「ちょっといい」なんて前置きはしない。
キラが何をいいたいのかミリアリアには察しが着いていた。
それは聞きたいようで聞きたくない『彼』のことだろう。
彼――ディアッカはプラントにつくとアークエンジェルを降りた。
当然といえば当然だが。
捕虜になりAAと共にオーヴで戦った彼はAAのクルーのような錯覚があるが彼はザフトの軍人なのだ。
戦闘中行方不明者MIAとなってザフト軍からは捜索打ち切りとなったが
今回の帰投で彼はザフト軍属の兵士として生存を報告し、
クライン派平和義勇軍兵士として『エターナル』幹部の要請もあり軍内部の諸整理にあたる事となった。
彼はそれに従った。
AAがプラントに入港する事になってディアッカはそうなる事を知っていたようだった。
プラントに着くまでの間ずっとミリアリアのそばで彼女の仕事を手伝っていた。
他人にはあから様に慕う様子にしか見えないので彼女としてはつっぱねたい所だったが
いつもふざけた調子の彼がその時は真剣に「手伝わせて」というので
冷たくしきれなかった。
そしてプラントに着艦すると『エターナル』から帰投の意思確認が彼にされた。
彼はその通信をミリアリアの横で受けた。
「俺も降ります」
静かに答える彼の横顔はいつも見る陽気な印象はみじんもなく
ザフト軍エリートパイロットとしての冷静沈着な男の顔だった。
(H15.10. 1)
<目次に戻る>
<NEXT>