Afterward -その後-
-2-
ミリアリアはAAの中で艦内業務に従事した。
ガランと人気のないブリッジで他の仕事も引き受け多忙になった。
艦長をはじめ、ブリッジクルーの半分はプラント内に詰めたままだ。
それはかえって何も考える時間を彼女に与えなかったのでよかったのかもしれない。
戦争が停戦していままで張り詰めていたものが急に緩んだような
そんな空気が今のAAには漂っている。
彼女は平和に向かう事を素直に喜んではいたがこれからの事に実感がわかず
わけもなく不安に襲われる時があった。
そんな時彼女は休憩時間にここを訪れる。
AAの格納デッキでバスターを眺めるのがココしばらくの習慣になっていた。
ミリアリアは目の前にあるバスターをぼんやりと見ていた。
ザフト軍の新型機に撃たれて原型をとどめてなかったバスターは
修復されて、今も彼が手入れしているかのような気がする。
「じゃあまたあとで…」
彼が降りると通信で答えたあと 横に居るミリアリアにそう言った。
彼女は頷いただけで見送らなかった。
『またあとで』その言葉がどんな意味を含んでいたのか聞きたかったが
彼の真剣な顔をまっすぐ見る事ができなかった。
聞いたら「戻れなくなる」気がして彼女は聞きたい想いを閉じ込めた。
ディアッカが降りた後、彼からの連絡はない。
多忙なのかそれとも故意なのか。
どちらにしてもミリアリアは自分から連絡を取ることはしなかった。
できなかったといった方が正しいかもしれない。
ミリアリアにとってディアッカは
『先の見えない不安を癒してくれる行為をする相手』でしかない筈だった。
それ以上でもそれ以下でもない、そうでなければいけない相手だった。
彼女はトールを忘れたくない。自分の中で1番はトールでなければならない。
心だけは奪われる事はないと信じていた。
それでいいと彼は言った。だから続いていると。
だが戦争が停戦となり、それぞれの場所に戻らなければならないのだ。
彼はコーディネーターでプラントのZAFT軍人だ。
彼は戦争が終わってもプラントから離れる事はできないと言っていた。
自国を守る為、戦争を終わらせたいと願ってAAに乗っていただけなのだ。
そして自分は中立国オーヴの人間だがナチュラルなのだ。
プラントに残る事は考えられず、彼がオーヴに来る事も考えられない。
現実を目の前にして彼女は彼と離れる事を予感した。
(あの心地よい腕を自ら離す事はないと思っていたのに…)
自分をとりまく現状が否が負うにも彼を引き剥がしていく。
そしてそれがどうしようもなく切なく苦しい気持ちにさせていった。
(H15.10.2)
<目次に戻る>
<NEXT>