Afterward -その後-


-3-


プラントでの停戦調整案がまとまり、
AAの修繕作業もほぼ終了のめどがついた昨夜 艦長から通信が入った。
来週にも『AA』と『クサナギ』は地球に戻る事になる。

――もう会えないかもね
ミリアリアは彼との別れを覚悟していた。

いつものようにバスターを眺めているミリアリアに
声をかけたキラが他愛のない会話の沈黙のあと 
「ミリアリア」と切り出した。
いつもミリィと愛称で呼ぶキラがそう呼ぶのは珍しい事だ。

前にも一度呼ばれた事がある。
奇跡の生還を果たしたキラがAAに戻ってきた時
ミリアリアはトールももしかして生きていると淡い期待を持った。
AAに戻ってきたキラにミリアリアは開口一番に聞いた。「トールは?」
その時も『ミリアリア』と呼んだ。

『トールが死んでしまったのは、僕がイージスに乗ってる友達を殺す覚悟がなかったからだ。』
キラが唇をかみ締めてそう言ったのを覚えてる。
友達思いのキラを責める事はできない。
そんなキラを助けたくてその時できる事を精一杯頑張ろうとトールも彼女も思っていた。
キラだけでも助かってよかったとトールはあの屈託のない笑顔でいうだろう。

「ミリアリア、僕を助ける為に君の一番大切な人が死んでしまった。」
「…キラのせいじゃないよ」ミリアリアは静かに答えた。

――戦争だったんだ。
先の戦闘でミリアリア達は親しい仲間をたくさん亡くした。
皆に慕われたAAのパイロットだったフラガ少佐は
自分達を助けようとして目の前で消えてしまった。
愛する人をAAに残して。
――キラだってフレイの乗ったポッドが目の前で爆発して助けられなくて泣いていた。
皆 戦争でたくさん傷ついた。自分だけではない。
皆の痛みがわかるからこそ自分は立っていなければならない。

キラは僕がいえた義理じゃないんだけどと前置きして言った。
「君には生き残ったからこそ幸せになって欲しいんだ。」
「わかってる。残された人間は死んだ人の分も生きなきゃね。トールもきっとそう言うよ。」
――戦争に生き残った者として何が何でも生き抜いていかなければならない。
死んでいった者達の分まで。
   
「そろそろ戻らなきゃ…」
ミリアリアは立ち上がった。
キラの話しは途中で打ち切りたかった。
その先に潜む彼の話に向かわせないように。
だがキラは追いかけて続けた。
「僕の勘違いだったらごめんね。君は、君とディアッカはお互いを必要としているんじゃないの?」
ミリアリアは俯いた。
「AAは来週にも地球に戻るよ。」
「昨夜連絡があったから知ってる。」
「ディアッカと話す事はないの?」
そう言われてミリアリアは言葉を飲み込んだ。
(何を話せばいい?)
キラの顔を見る。
キラはミリアリアの言葉が聞こえたかのように
「これからの事とか地球に戻ったらプラントに来る事は中々できないだろう?」

「僕は…フレイと話すことが出来なかった。」
その話しをされるとミリアリアは泣きたくなる。
死んでしまった友人はもういない。
彼女がZAFT軍捕虜になった経緯は関係者からなんとなく聞いた。
数奇な運命に翻弄されたフレイ。

キラとフレイの関係は今の自分達と似ていた。
フレイがキラに近づいた理由は憎しみだったが
キラといるうちにフレイの心は変わっていったとミリアリアは思う。

お互いの悲しみを身を寄せ合って癒していた。
(私達も同じ)その中で色々な感情が生まれただけにすぎない。
必要としたのは自分を慰めてくれる相手
だがその相手に感情が動けばそれは立派な恋だ。
キラとフレイはお互いを想いあってすれ違ったまま別れた。
キラがMIAとなった時
ミリアリアもトールを亡くしたばかりだったので余り覚えてはいないが
残されたフレイがキラを想って泣いていたように記憶している。
ずっと悔やんでいたフレイとキラ。
話す事ができずフレイは消えてしまった。

「ミリィ 君たちはまだ間に合うよ、ちゃんと話し合って」
「…ん」
微かに震える声でミリアリアはキラの顔を見ないで返事をした。
ディアッカと同じ紫の瞳の色をみれば泣いてしまいそうだった。


(H15.10. 5)


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