To Heart2
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7年の歳月という壁 ――To Heart―― それは伝説。 いつまでもエロゲーの金字塔にして革命児。いつまでも人々の胸の奥に留まり続ける色褪せない思い出。それがTo Heartなのです。 そのTo Heartの「2」が発売されました。前作が発売されたのが1997年。実に7年です。この間、様々なゲームが発売されました。当然良作ばかりではありませんでした。シナリオのパターンが単調になってきたり、キャラクターがおかしくなってきたりしているというユーザーも少なくはありません。そして「あの頃は良かった」と呟く人々。「あの頃」とはいつか。まさしくTo Heart時代なのです。To Heartとはそれ程のゲームであり、且つ7年分美化されていると考えるべき。そんなゲームの「2」が果たして受け入れられるのか? 多くの疑問と期待を受けて本作は発売されました。夏発売のはずが2度の延期を経て年末に登場したのも、良作の多かった2004年の締めくくりとして縁を感じます。パソコンではなくコンシュマーで発売されたTo Heart2。それは自信の現れか。果たして前作の顔に泥を塗るようなゲームで終わったのか、あるいは前作を上回るようなパワーを秘めたゲームとなったのか、検証しつつ批評していくこととします。 キャラゲーに逃げずに。 本作の第一印象は「絵が普通になったな」でした。前作は水無月+カワタ氏という個性の強い原画だったのでかなりクセが強く、好評だったにもかかわらず私はすぐには買おうという気にはなれませんでしたので、今作の変貌にはある種の安心感を持って望むことが出来ました。ストーリーが駄目でも最悪キャラゲーとしては機能するであろうという保険があったということです。 蓋を開けてみると各キャラクターは絵に劣らないだけの個性を見せ付けてくれました。前作に引けをとりません。ポイントとしては幼馴染みヒロインが二人登場し、二人が年下、年上と分けられたこと。さらに同い年の親友を男として登場させたことでしょう。前作で主人公・あかり・志保・雅が4人とも同年代であったことに対して上手い切り替えし方をし、さらに年の差を生かしたシナリオを展開させている点が評価出来ます。また、随所で前作との関連を意識した思わずニヤリとしてしまう設定をつくりつつも本作からの新規ユーザーも置いていかない設定がなされている点が嬉しいところ。 対して音楽の評価に苦しみます。というのは、本作の音楽の半数近くが前作のアレンジであるというところにあります。前作の音楽が好きな私としては悪くは無いのですが、メインキャラ以外の音楽をアレンジで終わらせると言うのに素直に納得はいかないのは事実ではあります。ただ、流石にアレンジのされ方は上手いですし、音楽を流すタイミングもばっちりである点は褒められます。音楽はゲームそのものの雰囲気に占める割合がかなり高いので、前作を意識する所以にこの結果が導き出されたのでありましょう。実際に多くの「2」を出したゲームもこの形式を辿っていることと照らし合わせて、私としましてはよしとします。 また、コンシュマーである割には際どいワードや妄想を膨らませてくれるテキストが満載(笑) そんなに煽らなくても……。こっちは大変なんだから。というか18禁出るのかなぁ?
そんな本作のシナリオ構成は普通な中に持ち込まれた独自の世界観に「お約束」的展開とハッピーエンドを基調としたものであり、まさに「これぞTo Heart」というものでした。どこか懐かしく心温まる、そんなシナリオが健在だったのです。また、日常会話の楽しさも忘れられてはおりません。一日の終わりに主人公が起こすアクション。何気無い一言一言がどこか面白いものです。ヒロインたちとの会話も同じ。重要な筋に入ればシリアスに動くのですが、それまでの通常の会話もテンポが良く、飽きが来ないのです。長くダラダラと面白みの無い文を書かれることなく、常に一定水準以上のテキストを短い一日にどれだけ凝縮するかというところに着眼点がおかれて素直に面白いと言える。そんなテキストが並べられるからこそ、お約束な展開が来ても心温まれるというわけです。つまり、To Heart2はビジュアルノベルとしての本分を果たしているのです。このゲームの本質はテキストであることを明確化し、キャラゲーへの道をきっちり封じた、ということが言えましょう。 本作をクリアーした時に感じたものは前作に勝るとも劣らないものでした。いつまでも忘れ得ないどこか懐かしくも温かい春の物語。飽くまでビジュアルノベルであり続けた本作は、理想の「2」であると共に、21世紀のTo Heartとして迎え入れることが出来るゲームとなったのです。 |