あえかなる世界の終わりに

ブランドキャラメルBOX 発売日2005.12.22
希望小売価格9,240円  
ハードPC ディスク数1枚
OSWin98/2000/Me/XP ジャンルADG
キャラデザのり太 シナリオほしまる
音楽Doors Music Entertainment 
音声あり ボーカル曲あり

ストーリー
 家族をA.Iの誤作動による事件で亡くして以来、その類のものに忌避感を持つ主人公は、CQショットと呼ばれる競技のプロ選手として生計を立てていた。

 一方で学生生活は、幼馴染の【柚子】、悪友の【虎太郎】、【竜平】のおかげで、誰からも好かれる、という訳ではないが、可も無ければ不可も無い、それなりの生活を送ることが出来ていた。

 そんな折、【柚子】から、彼女の友人である【千冬】のボディガードをして欲しいという頼み事を受けることになる。どうやら彼女は最近ストーカーらしき男の視線を感じていて、それにひどく怯えているようであったが、主人公はそのストーカーに一種疑問のようなものを抱いていた。

 それと時を同じくして、主人公の下に、ある厄介者が舞い込むことになる。彼女の名前は【リップル】。ふとした理由で主人公と生活を共にすることになった彼女は一体何者なのか…? そして【千冬】を付け狙う男の目的は……?

キャラクター名私的お気に入り度声優属性
Ripple■■■■■■ 7/10青山ゆかりロボ・強気
長谷川柚子■■■■■■■■ 9/10安玖深音幼なじみ・正統派
近江千冬■■■■■■ 7/10榊原ゆい巨乳・正統派
Nagi■■■■■■ 6/10乃嶋架菜強気・ショート
ひまわり■■■■■■ 7/10海原エレナロリ・不思議系
斑鳩虎太郎■■■■■■■■ 8/10 親友
俵坂竜平■■■■■■ 7/10 親友
吉住 明■■■■■■ 7/10 グラサン
Artist■■■■■■■■ 8/10 殺し屋・クール
瑠璃垣みなも■■■■■■ 7/10
木ノ崎なつめ■■■■■■■■ 8/10 主人公

主要搭載システム
BGM及びボーカル曲
●オートメッセージ
●スキップ(既読のみ)
●バックログ
●バックログ中の音声
●CG鑑賞(クリアー後)
●音楽鑑賞(クリアー後)
●シーン回想(クリアー後)
●スタッフルーム(クリアー後)
●お饅頭モード(コンプリート後)
●BGM:eden*全32曲
●OP歌
 スイーツ探検隊
 ECHO
●挿入歌
 榊原ゆい
 ONE DAY
●ED歌
 スイーツ探検隊
 ONE DAY
雑感
個人的名曲
 オートメッセージの速度はスライダーで感覚的に調整可能。今時スキップに既読判定がないのが凄いですね。スタッフルームでは、スタッフの描いたイラストが見れます。お饅頭モードは、コンプリート後に現れる項目で、各キャラの顔が饅頭のように膨れ上がった状態で現れるという意味不明なおまけモードです。  ギター系の弦楽器とストリングスの組み合わせかピアノ・オルガンにパーカッションを組み合わせた曲が目立ちます。リップルのテーマだけ電子音がピコピコ鳴っていて面白いです。曲毎の調子がバラバラでゲーム全体で考えると統一感がないのが弱点と言えば弱点です。

●love theme for"CQ"Shot
●回想
硬派な近未来物


 背後にビットを従えた特異な服を纏う少女と、銃を手にする少年がこちらを向くパッケージ表面は、硬派な近未来バトル物を予想させ、良作の雰囲気が漂っていますが、裏面の説明はひどく中途半端で「愛と夢をつづったシネマティックアドベンチャー」と銘打たれた如何にも地雷臭がする本作。近未来物は好きなので、表面を信じて購入しました。
 キャラメルBOXは、その年の1月に「処女(おとめ)はお姉さま(ボク)に恋してる」を発売し、スマッシュヒットを飛ばしたメーカーですが、それをプレイしていなかった私にとっては初プレイとなるメーカーでしたので、期待半分不安半分といったところでした。
 結果は良好だったのですが、その割にこのゲームはあまり話題にならなかったような気が。少なくとも「処女はお姉さまに恋してる」程の評判は聞きませんでした。Erogamescapeを見る限りではレビューサイト数はまずまずあるので、見向きもされなかったわけではないでしょうが、スマッシュヒットの後にしては盛り上がりに欠けた気が……。決して地味な内容ではなかったんですけど、何故なんでしょうかね?

 なお、おまけとしてキャラクターピンズが二つ付いてきます。私はリップルと千冬でした。


リアルとバーチャルの間で繰り広げられるサスペンスアドベンチャー


■シナリオ
 本編はLOSと呼ばれる家事システムをNAIPなる感情を持ったAIが処理する近未来が舞台となっており、世界中の人間が地下で生活しているという世界観が築かれています。そのためゲーム独自の専門用語が飛び交うのですが、何度も説明が入るので、混乱は少ないと思います。
 ストーカーに付け狙われる友人の警護を頼まれてそれを遂行する前半と、その裏に潜む陰謀を知ってしまいアングラ世界へと踏み入っていく後半に分かれます。ジャンルとしては事件の謎を解いていくサスペンスアドベンチャーと考えて良いでしょう。
 謎の散りばめ方が上手く、事件が解決したと思ったら次の問題が発生して、解決したはずの事件と関係がある……ということが続き、初めの事柄がわらしべ長者のわらのように、大きく複雑に膨らんでいきます。ミスリードを誘うテキストやイラスト、何気なく隠されていたヒントにハッとさせられることも多く、真相に辿り着くまでのシナリオ配分にはなかなか好感が持てます。サスペンスに有り勝ちな巻き込まれ展開ですが、後半は自らの意思で物事を決めていくので、ストレスは溜まらないでしょう。

■キャラクター
 掘りが深くて目が大きい一風変わった絵。口が小さいためか人形のような印象を受けます。目と眉がハの字とヘの字になっているキャラの2タイプに分かれており、前者が優しそうなキャラ、後者が気の強そうなキャラになっています。
 表の世界にいるヒロインと裏の世界にいるヒロインがいて、どちらも設定は作りこまれています。前者は幼なじみとその友人。幼なじみは本編の事件に深く関わりませんが、その分、要所で過去のエピソードを持ち出したり回想を挟んだりして他キャラとの差別化を効果的に図っています。友人の方は性格的な設定を重視しており、出会ってからの接し方の移り変わりを丁寧に描いています。後者の裏世界のヒロイン達は、話が進んでいくにつれて隠された秘密が明かされていきます。冒険の結果だったり、本人から何気なく語られたりするなど、明かされる形は様々ですが、いずれも本編の進行や世界観にも関わることが多く、これらの設定がなければ本作は成り立っていないでしょう。

■テキスト
 日常シーンに必要以上の文字数を使うのが特徴で、かなりくどいです。「彼女が美味しいコーヒーを淹れてくれた」という状況があったとしましょう。それを「彼女は席を立ち、台所へ向かうと、コーヒーメーカーを起動させた。ついでいつもと同じ量の豆を入れ、水を注いだ。程なくして、眠気を吹き飛ばす良い香りが漂い、彼女が台所から姿を現し、丁寧にカップを渡してくれた。カップが温まっていたためだろう、朝食の短くは無い時間中、飲み頃の温度がよく保たれている」とか、毎日コーヒーが出てくる度に書かれたら、流石にウンザリしますよ。重要度の低いことはあっさり済ませて、メリハリの利いた文章にしてほしかったところです。また、ライターは分かっているのかもしれませんが、プレイヤーが分からないような状況説明――例えば、AとBが戦っていて明らかにAが押しているのに、Bが突如勝利を収め、それを見ていた主人公が何の説明もなく納得している――が幾つかあり、混乱させられます。

■演出
 OPアニメは、本編中盤になってようやく挿入されます。イベントCGに、ムービーのために作れられた0と1の羅列映像や、爆発のように中心から外側へ向かって光線が飛び交っていくような映像が組み合わさり、電子の海へとダイブしている印象を上手く作り出しています。歌と立ち絵やCGのカットインも良く合わさっています。
 本作には実体を持たないホログラムのような存在の人形AIが立ち絵として登場します。こうしたロボットの類は、立ち絵に時折走査線状のノイズが下から上に入る演出が施されています。また、この人形AIは、形態端末にも入ることがあり、その際はテキストウインドウの右上にミニキャラが表示されます。このミニキャラは、浮いたり笑ったりとアニメーションし、動作も重さを感じさせません。この2点は一寸したセールスポイントになっていると思います。
 その他の画像効果は、銃撃戦の際に光線銃の弾道が描かれたり、ゲーム内ゲーム「マジックパラダイス」の演出として、そのゲームのタイトル画面がアニメーションしたりと、よく分からないところにこだわりが見えます。
 効果音は、銃声やロボットのメカっぽい出現音、ブレーカーが落ちたときのブンという音など、機械的なものが豊富に揃っています。

■ゲーム性
 目当てのヒロインにとって好感度が上がるような選択肢を選んでいくストーキングゲーム。分かりやすいものがほとんどなので、難易度は低いです。共通ルートが長いのも特徴で、ストーリーの大筋もルートによって大きく枝分かれすることはありません。単独ルートはHシーンとエピソードに関わる程度のものと考えて良いでしょう。よって、メインヒロインであるリップル以外のつルートは内容が薄く感じられるでしょう。

■Hシーン
 リップルとひまわりが3回、柚子が2回、千冬とNagiが1回ずつ。ただし、リップルとひまわりと柚子の1回は、クリアー後のおまけとして登録されるもので、本編とは関係ありません。本編中のシーンは、2人が良い雰囲気になった時に、主人公がムラっと来て、合意の下に行われるものがすべてです。主人公は極度に早漏なのか、純愛物にしてもワンシーンがかなり短目。着衣プレイ・風呂プレイがありますが、実用性はありません。なくても良いレベルですね。

■グラフィック
 背景は25枚程。無難な出来ですが、モブがいないのが気になります。室内が多いためか、部屋に置かれた小物など細かく描かれています。
 イベントCGは、差分抜きで77枚。目新しい構図は皆無で、立ったり座ったり戦ったりしているCGが大半です。何故かな45度ほど傾けたものが多いです。ただ傾けても見難くなるだけでプレイヤーが喜ぶわけではないと思うのですが……。塗りは丁寧で、立ち絵では見られない横顔や表情が見られて良いと思います。


総合得点■■■■■■ 62/100
おすすめ度■■■■■■  7/10
ボイス■■■■■■■■  9/10
シナリオ■■■■■■■■  8/10
テキスト■■■■■  5/10
キャラクター1■■■■■■■■  8/10
キャラクター2■■■■■■■■  9/10
音楽■■■■■■  7/10
演出■■■■■■■■  8/10
システム1■■■■■  5/10
システム2■■■■  4/10
Hシーン1■■  1/5
Hシーン2■■  1/5
グラフィック1■■■■■■  3/5
グラフィック2■■■■■■  3/5
人とNAIPの終着点は?


「僕たちは、夢と同じもので織り上げられている」

 これは本作のキャッチコピーで、シェイクスピアの『テンペスト』に出てくる言葉なんだそうです。本編中の解説によると、「人の一生は儚いもので、どんな人間でも死んでしまえば夢のように何もかも消え失せてしまう」……ということのようです。シェイクスピアの台詞はどれも意味深に響くのですが、劇全体を見ずに台詞だけ摘まんできてもその意図が伝わらない――何を言いたいのか良く分からない――ものが多い気がします。それにこうした終末論は本作のテーマには似合いません。
 そもそも「夢」には二つの意味があります。一つは眠っている時に見る実体のない現象としての夢。もう一つは希望や願い――dream comes true――の夢です。 シェイクスピアの夢は前者を指していますが、キャッチコピーの指す「夢」はこれら二つの意味を巧妙に織り交ぜているのです。
 本編ではある重要人物が、NAIPが自由な存在となることを願っており、この願い――すなわち夢――が物語の中核を為しています。つまり本編における「夢」は「自由なNAIP」と言い換えることが出来るのです。この人物の夢の実現は、青い薔薇を作るが如く困難であり「永遠の夢」のようにも思われます。何故なら NAIPは実体を持たないデータの塊であり、睡眠時に見る夢のように極めて不確かな存在だからです。しかしながら、タイトルが指すように夢――あえかなる(儚い夢のような)世界――には終わりが訪れます。その結末はルートによって異なりますし、プレイして確認して欲しいと思います。人間とNAIPの関係は、果たして同じものたり得るのでしょうか?

 次から次へと謎や敵が現れるので退屈しないゲームです。プレイ時間がそこそこ長いので、時間に余裕があって近未来物が好きな人にはお勧め。ニトロプラス作品に傾向が近いので、同社のファンにもお勧めしておきます。

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