CROSS † CHANNEL
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田中ロミオ=山田一 FlyingShineはPILやrufのゲームを開発していたところだったと記憶しておりますが、CROSS†CHANNELでデビューして以降、3つのブランドを擁してハイペースでゲームをつくり続けているようです。つまり、それだけ本作の市場評価は高いのでして、発売から半年後の2004年3月18日には早くも今は亡きKIDからPS2に移植されています。 特筆すべきは、シナリオライターが田中ロミオという点(田中ロミオ=山田一。未確認ながらその手法と文体からは符号すると思われます)。山田一と言えば、あの加奈を手掛けた人物です。 ところで、私は本作を購入する前に珍しく体験版をダウンロードして途中までプレイしています。頭の悪い下品なギャグと説明不足で意味不明な展開から感じたことは「くだらない」の一言でした。そうした事情から発売日の購入は見合わせた(というより買う気はなかった)のですが、やけに周りの評価が高かったので、後日仕方なく手にしたというくだりがあったりします。 パッケージの裏には「生きている人、いますか?」という意味深なセリフが書いてあるのですが、どう見ても青春学園物風味の公式サイト紹介。今一つ、パッとしない印象を抱きつつプレイした本作でしたが、予想もしなかった驚愕の展開が……。「CROSS†CHANNEL」の持つ意味とは? 大化けしたおバカゲー キャラクター。良く言えば万人向け、悪く言えば無個性な絵。性格が濃い人物が多いので、絵を大人しくしたことでバランスが取られています。主人公を含む登場人物は全員とある特徴を持っており、表面的な設定も含めてシナリオに深く関わっていますので、この項目は高得点をあげて良いかと思います。但し、謎を抱えたヒロインが多く、それが最後の最後まで明かされなかったりするために感情移入しきれるかは疑問です。 グラフィック。背景は上手なものとそうでないものの差が激しく、違和感を覚えるほどではありませんが安定感がありません。立ち絵パターンと表情パターンは多く、感情を絵からも読み取ることが可能です。光の表現をかなり強調した絵が多く、こちらはやや違和感を覚える人もいるかもしれません。私は好きなのですが。イベントCGの出来栄えは良好でした。 ゲーム性。ネタバレになるので伏せます(反転→いわゆるループアドベンチャーです。)。正確を期するなれば一周と言う概念はありません。一本道のゲームといっても語弊はないでしょう。難易度は高くはないと思いますが、どこかで現れる選択肢に気付かないとエンディングを永遠に迎えられないためにシビアと言えばシビアです。 演出。ムービーはゲーム中の景色をCGで動画化したものにスタッフ名を載せたもの。人物解説などといったものは出てきません。エロゲーっぽくないのですがこういう形もありかなと。本編中のコミカルなシーンで、小ウインドウが出現してディフォルメされたキャラ絵が描き出されるのですが、コミック調の表現が笑いを誘いました。一部、非公式のNANACA†CRASH!!というフラッシュゲームでもこの表現が楽しめます(ついはまってしまう面白いフラッシュです)。 Hシーン。必ずしも純愛系Hシーンのみではありません。一部、陵辱あるいは鬼畜と感じられる表現もあります。主人公が縛られてしまうようなシーンもあるので、人によっては嫌悪感を覚えるかもしれません。ここぞという場面でHシーンが発生せず、よく分からない使い方をしているようにも感じました。無くても問題ないレベルですね。コンシュマー移植されているくらいですから元来必要性は低かったのかとも。 テキスト。星空ぷらねっとの頃から予兆はありましたが、非常にクセが強い文章です。このギャグは面白い人には面白いのでしょうけれども、ここまで来ると拒絶反応を起こす人もいるのではないでしょうか。私もその一人だったりします。全体的にセクハラ感漂う下品な台詞に、意味のない薀蓄を散りばめた無駄の多い地の分。言葉遊びもやりすぎはいけません。加奈の頃のスマートな文に戻らないかな……。 シナリオ。基本的に章構成で進んでいくと考えて良いかと思います。舞台はゼロトレランスが徹底された近未来。強固な意思を持った主人公を操って進めることとなりますが、これが曲者。主人公は知っていてもプレイヤーは知らないことが多く、ゲームを進める内に主人公が既に知っていた発言から謎について明かされていく仕組みです。情報格差の利用は山田一氏の得意とする手法。私はプレイヤーがライターに踊らされているようであまり好きではありません。後付けの利くトリックにずるさを感じるためでもあります。人によっては感情移入も出来ないことでしょう。ところで、本作はオープニングムービー前後までは頭の悪い青春学園劇場に過ぎないのですが、正体は壮大で謎の多い仕掛けが施されたSF風味の何かでした。この設定を明かしてしまうとゲームの面白さが損なわれるのでここでは述べません。しかし、ひとつ明らかなことがあります。本作のSF部分――つまり舞台の仕掛け――は単なる飾りに過ぎません。このゲームは、壮大な仕掛けを餌に、ゲーム創造主である田中ロミオ氏の哲学が語られた一種の「聖書」なのです。果たして田中氏の宗教にどこまで共感出来るかが、シナリオを考える上で最も重要となりましょう。もちろん、壮大な世界観を楽しむために手を出しても良いでしょう。しかし、このゲームに取り組むには少しばかり覚悟が必要かもしれません。間違っても普通の学園物ではないのでその点は要注意。
さて、色々と混沌とした要素の多い本作ですが、テーマだけは非常に分かりやすく表現されています。それはパッケージにも出ている一言、すなわち――「生きている人、いますか?」――に他ありません。そうです。これは作者から我々プレイヤーへの問いかけなのです。 では「生きている」とは何なのでしょう。それは、ただ存在していることとは違うのだと本作は告げています。自分を否定せず、あるがままを受け入れること。そうすることで人は始めて「生きている」といえるわけです。謎の多いエンディングですが、主人公太一は最後の最後でようやく仲間を含めたすべてを受け入れることが出来たのだと私は解釈しています(あれは、仲間の声であると同時に太一自身の声でもあったのではないでしょうか)。皆さんは「生きている」についてどう思われますか? 以下、私的感想。 ゴキブリが死滅しても生き抜いてやろうと思っている私にとって、このゲームは少しばかり説教臭く感じてしまいました。ここで私の言う「生きる」と田中氏の言いたかった「生きる」の意味はまったく異なるわけですが、それでも本作が世間でいうほど素晴らしい出来かというと微妙な気もしました。うーん、こういう内容(仕掛けではなくライターの思想)が高い評価を得るということは、生きていない人が案外多いのでしょうか(笑) |