Canvas2 〜茜色のパレット〜
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史上最強の萌えを世に生み出したCanvasから4年。 F&Cはあの伝説的名作の続編を発売しました。このことがどれだけ重要だったか。私にとってCanvasは伝説であり、萌えの素晴らしさとは何たるかを知った作品でした。それはまさに芸術だったのです。そんな芸術品の「2」が発売されると言う。少なからず反感を覚えました。失敗した時に私が被る精神的ダメージ、Canvasに抱いていたイメージを台無しにされると思うと諸手を挙げて歓迎するわけにはいきません。ですがその反面、期待していなかったと言うとそれも嘘になるでしょう。「あの萌えをもう一度」。そう思ったこともまた確かなのです。しかし、今回の2には重大な問題が存在していました。それは原画に☆画野朗氏の名前が無かったことなのです。彼の手がけたCanvasの正ヒロイン橘天音は私にとって史上最強のヒロインであります。そんな前作のメインを担当したスタッフがいないとは……。 2のメインを手がけるのはD.C.で一世を風靡した七尾奈留氏。果たして2は前作を上回ることは出来たのか、そこまでいかずとも伝説に泥を塗るような一本では無かったのか、その辺りを見つめていこうと思います。 そう言えば見つめる前に。前作にも言えましたが、さすがはF&C。ムービー結構良い感じです。 学園物……教師との相性は? 前作の特徴を思い出してみましょう。 それは複数原画家の存在と、ヒロインたちとの流れるような日常の会話を楽しむことにありました。 2でもその特徴は継承されていると言えます。原画家は前作から引き続いて担当している魚氏を除けば変わっておりますが(ちこたむ氏はグラフィッカーとして参加していましたが)、3人起用されています。ややキャラの原画家ごとの特徴が激しい様な気はしますが嫌悪感を抱くほどの違和感を感じることもありません。ヒロインたちとの会話に関して見るとエリスとの絡みが多い様な感を受けますが、前作の天音も悠編などでリンクしてきたことを考えると許容範囲。問題点はありますがそれは後述します。 それでは次にテーマを思い出してみましょう。 前作のテーマ、それは脳内を妄想で埋め尽くさせるまでの最強の純粋さであり、また挫折から立ち直っていく成長の過程でありました。2ではどうだったのか。先に後者の挫折から立ち直っていく過程に関して言えば、継承されています。立場が教師に代わっただけで本作の根幹にあるのは、挫折から立ち直っていく、言い換えてみるとストーリーの項にあるように「自分を取り戻していく」過程が描かれていることと言って間違い無いでしょう。ただ、それが成長かと言うと主人公が大人であるために微妙なところなのですが……。 それでは純粋さに関してはどうなのか。ここで先程のヒロインたちとの会話の問題点が関わってきます。実は2で繰り広げられる純粋な女の子との会話の大半は仮初めのものなのです。原因は主人公の設定に他なりません。そもそも主人公とヒロインとが純粋に会話を楽しめるポイントがどこにあるかと言うと、まず立場が同じでなくてはなりません。例えば我々が総理大臣と偶然に食事を共にする機会があったとしましょう。その時、私ならまず普通の会話など出来ないと思いますね。ここを御覧になっている皆様は如何でしょうか。多分、普通に友達感覚で話せる方はいないのではないでしょうか。つまりそういうことです。主人公は飽くまで教師であり、会話相手であるヒロインは一生徒。どうしても見えない壁、距離感がそこに生じるのです。 以上の点から2は純粋さと会話を楽しめるゲームであるかというと必ずしもそうでは無いということが挙げられます。 ただし、例外として霧の存在があります。主人公と幼馴染みの同僚という設定。二人とも大人であるので純粋さという面では微妙な線ですが、会話を楽しむCanvasの真髄はきっちりと残しているということは救いでありましょう。 前作の主人公は人見知りしないところがありましたし幾分やんちゃな面もあったのですが、本作は主人公が大人で立場もある以上仕方ない面もあると言えばあるのですが(^^; これが学園物で大人を主人公にするということの難しさなのかなあ。
そんなこんなでブツブツ理屈をこねてきたのですが、正直言ってどうでも良いです。ストーリーのレベルは純愛系としても決して低くは無いし、ムービーも歌もかなり出来は良かったし、キャラクターだってとても可愛かった。でも、これはCanvasじゃない。七尾氏が嫌いってことじゃないですよ? それでも極論を言ってしまうと、☆画野朗のいないCanvasはCanvasとは言えない。 何と言うのかなあ……。やっぱり私にとってCanvasはCanvasでしかないというか、あれしか無いんですよ。柚子に恋に百合菜先輩、藍ちゃんに瑠璃子先輩に悠姉さん、そして何と言っても天音たん。あのセピア色の世界に感じた萌えが私の中に占める領域があまりにも大きすぎるわけで。やはり伝説は一つしかないから伝説なのです。 私情の絡みまくった批評となってしまいましたが、これはこれで良しとします。これが私の感じたCanvas「2」です。ただ、本作は決して駄作ではありません。先程にも述べましたが、レベルは低くは無いのです。ですが、どうしてもCanvasと言う名前を背負っている以上、辛口になってしまったのも仕方が無い面が出てきたわけです。Canvasの続編という形で出なければまた別の評価が出たんだろうなあ……。 最後に。 皮肉ながらも、Canvas2を通じて我々はCanvasの偉大さを再認識したのである。 |