CLANNAD
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*今回の批評はいつもより長めです* あれから3年という月日が流れました。2004年4月28日、多くのゲーマー達が待ち 望んだ作品がついに発売されました。CLANNADの登場です。 Kanon、AIR……Keyは伝説をつくりあげました。そう、それは「伝説」なのです。 そんな二つの作品を前にして、CLANNADは新たな伝説を築き上げることが出来 たのでしょうか。 Keyのつくるゲームの主題は、以前から「人と人との繋がり」、簡単かつ明確な言 葉を使えば「絆」を示しているものの様に私は感じてきました。今回もその根底部分は変わら無かったと思います。それがKeyらしさと言えるであろうし、これからも変わる必要は無いと思います。 さて、CLANNADですが、舞台は一つの町。決して大きくない町の、とある 学園に通う不良生徒の物語。そんな本作には、今までに無い数のキャラクター達が登場 します。根底部分はこれまでの作品と変わっていないCLANNADですが、一つ大きく変 わった部分がそこにあります。主人公は「ひとり」ではありません。本来、以前のゲームを出すこ とは控えたいのですが、敢えて比較しましょう。ONE、Kanon、AIRと、このチーム の作り上げてきた主人公には、苦しみを分かち合えるような絶対的と呼べる親友や仲間 が存在せずにどこか孤独感が漂っていました。ですが本作は違いました。春原陽平というキャラクタ ー、同じ高さの視線で生きる親友の存在があったのです。春原は神出鬼没です。あ らゆるヒロインの攻略に、あらゆる笑いの場面に、あらゆる感動の場面に。鬱陶しいと 言っていいほどにまでストーリーに絡んできますよね。主人公に意見する。対立する。時には 助け合う。それが春原というキャラクター。彼の存在はCLANNADを大きく変えたと思います。親友の圧倒的な存在感は、ストーリーを主人公とヒロインとの単なる綺麗な恋物語 で終わらせること無く「リアル」を感じさせました。いや、リアルという言葉は語弊がある かもしれません。ゲームの中にプレイヤー自らが存在するかのような錯覚感を与えるに十 分な役割を果たしている、と言った方が良いでしょうか。いずれにせよ、CLANNAD において春原という存在は計り知れないほどの貴重な存在なのです。 また、彼の繰り広げる笑いの渦はかつて無い破壊力を持っていると言って良いですね。春原 に留まらず、今回登場する男性陣のギャグセンスは抜群。笑いを求めるゲーマーにも非 常にお勧めかも。 勿論、今回も各ヒロインは個性抜群です。魅力溢れるヒロイン達と主人公との成長物語。 設定がややずるめなところも含めて、やはりKeyの根幹は変わっていません。萌えに関 しては問題ないと思います。今回のいたる氏の絵の進化という点もありますが、例によって萌えなどよりも 重要なことにプレイヤーは気付くはずだからです。 そんなCLANNADですが、良い点はキャラクターのみではありません。 本作の評価できる点の一つとして、ゲームとして「遊べる」という点があげられます。純粋にADGとして遊べるのです。近年、選択肢が殆ど意味を成さなくなり一本道 的なゲームが多く出回っている中、CLANNADは改めてADGのゲーム性というも のを証明してくれました。選択肢による数々の分岐と多くのサブストーリーを用意し、プレ イヤーを飽きさせない工夫が随所に凝らされています。制作者の遊び心が満載であり手を 抜かずに細かいところまでつくってきている点は、高評価に値します。 また、18禁では無いこのゲーム。 愛を示すための手段の一つとしてキスを強調しますね。 必然性の高いキスはプレイヤーを十分に魅了し、ヒロインに対し深い愛を注ぎ込める ように十分な配慮をなされた演出がされています。全年齢対象という制約を上手く生かし た恋愛ADGの花形と言っていいでしょう。 かくして良いことずくめのように思われるCLANNADではありますが……。 抜群のキャラクター群……しかし構成は 多くのキャラクターが登場するCLANNAD。そのキャラクターも個々で終わるの ではなく、キャラクター間の繋がりもきっちりと存在します。さらには各キャラ毎にシナ リオが存在するという徹底ぶり。サブキャラの存在意義を明確に打ち出すのがKeyの 良いところの一つであるが、ここまでするとは。 だが、そこに同時に弱点が生まれてしまいました。 このゲームは、メインヒロインを全員攻略した後にサブキャラが攻略出来るようにな り、さらにサブキャラを全員攻略した後に真のEDが現れるという形式をとっています。 サブキャラを全員クリアーするために何周もしなくてはならないのですが、この時の共通 ルートが非常に長く、個別ルートに入ってからが比較的短いのです。メインヒロイン編では共 通ルートは短かったためにこれには疲弊しました。決して共通ルートが悪い内容だったとい うわけでは無いのですが、いくら感動する内容であったとしても何度も見ているうちに飽 きてくる点は否めませんな。また、真のEDをプレイする際にも共通ルートを通る必要があ り、必然的に何度も見てきたストーリーにうんざりしながら感動のEDを見ることとな ります。これでは感動の度合いも下がってしまうというもの。最後のシナリオは、サブキャ ラの共通ルートを一部削ってでもある程度独立させた形で作ってほしかったですね。この辺りはゲーム性を重視しすぎた余りに生まれたしまった弊害と言えるかもしれません。 また、キャラクターが多く、すべてにEDを持たせたが故に各キャラのボリュームが やや少なく感じる点をあげておかねばなりません。発売前は大ボリュームと開発陣が言ってましたが、テンポが良いからかそう長くは感じませんでしたし。これは良いことなんだと思います。 観点は変わるのですが、CLANNADには3人のメインシナリオライターと一人外注のラ イターがいまして、各シナリオはライターの個性が強く表れています。個別ルートに入 った時にそれは分かるのですが、共通ルートでは違和感無く統一されていて、個性が 表れてはいるもののCLANNADの舞台を壊すことなくつくられている点は評価出来ます。ただ、魁氏のシナリオにはKeyらしさを感じなかったなあ……。意外性はあったけれど君望っぽさを感じて、どこのメーカーでもつくれそうなシナリオの様な気がしました。まあ、これは私の望むものが大きすぎたということでしょうけど、皆さんは杏編、椋編、柊編、どう思われるでしょうか。 そろそろ締めに行きましょう。
すべてのキャラに「愛」を感じました。それはいつもの「萌え」からくる愛とはまったく 別物の愛。皆があたたかい。この存在感は何なのだろう。おそらく、この物語の幾つかの部 分はプレイヤーがかつて経験したのではないでしょうか。誰もが何らかの形で一度は受け たことのあるであろう「愛」を。だから感じるのではないでしょうか。圧倒的なリアル感 を。 そしてそれは最後までプレイするとより一層強く感じるのです。 酷評したシナリオシステムの構成ですが、それでも最後までプレイして得るものは計り 知れません。 すべてを終えたとき、古河渚というひとりの少女はプレイヤーの中でどこにいるのでしょうか。岡崎直幸というひとりの男はどこにいるのでしょうか。プレイヤーは主人公に何 を感じたのでしょうか。そしてCLANNADという「町」はどこにあるのでしょうか。 「家族」の意を示すタイトルのCLANNAD。家族とは人と人とのつながりの中でも 最も強いもの。 多くの人が密接にかかわりあう世界。 沢山のあたたかい登場人物たち。 それは圧倒的なリアル感。 圧倒的なキャラクターの存在感。 まさにプレイヤーは主人公。 絆。 人と人との絆。 夫と妻との絆。 親と子との絆。 人と町との絆。 CLANNADは壮大でそして当たり前の絆を、そして愛を見せてくれました。 CLANNADはもしかすると人生の縮図なのかもしれません。 そうです。お気づきになったでしょうか。 これは長い、長い坂道。 春。 ありふれた学園生活から始まる、人と町の物語。 CLANNADは、また一つ伝説をつくりあげたのです。 |