DUNAMIS15
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ループ・ザ・ループ 私がループ物好きであることは折に触れて書いてきたつもりです。それを反映してか、当サイトレビューでもinfiniryシリーズやSteins;Gateなどは高得点となっています。実際、客観的に見ても評価出来る内容だと私は考えています。これらのゲームのお約束として「ループする」ということが少なくともパッケージでは伏せられていることが挙げられます。これにより、プレイヤーはプレイ中に思いもかけない事態に遭遇したように感じ、高揚感を覚え、冒険心を擽られるのです。もっとも、infinityのようにシリーズになってしまえば購入前から予想出来てしまいますが。そんなループ物にあって、本作はパッケージに「ループする世界」と明記されている珍しい作品です。加えてプレイヤーにシナリオ上の重要な秘密であるはずの「クローン」という情報まで事前公開してしまうとは、余程自信がある証拠なのでしょうか? ワクワクしながらプレイしましたが、意外な結末が待っていました。 初回限定版として付属するのは、本編中のヒロインが着用している特製ヘッドフォンとサウンドトラックです。 科学かオカルトか? ■シナリオ 何度も同じ期間を繰り返す「ループ物」です。期間毎に主人公が変わるのが特徴で、その間の選択肢がループの断ち切りなどに影響を及ぼさない点が、他のゲームと異なります。ループする法則、記憶の欠落、消えてしまうヒロイン……など、謎が多く、これらを解明していくサスペンスADGとなります。その多くは根拠立てた説明によって解決されていくのですが、一番肝心なループの謎を明かすクライマックスシーンで突如オカルト要素が混じってくるので、ご都合主義的な話ととられても仕方のない面があります。私としては科学的にまとめてほしかったので、最後の最後で狐につままれたような気分になってしまいました。 ■キャラクター 原画は長浜めぐみ氏。この人の作品はプレイしたことがないのですが、目が小さくてやや冷たい感じのするタッチです。それが本作にはむしろ良い効果を与えていると思います。ギャルゲーらしさはあまりありません。 このゲームは各キャラの隠された設定が大きな見所です。設定については各キャラ自身知らないことが多くあり、ゲームを進めながら謎が明らかになっていきます。この謎がシナリオ上の肝になっており、サスペンスADGらしさが存分に発揮されています。 本作では周回毎に主人公が変わるのですが、操る主人公によって性格の印象が大きく変わります。これも大きな魅力です。例えば、東吾視点での一花と、一花視点での一花では、まったく印象が異なり、他キャラの前では見せない内面が表されるのです。無論、逆もまた然りです。それだけ「裏の顔」が見えるということは、キャラの性格がほぼ100%明らかになるということで、評価出来ます。実は主人公として操れないサブキャラも物凄いことになっているのですが……。 また、相当なベテラン声優を起用しているのも特徴ですね。島本須美さんや丹下桜さんの声をギャルゲーで聞く機会なんてそうそうあるものじゃないので貴重かも。 ■テキスト 周回毎に主人公が変わりますが、合わせて地の分もそのキャラの会話調になります。心理面をよくフォーカスしているので、他のキャラの視点では感じ取れない「裏の顔」が良く分かる面白い内容となっています。特に女性キャラの黒さときたら(笑) キャラの魅力が余すところなく伝わってくるテキスト……とも言い換えられるでしょう。 ■演出 オープニングムービーは、立ち絵やイベントCGを使ってキャラ紹介をしながら、ムービー用に作られたDNAの構造体や風車といった意味深な3DCGを流す内容。あちこちにテキストも散りばめられていますが、プレイ後、かなり重度のネタバレが含まれていることが分かると思います。 目パチ・口パクを実装しており、効果音も豊富です。一画面に多数のキャラが並び、立ち位置によってアップになったり小さく表示されたり、遠近感が分かるようになっています。 ■ゲーム性 沢山選択肢が出て、間違えると即バッドエンドになります。それ以外はほぼ一本道で、好感度に関するような選択肢も意味はありません。つまり、マルチエンディングではありません。 ■シチュエーション メインである高槻と芽早の関係構築が物凄く唐突なので、プレイしていて感情移入が難しかったです。というか、何故芽早……? その他のキャラに関しては、互いを慕う動機付けが明確に示されたり、ドラマチックな状況が用意されているので問題なし。 ■グラフィック 背景は正確に数えたわけではないのですが30枚程。夏來以外の学生の部屋が全部描かれていて、それぞれのキャラの性格や思考が現れていて面白いです。夜と昼のシーンがあり、明かりが点いたり消えたりします。絵は丁寧で、図書館など本もしっかり描いてあります。モブも抜かりなく存在しています。 立ち絵は一人当たり3〜4パターンで、これに服装が3パターン程、表情パターンが多数加わります。どれも均整の取れた仕上がりです。 イベントCGは差分なしで83枚(+販促用3枚)。服や髪にスクラッチ調の効果がかけられているのが特徴です。肌は塗り分けがはっきりしています。ショッキングなシーンでの鬼気迫る表情が目立ちます。個人的には倭の暴れているシーンが気に入っています(笑)。また、一部血が飛び散ったりと残虐な描写があります。内臓がはみ出たりまではいかないので、目をそらすほどでもないと思います。
「やがて君は生きることの意味を知る」――本作のキャッチコピーです。生きることに意味など予め用意されていたりしない……と思うのですが、それは作中でも同じような見解がなされていて、予め用意されていないからこそ、自分で見つけ出していく必要があると説かれています。数学のように決まった答えが用意されていないので、先がどうなるか分からないのは当たり前。何度失敗しても、自分のペースで自分の道を選び抜いて最後まで自分の力で歩いていくのが大切なわけです。 ゲームでは奇跡の力が介在してハッピーエンドに漕ぎ着けましたが、現実にはオカルト的な奇跡など起こりません。自分でやりたいと決めたことは、奇跡がなくても自力で現実にしていかなければなりません。ただ一方で、自分以外の人が介在する出来事については、自分で決めることが出来ない以上、偶然に頼らざるを得ないところがあります。もしこれを小さな「奇跡」と呼ぶのなら、グランドエンディングで告げられるように、あらゆる「全部のことが、奇跡でできている」と言えるかもしれません。何故なら、あらゆる局面で自分以外の人間の力は何らかの形で介在しているからです。そんな必然と奇跡の両面を表したのがDUNAMIS15なのです。 ただ、やっぱりオカルトは納得いかないなぁ……。面白いことは認めますし、アリかナシかと言われればナシとはしないのですが、科学的解決を求める人にはお勧め出来ないかも。 |