EVE burst error
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シリーズ最初にして最高の傑作
アダルトゲーム・コンシュマーゲーム共に大ヒットしたEVE burst errorは、EVEシリーズの第一作です。1995年にPC98から原作(18禁)が発売されると、97年にSS、Windows、2003年にPS2、Windows(18禁)へそれぞれ移植されています。この批評はSS版です。 本作の特徴は、2人の主人公「天城小次郎」と「法条まりな」を交互に操りながらストーリーを進行させていく「マルチサイトシステム」にあります。詳しくは後述しますが、まったく関係がない2人が複雑に絡み合う別々の事件を追いながら、1本のストーリーを作り上げていくこのシステムが、本作をゲーム性を維持したまま一本調子にならないバランスの優れた推理ゲームに仕立て上げています。「推理物」と呼ぶには問題点もありますが、ギャルゲーの教科書に太字で出ることは間違いない名作であります。 SS版では、ゲームディスクが3枚に分かれており、操る主人公を変えるごとにディスクを入れ替える必要があります。また、メイキングディスクも付属しており、こちらはゲームをクリアーすることでCG・音楽や声優メッセージを鑑賞することが出来ます。 2人の主人公を導くマルチサイトシステム ■シナリオ 主人公2人のルートから情報を得ながら、連続殺人犯の正体を暴いていく推理アドベンチャー。現代世界を舞台に、緻密な設定が施された国家や組織を登場させ、終始シリアスに展開していきます。 2人がまったく別々の事件を扱っているように見せながら、巧妙に事件と登場人物を交錯させ、1つの結末へと収束させる様子は実に見事です。情報の散りばめ方も工夫されています。2人に同じ情報を与えないことで、まったく異なる行動をとらせ、プレイヤーを飽きさせずに予測のつかないストーリーを作り出すことに成功しています。勿論、偶然から協調行動をとることもあるのですが、ほとんど接点がないままクライマックスまで持ち込むので、大変幅の広い群像劇に仕上がっているといえます。 問題は本作が推理アドベンチャーであり、ラストに殺人犯の正体を入力させる選択肢を用意しておきながら、解答に至る材料を提示し切れていない点にあります。人参とジャガイモと玉ねぎと牛肉まで用意しておきながら、肝心のカレー粉がないために、作られる料理が肉じゃがなのかカレーなのかさっぱり分からない……そんな状況が最後の最後まで続くのです。これ、一発で全問正解した人いるのかなぁ……。未だに疑問です。 ■キャラクター キャラデザはアニメーター・原画家の田島直氏。派手さはないのですが、等身バランスのとれた大人っぽい絵です。90年代のギャルゲーは、まだ目が大きすぎたりロリっぽさを不自然に強調したキャラが少なく、一般ピープルがそれほど敬遠しない見た目の絵が多かった気がします。これもその一つですね。陰や境界線がクッキリしており、アニメ屋さんらしさが出ています。 設定はシナリオと密接に関わっているものばかりで、ほとんどのキャラにおいて遊びの余地無くガチガチに固められています。これらのキャラ設定をどこまで理解しているかでゲームへの印象が大きく変わるでしょう。性格面ですが、どのキャラも職業意識が強く、性格がそのまま職業を表していてとっつきやすいイメージを受けます。総じて強気な女性ばかりですが、反面、仕事への悩みや弱さも抱えており、ビジネスとプライベートでのギャップを楽しませてくれることでしょう。 ■テキスト 選択したあらゆるコマンドで、主人公がコメントをつけながらアクションをおこします。9割方がギャグ。コマンド総当りなのでこれらのギャグをすべて読んでいかなければクリアー出来ません。これでギャグがつまらなければ苦痛そのものなんですが、面白いから困ってしまうんですよねー。多くの場合、比喩的表現を用いたりせず、ただただ滅茶苦茶なアクションで笑わせてきます。会話もいがみ合ってばかり。しかも子どもの喧嘩レベルのものが多く、決して洗練された文章ではないんですが、大の大人がやるから面白いんですよね。 ■演出 アニメーションのオープニングムービーがあります。本編ではテキストでサラリしか説明されない主人公の過去(といってもプロローグ程度ですが)を、映像で補完しています。プロローグ以外の本編の内容にも触れてあり、粗いながらも見所は多いと思います。アニメーションはゲーム中でも要所要所に挿入されており、臨場感を出しています。 それ以外の特殊な演出ははありません。ただ、所持アイテムや捜索箇所が画面上で拡大表示されるのは良かったと思います。 ■シチュエーション 特定のヒロインを狙って進めるゲームではないのですが、女性キャラの多くに濡れ場っぽいものが用意されています。普段は仕事に燃える彼女達が、悩み弱っているときに現れて包み込んであげる……というパターンが多いです。段階的に恋愛が発展していくというよりは、突発的にそのヒロインの魅力に気付いてしまい、そのままHシーンにもつれ込むというものがほとんどと思ってもらって結構です。それでも不自然な感じがしないのは、ギャップの魅せ方が秀逸で「ここで放っておくわけにはいかない」と思わせるシーンをつくれている証拠ですね。 ■ゲーム性 基本システムは、昔ながらのコマンド総当り方式です。出てきた選択肢をひたすら選択しまくることで、ゲームを進行させていきます。忍耐力が求められますが、難易度はある意味0といえます。 最大の特徴は2人の主人公を交互に操り、ストーリーを進行させていく「マルチサイトシステム」を採用していることでしょう。コマンドを全部選んでも進まなくなったら、主人公交代の合図です。ザッピングを行うことにより、プレイヤー視点で双方のシナリオから互いに必要な情報を補完し、1つの結末へと導いていきます。SSの傑作「街 〜運命の交差点〜」をご存知の方は、その2人版と思ってもらえば良いでしょう。マルチサイトシステムの語り草となっている、中盤の「ハッキングシーン」は興奮しますよ。ギャルゲーマーなら体験しておきたい名場面です。ただし、主人公を交代するにはディスクの入れ替えが必要です。これが多くのプレイヤーには面倒臭く感じられるため、サターン版の弱点となっていることも事実です。 また、シナリオ項目でも記しましたが、このゲームはラストで犯人を入力する選択肢が現れます。こちらはかなりの難易度になっています。 ■グラフィック 移動が多いゲームだけに、背景は30枚以上用意されています。塗り、パースはまったく問題なし。建物には汚れをつけたり陰を強調したりと、個体差をしっかりつけています。 立ち絵は各キャラ2〜3種程度、表情パターンも3種類前後とこちらは少なめです。 イベントCGは立ち絵から質が大きく向上するわけではありませんが、問題なく見れるレベルです。萌えシチュエーションでCGを出すというより、緊迫した事件のシーンで多く使われています。キャラクターよりシナリオを印象付ける方にエネルギーを振り向けているように感じます。
本作には国家の運命を背負った人物が多く登場します。反感を買いつつも改革を進めるロイド首相、民主制移行を前に王位継承を目指すプリシア、自らの罪を清算するために罠に飛び込んだ桂木所長……。彼らは人々に「幸せになる権利」を与えるために危険を厭わず活動し続けます。 では、何をもって幸せとするのでしょうか。ラストシーンで真弥子が発したセリフを意訳すると人間は「自分を必要とする人がいて初めて、存在意義が発生」し、その状態こそが幸せであるという結論に達します。そしてこの幸せの定義こそが、本作のテーマなのです。これを裏付けるかのように、プリシアは「民の審判」に自らの命を託すと話します。民に必要とされなければ存在が消えてなくなることを考えると、このシーンではより直接的に本定義を肯定出来るといえましょう。 ストーリーでは、エルディアのその後――プリシアのその後――については触れられていませんが、私はプリシアの改革は成功したものと確信します。何故なら、プリシアは真弥子の求めた「幸せになる権利」を理解した上で、真弥子の求めたものが実現する社会を作ろうとしているからです。そしてそれは、誰にでも「自分を必要とする人」がいる社会に他ならないのです。 |