加奈・・・おかえり!!

ブランド高屋敷開発 発売日2004.11.19
コレクションBOX8800円 
ハードPC ディスク数CD2枚
OSWin98/Me/2000/XP ジャンルADG
原画米倉けんご(加奈〜いもうと〜)
綾風柳晶(加奈…おかえり!!)
 シナリオ山田一
音楽へちま
高橋秀紀
 
音声フルボイス ボーカル曲あり

ストーリー
自分には"加奈"という名前の、2つ年の離れた妹がいる。

加奈は病弱で、小さな頃から入院と退院を繰り返す毎日を送っていた。

両親はそういった妹にかかりっきりになることが多く、幼かった自分にとって加奈は「自分から両親を奪う、憎むべき存在」でしかなかった。

しかしある日のこと、家族で出かけたハイキングの最中に起こった事件がきっかけで、加奈に対する感情は変化した。


「絶対に守ってあげなくちゃいけない。兄である自分が…」


以来、あなたは幼い頃に誓った心のままに、妹である加奈を守り、そして彼女の幸せを祈っている。

かつてあれほど加奈を大事にしていた両親が「過保護すぎる」と心配するほどに、大事に、大切に加奈を見守り続けている。


そして加奈は、自分をずっと守ってきた兄の背中を見つめ続けてきた…。

キャラクター名私的お気に入り度声優属性
藤堂隆道■■■■■■■■■■■■??/10主人公・妹想いの兄
藤堂加奈■■■■■■■■■■■■??/10小田真ゆみ妹・病弱
鹿島夕美■■■■■■■■ 8/10支倉ミキ元気っ娘
近藤美樹■■■■■■■■ 9/10北都南看護婦
霧原香奈■■■■■■■■ 8/10金田まひる元気っ娘・病弱・ロリ
霧原須磨子■■■■■■■■ 9/10森ヒロリ叔母・病弱
伊藤勇太■■■■■ 5/10潤潤後輩
長瀬智樹■■■■■■■■ 9/10会川翔一親友
船津育郎■■■■■■■■ 9/10松山正治親友
下田雅敏■■■■■■■■ 9/10菱勝親友・悪友

主要搭載システム
BGM及びボーカル曲
●オートメッセージ
●スキップ(既読判定あり)
●バックログ
●CG鑑賞(クリアー後)
●音楽鑑賞(クリアー後)
●エンディング鑑賞(クリアー後)
●BGM13曲
●OP歌
 白い季節
 KANA
●ED歌
 あなたへ
 KANA
●挿入歌
 Believe 〜つぶらな瞳〜
 KANA
●挿入歌
 メッセージ(追加)
 有村深羽
●挿入歌
 潮騒のメロディ(追加)
 有村深羽
雑感
個人的名曲
 ゲーム進行に必要な機能は一通り揃っていますが、Hシーン鑑賞がありません。CG鑑賞でアニメと音声の一部は見れるんですけどね。
 オートメッセージスピードも細かく設定出来て使いやすいです。
 ただ、終始画面上にオプション関連のボタンが見えるのがビジュアルノベルとしてどうかと思わないでもない。カーソルを合わせるまで消えるとか工夫があれば尚良かったのですが。まあ、気にならない範囲ではありますけど(^^;
 全体的に静かでしっとりとした曲ばかりです。ゲームの雰囲気にはとても合っていますが、やや暗く感じるかもしれません。歌が原作に2曲加わっています。両方とも良い歌で良かったです。歌はすべて歌詞が感動的なのでじっくり聴いてみましょう。プレイ後は思わず涙が出てきそうになります……。

●あなたへ
●Believe 〜つぶらな瞳〜
●メッセージ
●夕暮れの街路樹
●ひとつになった気持ち
●二人のアルバム
智代
(C)高屋敷開発
たいせつな人が、います…。
伝説の泣きゲーと企業倫理


*第三章がややネタバレの感がありますので、ご注意下さい。

 闘病を扱った伝説的泣きゲーの加奈。このゲームを知らない方はあまりいないかとは思いますが、軽く加奈の歴史について触れておきましょう。

 1999年にD.O.より発売された「加奈〜いもうと〜」。その感動的且つ悲劇的なストーリーはユーザーから圧倒的な支持を受けます。2000年にはMac版、2001年にはOSをME/2000に対応させた廉価版が発売されましたが、いずれも店頭からかなりの勢いで姿を消していきました。さらに、2001年には筑紫哲也のNEWS23の「幸福論」コーナーで何と加奈が取り上げられました。内容は加奈やエロゲー自体と言うよりはオタクをパッシングする感じでしたが……。そんな加奈は、ついに2003年にパンサーソフトウェアからXboxに移植が決定。これには驚きましたよ。何しろXboxですから。原作には無かった音声をつけて(加奈には川澄綾子さん)、クセの強かった米倉氏の原画は万人向けの綾風氏にチェンジして後は発売を待つのみ! ……しかし、Xboxと言うプラットフォームはあまりに脆弱すぎました。度重なる延期の末、2005年5月、ついに制作費回収困難を理由に発売中止が決定となります。

 ……その1年前、つまり2004年、とある製品の発売が発表されました。それが本作「加奈…おかえり!!」です。思えば、この時から既にXbox版の発売中止は決定していたのかもしれません。本作に使われていた絵はXbox版のもの。キャストはXbox版と違いますが音声を付けての発売。一体中身は何なのか? 「おかえり」とはどう言うことなのか? 加奈の続編? それともファンディスク? 様々な憶測が飛び交いましたが、蓋を開けてみれば何のことは無い、本作は加奈のリメイク版に過ぎませんでした(^^;

 ところで、私は加奈のリメイクに特別嫌悪感を抱いてはおりません。発売から6年も経ちますし、ボイスを付けて絵も変えてのリメイクならば妥当であると思っています。これからこの世界に入ろうとする方にとっては良い機会だとすら思えます。しかしながら、このゲームには一つの問題がありました。「おかえり」は「Play-Gate版」と「コレクションBOX版」の二つの種類があります。コレクション版は様々な特典が付いてくるのですが価格が2000円程高い。と言うことは限定版と通常版との関係なのかと言うとそれは違います。Play-Gate版はネット認証システムで、こちらは起動時に毎回ネットに接続して認証しなくてはならないと言う大変不便なシステムなのです。コレクション版だとネットに繋がず起動出来てPlay-Gate版はネット認証が必要。これはおかしくないでしょうか? 普通に起動させる技術がありながらも「楽に遊びたければ高い方を買え」と言う魂胆はユーザーのことを考えているとはとても思えず、企業としての姿勢を疑ってしまいます。ここだけがリメイク版として残念な点ですね。
 さて、批評に移りましょう。


これぞビジュアルノベル! 〜説得力のあるテキスト〜


 今回は原作と比較しつつ進めていくこととしましょう。

 まず、CDをセットしてD.O.のロゴが出た直後にムービーが開始されます。主題歌「白い季節へ」と共にCGとスタッフが流れてきますが、特筆すべき様な素晴らしさはありません。ですがこのムービー、クリアー後に見ると一味違いますよ。何の感慨も無かったものに何故か感動します。それが加奈の魔力なんです。一周でやめた方はお試しあれ。

 キャラクター。ここがリメイクにおける最大のキーでしょう。まず、原画家が変わったことにより画風が大幅に変わっています。原作の米倉氏の絵は大変クセが強く、CGによってまったくキャラや年齢が違って見えることがありましたが、今回はそうしたことはありません。比較的万人向けの絵ですので、原作は絵が元で敬遠したと言う方もこれを期に触れてみるのも良いかと思います。
 性格付けに関して。ヒロインの加奈は勿論のことサブキャラから名前の無いキャラに至るまで、登場する全員が重要な役割を果たしています。そして全員がとても純粋な心を持った人間ばかりです。世界にいる人がこんな人達ばかりなら戦争など起こらないことでしょう。中でも一番好きなのは主人公藤堂隆道。妹想いの過保護なシスコン野郎と言えばそれまでなんですが、隆道の加奈に対する態度を見るとその一言では括り切れないと思います。とにかく隆道とのシンクロ率が半端ではなかった私にとって、ギャルゲーでこれ程好きになれる主人公は後にも先にもでないことでしょう。
 また、声が付きました。ある意味絵よりも重要な変更点なのですが、グッドジョブです。違和感はほぼゼロ。皆さん上手く演技されていると思います。特に大人陣。須磨子さんは中でも素晴らしい演技力だと思います。ちなみに、萌えボイスとかそう言ったことではありませんので注意。純粋に演技力での評定です。

 Hシーン。ここもリメイク版のポイントです。流れは変わっていませんが、パートアニメになっています。……これが最悪。主人公の腰がブルブルと震えるのが滑稽でたまりません。絵も質が低くて明らかにアニメにしない方が良かったと思います。一体何を狙ったのやら? ただ、演出は悪かったもののHシーンの必要性は非常に高い。妹との禁忌を犯す深い葛藤と決意、そして限りない愛が見て取れます。このゲームはHシーンが無ければ成り立た無いと言える程に重要な役割を果たしています。これぞ私が18禁ゲームに求めるもの。

 テキスト。このゲームにおける最大の演出はテキストと言っても過言ではありません。きっちりとキャラクターの視点に立った文章が書かれています。このゲームでは主人公の年齢によって幼少期、中等期、高等期と分かれるのですが、いずれも主人公の年齢に相応な考え方がそのまま文章になっています。そして読み易く比喩的で感情表現も豊か。これぞビジュアルノベルと言える文章です。読み物として優秀ですよ。ただ、一部で矛盾する文があるのが興醒め。おそらく選択肢との関係でのミスなのだと思いますが。選択肢と言えば、このゲームは微妙に難易度が高くて分岐が分かりにくかったりしますが(^^;

 最後にストーリーについて。「いもうと」でも「おかえり」でも変化はありません。本作は簡単に言うと、加奈の闘病とそれを見守る隆道の生き様を描いた非常に感動的なゲームです。途中で隆道と加奈の間には愛が芽生えた……ああ、お決まりの展開か……と思いきや、まったくそんなことはありませんでした。本作は、妹との院内いちゃいちゃラブコメディーなどでは決して無く、非常に現実的な物語です。その意味で本作はKanonの対極に位置するゲームと言えるでしょう。Kanonも加奈もプレイしてとても感動しました。しかし、両作の持つ「感動」の意味合いは180度違うと言えましょう。Kanonが奇跡を起こして感動させるならば、加奈は現実を突きつけて感動させるのです。感動と言うよりはむしろ衝撃と言った方が良いかもしれません。現実的なものはストーリーの大筋以外にも存在します。「人間」としての加奈を描いているところです。決して清らかで無垢な加奈だけでは無く、人間として汚れた一面をも描いているところがポイントなのです。これ以上は最後の章で扱いますので、一先ずここまでと致しましょう。


総合得点■■■■■■ 75/100
おすすめ度■■■■■■■■■■ 10/10
ボイス■■■■■■■■■■ 10/10
シナリオ■■■■■■■■■■ 10/10
テキスト■■■■■■■■■■ 10/10
キャラクター1■■■■■■  7/10
キャラクター2■■■■■■■■■■ 10/10
音楽■■■■■■  7/10
演出■■■■■  5/10
システム1■■■■■■  6/10
システム2■■■■■■■■  8/10
Hシーン1■■  1/5
Hシーン2■■■■■■■■■■  5/5
グラフィック1■■■■■■  3/5
グラフィック2■■■■■■  3/5
明日の私、今日の私


*注* ややネタバレ感あり



「加奈」のテーマは二つ存在します。

 一つ目は「加奈の死生観」です。命が残り僅かと宣告されながら、日々を悔いの残らない様に精一杯生きる少女の姿がプレイヤーを感動させるのです。人は何のために生きるのか。本作では加奈の死生観を通じて一つの答えが導き出されています。人は人を愛するために生きているのです。本作では、闘病の他にもう一つの大きなキーワードがあります。それは「禁忌」。「加奈」は妹の闘病を見守る兄の話であると同時に兄妹で愛し合うことの禁忌を扱う倫理的な話でもあるのです。本作では倫理観は死生観に敗れ去ります。「人を愛する」と言う生きることそのものの「目的」の前には何者も立ち塞がることは出来ないのです。そしてそれを実行出来るかどうか。つまり加奈の生きる目的を叶えることが出来るかどうかはすべてプレイヤーの手に委ねられています。隆道は加奈のすべてです。隆道にとっても加奈がすべてになった時、本当の意味で「加奈」のテーマが見えてくるのです。一方通行でも愛は愛ですが、加奈の望む「愛」は最後の最後まで隆道と結ばれることなのですから。そしてその時、加奈の死生観は世界のすべてに肯定されます。何故なら、加奈のすべては隆道なのですから……。

 二つ目のテーマは「隆道の死生観」です。ストーリー中、隆道が何度か「将来の目標(目的)」を聞かれる場面があります。すると、彼は答えに窮してしまうわけです。何故なら隆道の生きる目的は、自分のことでは無く「加奈を守る」だから。ある意味、既に隆道は十分に彼なりの目的を達しているのです。しかも目的は将来も今も変わらないことでしょう。そして、プレイヤーはやはり精一杯加奈を守る隆道の生き方に感動するのです。しかし、ベストエンドを含むすべてのストーリー終盤で、隆道は目的を失ってしまいます。「加奈を守る」ことが出来なくなってしまうのです。隆道の死生観は音をたてて崩れ去っていくというわけです。そして、隆道はこれまでの生き方を再構築していく必要にせまられます。

「加奈」は、隆道が新しい自分の生き方を見つけた時に真のエンディングを迎えます。それは、加奈の死生観を通じて隆道の死生観を発展させることを意味します。「加奈」は確かに闘病をシナリオの中核においたゲームでした。しかしもう一方で本作は、隆道のアイデンティティーを妹と共に築き上げていく「隆道の」成長物語でもあるのです。

 本作を通じて、私は多くのことを考えさせられました。一体「生きる」とはどういうことなのか。生きる「目的」とは何なのか。加奈では一つの生き方が提示されています。それを記して締め括らせていただきます。



「願わくば、明日のわたしが、今日のわたしより優れた人間でありますように……。」

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