家族計画
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山田一と言えば、加奈と星空☆ぷらねっとを手掛けたシナリオライターで、エロゲー業界では有名と言っても良い人物でしょう。彼の名前を一躍広めたのが批評で取り上げる「家族計画」です。このゲームは相当の人気を博したようで、2002年には音声とCGを追加した「家族計画 〜絆箱〜」が発売され、2005年にはPS2に移植されました。さらに、2004年には外伝の「家族計画 〜そしてまた家族計画を〜」が高屋敷開発から発売されています。 ギャグにしか見えないタイトルとは裏腹に、当時はKanonやAIRに勝るとも劣らない泣きゲーとして高評価を受けていた家族計画。しかし、なぜそこまで良い評価を受けているのか今ひとつ理解できないんですよね。感動がなかったと言えば嘘になりますが、そこまで泣ける話だったかといえば、涙ひとつ流れなかったというのが事実。原因はゲームバランスの悪さにありました。ただ、一方では悪いゲームとも思ってはいません。家族と絆について本作ほど分かりやすく直接的にアプローチしているゲームは少ないでしょう。その点では評価に値しますし、批評する価値があるゲームだと思います。果たして、家族計画の目指した家族とは如何に? 決め手は分かりやすさ ■シナリオ ヒロイン達と擬似家族をつくって生活する内に、人間関係の構築を嫌っていた主人公が家族の絆に目覚めるという内容。トラウマ克服型のシナリオで、トラウマそのものにギミックが仕掛けられており、トラウマ克服の要因を感情ではなく事実認識の齟齬に求めているため、客観的に受け入れやすい内容になっています。そのトラウマを克服しつつ、ヒロインの幸せも明確に実現させるところに星空☆ぷらねっととの違いが見出せます。これはヒロインの目的が明らかであり、ヒロインと主人公の最終目的が「絆」の構築で一致していたからです。また、不幸でアクの強い人間に擬似家族という形態を取らせ、常に崩壊の危険性をはらませながら繋がりの強さと弱さを交互に見せることで「絆」という曖昧なものを分かりやすく表現することに成功しています。分かりやすくて客観性が高いため、多くの人に受け入れられやすいシナリオになっている点は褒めるべきところでしょう。 ■キャラクター 福永ユミ氏の絵は荒削りな面も見受けられますが、目が大きいことを除けば然程クセは強くありません。身悶えるほど可愛いかと言われるとそうは思わないのですが、普通にプレイする分には支障ないレベルです。 主要キャラクターは、全員不幸を抱えており、彼らが共同で不幸を克服しようとコンセプトがよく表れた設定になっています。青葉と寛のキャラ付けは意味がないのですが、テキストを面白くする上では役に立っていました。ただ、前半に寛がかなり目立っていたことを考えると、後半活躍させる上でも破綻した性格にもう少し意味を持たせても良い気がしました。青葉も毒舌という設定があまり生きていなかったのは残念。他のキャラは問題ありません。 ■テキスト 大部分が会話で構成されており、テンポ良く話が進んでいきます。一方、唐突に登場する主人公の独白に戸惑いを感じることも度々。これがシナリオギミックになっているのですが、プレイヤーとキャラクターの情報量に差があるので感情移入が難しく、時系列の変化も曖昧になっていて状況が分かりにくいテキストになってしまっています。多発されるギャグは癖があるので好き嫌いが分かれそう。また、星空☆ぷらねっとの頃からですが、文に顔文字や2ch用語を多用するのは何とかならないものでしょうか。 ■演出 オープニングムービーは、イベントCGを使いながらヒロインを紹介していく形式。木の葉が舞い、CGをつなぎ合わせたリングが回転しながら画面を動き回るところは凝っていると思います。ただ、画面サイズが小さいのでフルスクリーンにするとかなり荒くなるのが残念。効果音が豊富で、寛とのバトルシーンなどは聞いていると面白かったです。印象的な画像効果としては火の表現でしょうか。他には、タイトル画面に攻略したヒロインが現れる点は良かったです。 ■ゲーム性 評価を下げた原因。選択肢は多いのですが、主人公が選択に沿った行動をしないのでフラグ管理以外の効果がなくプレイヤーとしては楽しめません。例えば、●●を【する】と【しない】という選択肢で【しない】を選んでも、「●●をしないでおこう……やっぱりした方がいいか」となって選択肢としてあまり意味がない結論に辿りつくことがしばしば。そして、とにかく共通ルートが長い。全体の7〜8割を占めます。1人〜2人攻略したら後はほとんど既読スキップで進めていくことになるので、せっかく感動シーンを迎えても白けてしまいます。共通ルートの内容が良いだけに、非常に悔やまれるところです。せめて5:5であれば、もっと良い評価ができたのですが……。 ■Hシーン ヒロインによって回数が異なります。1〜4回。身体の繋がりによって絆を深めるという目的があるので、必要性は高いといえます。純愛形式で、無理矢理というパターンはありません。1シーンが短い上、官能的な文章が書かれているわけでもないので実用性は低いでしょう。特殊シーンとしては、薬で興奮した主人公が慰められるものがあります。 ■グラフィック 背景はかなり雑。影などにこだわられていないため、立体感があまりありません。塗りも綺麗ではありません。イベントCGは、枚数が10〜23とヒロインによって数にばらつきがあります。概ね、必要な場面にCGが出ていました。質は立ち絵とあまり差がありませんが、雑ではありません。立ち絵パターンは各キャラ5パターン以上。表情は多彩ですが、やや安定感に欠けておりバランスが悪いものも見受けられます。特に青葉が顕著で、等身がおかしかったり顎が尖り過ぎていたりします。また、重要なサブキャラであるはずの景と忍と楓に立ち絵がなかったのは減点。寛のファイティングポーズに気合を感じます。
本作のテーマは「家族」と「絆」です。 家族をつくること自体は、それほど難しいことではないのかもしれません。しかし、絆を築くことは難しいことに違いありません。不幸にして、絆を築けない家族をつくってしまったとしたら、そこに待っているのは辛く悲しい崩壊です。家族をつくることで安心を得るには、絆という信頼が必要不可欠なのです。だからこそ、家族とは最も絆が強い者たちで構成されるべきだといえます。 本作で面白いのは、家族に血縁が絡まないところでしょう。絆のない者が家族をつくるとどうなるか、そして絆ができた場合はどうなるかが示されているだけ。そもそも、家族とは元は非血縁者同士からつくられるものなので「血」は然程重要ではないのかもしれません。血縁でなければ家族ではないという主張と、血縁者同士で構成された家族の崩壊という逆説的な結果を描くことで、それが示されています。つまり、絆と血の関連性は思っている以上に薄いのでしょう。 絆を築くことは難しいですが、それさえできれば誰とでも家族はつくれます。そして、崩壊を防ぐために人間は絆を強めていこうとします。非常に曖昧でありながらも最も強固な「絆」という名の血で結ばれた形態……それを人は理想的な家族と呼ぶのかもしれません。 |