北へ。 White Illumination

ブランドハドソン 発売日1998.3.18
希望小売価格5,800円  
ハードDC ディスク数1枚
   ジャンルADG
キャラデザNOCCHI シナリオ長山豊
音楽池毅 
音声あり ボーカル曲あり

ストーリー
札幌、小樽、富良野、帯広……
ロマンティックな街並み、澄んだ空気、豊かな自然。
北海道での14日間の夏は、少年にとって、忘れられない時間となった。
訪れた土地で出会った魅力的な8人の女の子たち。
昔のこと、今のこと、将来のこと……夢や悩み……彼女たちと交わした会話の中で人を好きになる喜びや切なさ、心の揺れを、高校2年生なりに感じた旅だった。

そして冬休み。少年は、抑えきれない想いを伝えるために再び北海道へ。
12月31日。年越しのキスをした恋人たちには、永遠の幸せが約束されているという札幌・大通り公園のホワイトイルミネーションの街路樹の下で再会するために……。

キャラクター名私的お気に入り度声優属性
春野琴梨■■■■■■■■■■10/10千葉紗子従妹・家庭的・正統派
ターニャ・リピンスキー■■■■■■■■ 9/10坂本真綾外国人・金髪・努力家
椎名薫■■■■■■■■ 9/10榊原良子年上・クール
桜町由子■■■■■■■■ 9/10南央美姉御肌・豪快
愛田めぐみ■■■■■■■■ 9/10大谷育江ドジっ子・背が低い
川原鮎■■■■■■■■ 8/10広橋佳以元気っ子
左京葉野香■■■■■■■■ 8/10川澄綾子勝気・眼帯
里中梢■■■■■■ 6/10豊口めぐみオタク・メガネっ子
春野陽子■■■■■■ 7/10佐久間レイ親戚・姉御肌
愛田里子■■■■■■ 7/10土井美加家庭的
愛田耕作■■■■■■ 7/10立木文彦豪快
けあふりぃ■■■■■■ 6/10千葉繁オタク・謎
蒼き月の夜■■■■■ 5/10三木眞一郎オタク・強気

主要搭載システム
BGM及びボーカル曲
●コミュニケーションブレイクシステム
●スキップ(既読判定あり)
●音楽鑑賞(クリアー後/条件付き)
●ミニゲーム(クリアー後/条件付き)
●達成度
●ガイドブック
●OP歌
 北へ。
 Four Seasons
雑感
個人的名曲
 コミュニケーションブレイクシステムについてはゲーム性を参照。鑑賞系が充実していません。音楽鑑賞は条件が厳しいですし、CG鑑賞がないのはいただけません。ミニゲームは、本編中に行ったミニゲームを、特定の条件を満たすことでいつでも遊べるようになります。ガイドブックは、本編中に登場する場所や観光スポットについて解説してあるもので、本編中のコマンドメニューが現れる時に読むことが出来ます。「MOVE ON北海道=北からの声かけ運動」に協賛しているためにあるものですね。読むと、細かな解説の他にマップやホームページアドレスが現れ、アドレスはメモリーカードに登録出来ます。  曲数は不明。全ヒロインのテキストを8割以上読めば音楽鑑賞が現れるらしいのですが、今回はそこまでやりこんでいません。あまり楽器を多用せずあっさりした音楽が多かったで印象です。ヒロイン毎にキャラクターソングがあります。これはミニゲームの「カラオケ対決」で聴くことが出来ます。
道産子的にもこれはアリ


 ハドソンが発売した「トラベルコミュニケーション」ソフト。同年にファンディスクとして「北へ。Photo Memories」、その後も続編が発売されており、ネームバリューは比較的高いシリーズでしょう。よく分からないジャンルですが、旅先で女の子と仲良くなる恋愛アドベンチャーと考えて構いません。このゲームの魅力は二つ。第一に「コミュニケーション・ブレイク・システム」というゲームシステム。これについては後程記述しますので、ここでは触れません。第二に、北海道の様々な観光地や実在の店舗が登場すること。発売当時行われていた北海道の活性化を図ったキャンペーン「MOVE ON北海道=北からの声かけ運動」に本作が協賛しているため、各社から協力を得ることが出来ているのです。実在店舗がバシバシ登場するのは、予想以上にリアリティーを付加してくれます。

 主な舞台は札幌及び近郊都市で、私が札幌出身ということもあり、親近感を持ってプレイした一本です。北海道に旅行に来た少年が主人公なので、プレイ対象は本州以南に住む人でしょうね。一体本州のプレイヤーに本作はどのように映っているんでしょう。本州の人にとって、北海道は観光地であり別世界でしょうから。……そんなことを考えながら書いていきます。


短くてメリハリは利いているが、意外と難易度は高い


■シナリオ
 北海道へ旅へ出てヒロインと出会う「夏編」と、出会った女の子へ自分の想いを伝える「冬編」の二部構成。夏編はヒロインからのアプローチ主体で、冬編は主人公からアタックしていきます。何か学校で嫌なことがあり(その理由は明かされません)、その気分を変えるために旅立った内向的な主人公が、ヒロインとの出会いを通じて冬になると外向的に変化していくのです。秋編に当たる部分がないので、変化のプロセスは味わえませんが、一寸した成長物語とも言えましょう。短い旅行期間の中に、主人公とヒロインの両者がお互いを好きになれる要素――イベント――を詰め込めたかどうかが評価の分かれ目になりますが、その点はややわざとらしい仕込みでしたが合格です。多くのヒロインにショッキングなイベントやアクシデントが設けてあり、主人公がそれを解決したり助けたりする展開が用意されています。それを受けたヒロインが主人公に対して好感を抱くのは半ば当然且つ自然と言えるからです。他方、主人公がヒロインに惹かれる理由は表し切れていないように思います。主人公がヒロインの力になろうとする理由が今ひとつ不明確なんですよね。「その娘が可愛いから」とか単純な理由もないのです。打算がないと言えば聞こえが良いですが……。折角ヒロインがデートに誘ってくれたとしても、特に嬉しそうな素振りも見せずに淡々とOKするだけでは「もし自分がヒロインだったら」と考えてみると釈然としないものがあります。こういうのはシミュレーションゲームに有り勝ちな傾向で「語らない主人公」となってしまっているのです。本作はアドベンチャーパートの比率も高いわけですから、もう少し主人公に自我を持たせても良かったのではないでしょうか。少なくとも風呂以外でもヒロインを気にかける描写があれば、もっと感情移入出来たと思います。

■キャラクター
 鉛筆で描いたかのような、輪郭がボンヤリと残るNOCCHI氏のイラスト。儚気でいつか消えてしまいそうなタッチは、旅行中に会った関係という設定のヒロイン達にピッタリです。大変個性的なので、好き嫌いは出るでしょう。私は初め「苦手な絵かも」と思っていましたが、コロコロ変わる立ち絵の中で好きなパターンに遭遇してから好きになりました。この人は少女を描かせると本当に雰囲気が出ますが、大人も割といけるようですね。
 キャラ設定は、ヒロインによって差が激しいです。琴梨は親戚ならでは、ターニャはロシア人ならではのシナリオ展開に繋げられていますが、葉野香の眼帯や由子のカメラ趣味などは展開上あまり意味がありません。ただ一緒に過ごす期間が短くてキャラの掘り下げが難しいと思える中、プレイ時間に見合うだけのヒロイン像を提示することには成功しています。時間内でヒロインの喜怒哀楽の瞬間をそれぞれ出すことで、どういうことをすれば喜ぶのか、あるいは何に対して悲しむのかという人間性を、プレイヤーに隠さず見せているのです。良いところしか見えないと非常に薄っぺらいキャラになってしまいますが、すべての面を短くても見せることで、人間味を表現出来ているということです。その反面、特定の事項に特化した強烈な個性の持ち主はいません。私としては記号的な内容に特化し過ぎるより、こうした丁寧な人間表現が出来ている方がポイントは高いと思います。だからこそ、記号的な意味が強い葉野香の眼帯は余計だったと思うのです。

■テキスト
 9割方会話で占められていると考えて良いです。会話といっても主人公が話すのは選択肢で現れる一行程度なので、実質的にはヒロインが喋りっぱなしで、それをひたすら聞いている状態です。ヒロインの話は観光地説明の比率が高い気がします。主人公が旅人なので不自然ではありませんけれども。観光地に対するヒロインなりの感想も入るので、ツアーガイドのように事務的な感じではないのは良いところ。
 テキストの管理はしっかりしており、ヒロインに合った口調や知能レベルでの話がゲーム開始から終了まで継続されます。ただしこの会話、後述する「ゲーム性」にも関わりますが、中々ブレイクするタイミングが難しいです。主人公が割り込む会話の途切れ(話題毎の「間」)が掴みにくいんです。もう少し分かりやすい話の「振り」をしてほしかったですね。
 他方、主人公の長い独白は全ルート共通のプロローグと最後の告白相手の選択、一日を振り返る風呂シーン程度。他は「今日は良い日だった」とか「どう答えようか」とか意味のないものばかりです。ヒロインと過ごす日数が少ないだけに、主人公の心の移り変わりの描写が必要なのですが、それがシミュレーションゲーム並に少ない――つまりほとんどない――といっても良いレベルなのが残念でした。

■演出
 オープニングムービーは、かつてないほど混沌としています。ヒロインの立ち絵や線画が脈絡もなく、時には単独やドアップで、時には円弧を描きながら連なって、実写やワープシーンのようなグルグルとした背景に合わさって次々と現れては消えていきます。その間、一切説明書きはなし。まるで意味が分からないのですが、何故か「これが北海道へ旅行することか」と納得してしまうのだから怖いです。歌の電波度もさることながら、中毒性があります。
 対してエンディングムービーは、ポリゴンで再現した札幌の街並みが導入で現れ、徐々にカメラが引いて全景を見下ろしたところで、黒バックのスタッフロールになるというもの。ポリゴン作りは簡単なものではないでしょうが、かなり地味ではあります(しかも何故かスキップ出来ない)。
 本編でいえば、夏編から冬編への転換ポイントがまずまず好きです。夏編のイベントCGが写真となってコルクボードに貼られているだけではありますが、旅行に行ったという気になります。本編中にも飛行機が出発するシーンやテレビの映像などがムービーとなっています。いずれも3Dアニメな上、リアルではありません。この辺は2Dにした方が良かったと思います。
 その他、基本的なところでは口パクを実装しています。効果音は車や列車の発車音や、足音やドアの開閉音など多数用意してあります。

■ゲーム性
 マップ移動型のアドベンチャーゲームです。ヒロインの居場所は表示されないため、分かりませんが、一度会えば次回会える場所について大体分かります。ただし、時間の概念もあるので、特定の時間と場所両方押さえなければなりません。ノーヒントでは見つけることさえ困難なヒロインもいます。
 最大の特徴は独自開発されたC.B.S.(コミュニケーション・ブレイク・システム)。これは、ヒロインが話をしている途中でボタンを押して話を止め(ブレイクするってことです)、自分の意見を述べたり、プレゼントしたり、話題を変えさせたりするシステムです。これは実のところ、従来のADGと最終的な結果は変わりありません。自分の意見を述べるといっても選択肢から選択することになりますし、意見を述べられる(すなわち選択肢が現れる)タイミングは決まっています。プレゼントは会話の流れに関係なく口を挟めるタイミングであればいつでもあげられます。深刻な話題(例えば大切なものを壊してしまった等)の真っ最中でも、プレゼントをあげることが出来、しかも必ず喜ばれます。話題を変えさせれば、まず間違いなく好感度が下がります。これらを総合すると、このシステムの独自性は、相手の話をぶった切って自分の話を挟むかどうかを、能動的にプレイヤーが決められる点にのみあることが分かります。当然ブレイクしなければ好感度は上がりませんから、クリアー出来ません。つまり、通常のADGでは何もしなくても現れるコミュニケーションをとるタイミングを、自分で見つけるゲームということになります。テキストの項目でも書きましたが、結構難易度は高いと思います。選択肢も結果が読めないものが多いです。
 この他に、本編中にはミニゲームが多数用意されています。クイズ、UFOキャッチャー、搾乳ゲーム、迷路、シューティング、音ゲー、テニスなど。いずれも好感度上昇に関わるもので、特定の条件を満たすとクリアー後にもおまけとして遊べます。

■シチュエーション
 主人公が旅行中に出会った娘と結ばれるというドラマチックな展開がポイント。限られた期間内で親密な関係を築くために、それこそゲームでしか起こらないだろうという頻度でイベントが続発します。ヒロイン側も結構乗り気で、琴梨とめぐみを除けば出会いを求めている積極性が見えるため、とんとん拍子で進む話にも然程違和感はありません。この関係の急速な接近を楽しめれば、結構良いゲームと思えるでしょう。欲を言えば、冬編冒頭の手紙が良い味を出しているだけに、夏と冬の間に秋編的な若干のスパンを設けて、手紙をやり取りさせたりして直接会えない飢餓感を与える展開が欲しかったですね。旅で出会って恋をして……というゲームなのですから、遠距離恋愛的なシチュエーションをもう少し大事に演出すればさらに良くなったはずです。

■グラフィック
 背景は、ゲームオリジナルの場所が絵で、観光地や実在する場所は実写です。移動が多いので50枚以上はあると思います。実写は天候等に気を使って撮影しているようですが、多少ぼかしたりしてあるので、特別に凄いとは思いません。とは言え、立ち絵と並べても違和感はありませんし臨場感とリアリティーがあるので、失敗ではないでしょう。絵の方はこれまた普通。どうせならこちらも写真にしても良かった気もしますが、質的な問題はありません。
 立ち絵は1人当たり10パターン以上あります。プレイ時間に対してかなり多いです。イベントCGの枚数は、1人20枚前後あると思いますが正確な数は不明。クリアー後の閲覧機能がないのが痛いですね。デートシーンなど共通のCG登場パターンがあり、これが半分近くを占めます。ですから実はイベントCGの構図は、かなり似たものが多いです。立ち絵のクオリティが高いせいか、イベントCGが際立って良いわけではないのですが、要所要所では必ず現れますので安心。


総合得点■■■■■■ 69/100
おすすめ度■■■■■■  7/10
ボイス■■■■■■■■■■ 10/10
シナリオ■■■■■■  7/10
テキスト■■■■■■  6/10
キャラクター1■■■■■■■■  9/10
キャラクター2■■■■■■■■  8/10
音楽■■■■■■  6/10
演出■■■■■■  7/10
システム1■■■■■  5/10
システム2■■■■■■■■  8/10
シチュエーション■■■■■■  7/10
グラフィック1■■■■  2/5
グラフィック2■■■■■■■■  4/5
純粋培養の世界


 説明書を捲ると、1ページ目にプロデューサーの広井王子氏のコメントが載っています。要約すると「人を好きになる気持ちは特別なことではないのに、日常からどんどんと消えていく。そんな忘れかけた『大好き』の詰まったゲーム――それが本作である」とこんな感じになります。
 実のところ、シナリオの項でも書きましたが、ヒロインから主人公への大好きは感じられるんですが主人公からヒロインへはあまり感じられないんですよね。大好きのキャッチボールが出来ていないんですよ。それが残念です。
 一方、主人公を操っているプレイヤーがヒロインを「大好き」と思えるか、といえば答えは「Yes」です。ヒロイン達は短期間でありながら、いや、短期間だからこそ、その中で自分の考えていることの核心――そのヒロインのことを知るのに最も大切なこと――をすべて明かしてくれます。そんな真摯かつ全力で信頼を傾ける姿を見せられては好意を抱かずにはいられません。広井王子氏からのコメントが、ゲームの主人公ではなくプレイヤーに向けられていることを考えれば、主人公がヒロインを好きになることに共感するのではなく、プレイヤー自身がヒロインを好きになれれば良いわけで、その点で言えば合格ということになります。要するに彼女達は「純粋の塊」なのです。そんな純粋な気持ちに接するからこそ、「大好き」というこれまた純粋な気持ちが生まれるのです。そんな純粋培養の世界を表わすのに、如何にも真っ白なイメージがある北海道という舞台を選んだのは正しかったと思います。

 1人当たりの攻略時間は5時間程とお手軽で、短いだけにメリハリが利いた内容なので、忙しい人にもお勧め出来るゲーム。主人公は高校生ですが、社会人でも十分旅人気分を味わえます。

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