久遠の絆 再臨詔
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ビジュアルノベルの最高峰 「久遠の絆 再臨詔」は、1998年にPSで発売された「久遠の絆」におまけシナリオ「再臨詔編」を追加し、DCにハードを移して発売されたもので、2002年にはPS2にも移植されています。「再臨詔」では原作からグラフィックとシステムが強化されています。「暴力などの表現が含まれています」との表記が為されており、その手の内容が苦手な方は注意が必要。全3章で構成されるシネマティックノベルで、現代、平安、元禄、幕末の4つの時代から描かれる転生物のラブストーリーです。コンシュマーでは初のビジュアルノベルでもあり、コンプリートには30時間近くを要する超大作です。 原作が発売された当初、私は美少女ゲームにあまり興味がなかったのですが、このゲームは発売本数が少ないにもかかわらず購入者の評価は高かったんですよね。ですから、この世界に漬かってからDC移植を期に購入してみたのです。しかし、私はあまり昭和以前の時代物に興味を覚えないことがあり、中々プレイに踏み切れずに放置する期間が続いていました。その後PS2移植決定を知り、本作の存在を思い出した私は半ば仕方なくディスクを本体にセットしたのですが……思い知りました。本作は噂に違わずビジュアルノベルの最高峰と言っても過言はない出来だったのです。 百年…貴方を待っていたの…千年…貴方に恋していたわ ■シナリオ 先にも述べましたが、平安、元禄、幕末の三つの時代を現在と行き来して描かれる転生物語であり、総プレイ時間30時間にも及ぶ超大作です。しかし、それにもかかわらず多くのプレイヤーが飽きることなくゲーム開始からクリアーまで突っ走ったようです。何故なのか? 第一に、本作をラブストーリーとして見た場合、ポイントとなるのは、主人公だけではなくヒロインもまた同時代に転生してきていると言うところ。ヒロインと、現代と過去を行き来して何度も会うことでそのヒロインへの思い入れを強くさせるところが転生物の味噌です。そして、過去のヒロインとの関係を例外なく悲恋に終わらせて、プレイヤーに絶え間なく屈辱感を与え続けること(クリアーしたいのに出来ない)で、汚名返上のためのモチベーションを常に保たせているのがポイントなのです。第二に、本作の主人公が最初は謎がある不完全な存在であり、謎を解いて完全体に近づく度に目に見えて強くなること。強くなるための手段が転生であり、転生を重ねることで謂わばレベルアップするというところに、本作の楽しみの一つがあるのです。しかも、完全体に近づけば近づくほどヒロインの好感度が上がるというおまけ付き。転生を重ね、謎を解くことで強くなる――プレイヤーはここにモチベーションを見出します。この二点が本作の30時間にもわたる壮大な物語を飽きさせない要因ですが、ここで重要となるのは、現代と過去を行き来することです。これによりプレイヤーは主人公の強さやヒロインへの思い入れへの「確認」を行うことで、それらをより明確な形で実感出来るという構造が本作の強みなのです。 この構造を下地にし、どこに素晴らしさがあるのかを考えると、答えが二つ出てきます。一つは、壮大にして重厚な作りこまれた世界観およびシナリオに対する評価。もう一つは、そうした世界すら彼方へと追いやるヒロイン達との愛の深さ――すなわち絆――を描ききったことに対する評価。謂わば世界をとるか愛をとるか。どちらが正しいと言うことはありませんが、クリアーした後、どちらの立場で評価するか考えてみると面白いかもしれません。何故ならこれこそまさにこのゲームの命題だからです。 ■キャラクター 現在のギャルゲーに流行の細い線に大きな目……というタイプとは異なり、所謂「萌え」とは別次元の絵ですが、ヒロインは純粋に可愛いですし非常に上手い。男性キャラも上手い。「久遠の絆」というゲームを表すにはこの絵しか考えられません。 キャラクター設定も、サブキャラを含めて弱点は無いと言って良いでしょう。ほとんどのキャラクターを転生話に絡めており、転生とは関係のないキャラクターも主人公や他のキャラクターに重要な関係性を持たせて、意味のないお飾りのキャラクターを最小限に留めていることが伺えます。シナリオの世界観において登場人物の役割が明確であるために、どのヒロインを攻略したとしても他のキャラクターが最後まで物語に絡んでくる点も評価したいところです。 ■テキスト 難解な読みの語句が多く登場しますが、主人公が人物や事態をプレイヤーに説明する形で文章が作ることが意識されているので分かりやすさの点では問題はありません。感情描写は起伏に富んでおり、読んでいて眠くなるようなことはなく、むしろ早く次が知りたくなる上手さがあります。一方、情景描写などは端的に述べるに留め、雅やかで回りくどいような表現は避けられています。テンポを重視し、その辺りはグラフィックに任せているように感じました。後、テキスト中に「ハートマーク」を出すのはやめてほしかったところ。特に平安時代とかでやられると一気に胡散臭くなるので。 ■演出 シネマティックノベルと銘打っているだけに、OPムービーの中に監督や脚本などスタッフと登場人物の名前が挿入され、映画のような出来になっています。キャラクター紹介風ではなく、これから始まる壮大な物語の伏線になる画像や3Dアニメーションによって構成されています。ある文章が流れてムービーが始まるのですが、おどろおどろしい雰囲気がよく表されており、期待がもてる作りであり、音楽も格好良いものとなっています。 エフェクトもとにかく綺麗。2D画面+3Dアニメによる花火や、花火の光の影響で花火を見ているキャラクターの色が変わっていく表現は特に美しく、あたかも映画を観ているかのようです。桜の花弁や雨が降る処理もされており、季節感が意識されています。その一方、戦闘シーンに入ると黒塗りの画面に振るった刀などの残光が一本残るという古典的な手法が続きます。それもテキストと一緒に出ずに一々画面が切り替わる点はもう少し工夫があっても良かったと思います。また、血の表現がかなり出ますので苦手な方は注意。 人が近くに来ると立ち絵も大きくなったり後ろ向きの立ち絵があるのも良かったです。 ■ゲーム性 法術戦闘という円周内に五芒星をコントローラーのカーソルで描き、敵を攻撃するミニゲームがあります。右回りに描かないと判定されないのですが、何の説明もないので左回りに描いて失敗しまくった記憶があります。他に、Esリアクションシステムなる主人公の感情の蓄積により物語の展開が変化するシステムがあると書かれていますが、要するに「好感度を上げてフラグを立てる」と言うことであり、一般的な恋愛ADGと同じです。難易度に関しては、戦闘で何の前触れもなく「敵が攻撃してきたがどうする?」→「右に避ける・左に避ける」のような選択肢が登場し、間違うとゲームオーバー(バッドエンド)になるという容赦のないものがありますが、それを除けば攻略自体は難しくはありません。ただ、CGのコンプリートを狙おうとすると、分岐が多くプレイ時間が長いだけにやや苦労するかもしれません。 ■シチュエーション 「エロゲーか?」と思うほど際どい表現が多く、よくコンシュマーで発売出来たと思います。それは置いておきまして。とにかく死に別れによる悔しさを強調するものが多いと感じました。だからこそ「転生」による再会が生きるのであり、何度も別れを重ねることで切なさが積み重なっていき、ヒロインに対する思い入れが強まるという構図は良く出来ているな、と。その一方、どうしても転生組ではない人物のインパクトが弱まってしまうのは否めないかもしれません。また、とにかく主人公LOVEなヒロインが多く、誰か一人を選ぶのが心苦しい一方、後味は悪くないように纏められているのも特徴。 ■グラフィック 背景は標準の出来。建物は上手いですが木や山など自然はそれ程ではありません。教室や街など人がいるべき背景にしっかり人が描かれているのは良いですね。立ち絵は各キャラクター10パターン前後(現代編)とかなり多め。再臨詔編でさらに追加されて15パターン程あるヒロインもいます。イベントCGも通常の立ち絵も光の使い方が意識されたものが多く、どれも素晴らしい完成度を誇っています。イベントCGの枚数は200枚以上あります。他のゲームも見習ってほしいですね。
※本作はテーマ性よりもエンターテイメント性を追求していると思うので、今回は感想を書くことにします。 「百年…貴方を待っていたの…千年…貴方に恋していたわ」 本作で最も印象に残ったセリフです。実際に輪廻転生が出来ると信じているわけではありませんが、このセリフが出た時、柄にもなく乙女チックにこんな恋が出来ればと思わずにはいられませんでしたよ(笑) 思い返せば、このゲームでは現代社会の危うさに対する警鐘があちこちで鳴らされていました。「希薄になった人間関係」「家族さえ平気で手にかける子ども」……本作にはそんな社会に対するアンチテーゼが込められているのかもしれませんね。 そんなことをつい考えてしまいましたが、本作は純粋に物語が面白く、あらゆるADGファンにおすすめの一本です。転生物好きは勿論、それ以外の方もプレイして損はありません。世界すらも滅ぼす壮大な恋物語は、必ずやあなたの心に何かを残すはず……! |