鎖 -クサリ-
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思えばLeafもうたわれるもの以来と言うことで久々です。一応、天使のいない十二月、アルルゥとあそぼ!!、Tears to Tiaraと全部買ってはいるんですけどね……。うん、積んでるんだよ。……あ、そう言えばTo Heart2はプレイしているので問題無いか!(<それは違うだろ) そんなわけで、鎖です。このゲーム、『極・陵辱』サスペンスアドベンチャーと銘打たれております。公海上の船内という限られた空間で、洋上の殺人鬼と激しい攻防を繰り広げる――というストーリーとのこと。何ですかね……あの頃の感覚が呼び起こされませんか? 雫と痕の頃の臭いが! Leaf初期のビジュアルノベルである雫と痕。二作のシナリオは、普通の純愛ものや陵辱ものとは違った風変わり且つ新鮮な力を秘めていました。不思議な様な不気味な様な世界と、プレイヤーを掴んで離さないテキスト。プレイしたらずっと忘れられない独特の魅力があの頃のLeafにはあったのです……って、あの頃とか言っておいて最近のLeaf作品未プレイな私は何なんだ(^^; ともあれ、鎖からはその雫や痕に似た空気を感じたんです。「只者じゃないな」と言う空気を……。 陵辱の果てに ――貴方が選ぶヒロインは?―― Leafのロゴマークが出た後に始まるOPムービーは、始めはとんでもなく素晴らしいと思いますが、実は普通な出来でキャラクター紹介的な絵がイベントCGのカット割りと共に流れます。このイベントCGが殆ど陵辱シーンを流すので、陵辱が苦手な方はここですぐに嫌な気分になるかもしれません。かく言う私も得意ではないわけですが(^^; 物悲しい曲調と妖艶な歌詞の主題歌は中々良い感じ。 キャラクターはぴめこ氏とトメ太氏が手がけております。ゲームでは見たことの無い名前です(コミックで見た気がしますが)が、一般受けするタイプの絵ですね。やや耳が大きく感じますがヒロインは素直に可愛いと思えます。男性陣も良い出来。ストーリーに良く合う絵です。全体的にゲームの雰囲気に合っており、場面場面での立ち絵もぴったりで丁寧な仕事をしていることが分かります。また、各キャラの声優さんは結構良い仕事してます。明乃の日常シーンがやや気になりますが、緊迫シーンではきっちりしてますのでまあ合格。個人的にはちはやと明乃の声を交換した方が良い気がする。 グラフィックでは背景がかなり綺麗。船の機械などが細かく描かれています。 ゲーム性。通常のADGなのですが、難易度はかなり高め。道具を使う順番などが関係していて、全部のエンディングを見るにはそれなりに苦労します。 続いてHシーン。極・陵辱を称するだけあって、殆ど陵辱もの。和姦は1割程度なので注意が必要。鎖は陵辱ゲームではあります。ですが、只の陵辱ゲームではありません。陵辱の基本ですが、通常、思い入れのあるヒロインが他の男に犯された時、プレイヤーは堪らない不快感を感じるはずです。また、ヒロインが助けを求めているならば助けたいと思うはずです。鎖ではこうした人間感情を巧みに利用し、プレイヤーが犯人に対して怒りを覚える様に的確に陵辱シーンを挿入してきます。助けたいのに助けられない状況、戦いたいのに戦えない状況を作り出し、プレイヤーに怒りと同時にじわじわと恐怖も植えつけていきます。つまり、本作における陵辱とは、陵辱のための陵辱では無く、サスペンスのための陵辱なのです。 ただ、陵辱陵辱と言っていますがやっていることは陵辱を通り越して鬼畜です。ヒロインを犯して殺して蘇生してまた犯すなどと言う残酷なシーンも存在します。鎖は面白いゲームなのですが、それと引き換えるにしてはあまりにも残虐シーンが多すぎるので、この手のHシーンが苦手な方にはまったくお勧め出来ません。 シナリオについてです。サスペンスADGの看板に偽り無く、緊張感溢れる展開の連続によって進んでいく本作は、映画「エイリアン」などと同様に限られた空間で敵と生死を賭けた戦いが繰り広げられます。敵の仕掛けた罠を探り当て、相手を逆に罠にはめて退治しようとするなど推理アドベンチャー風の展開は手に汗握ること間違い無し。不気味な音楽と効果的なテキストが合わさって素晴らしい出来になっています。その一方で、各キャラの心理描写が非常に面白い。閉鎖された空間でピンチに陥っているために、不安、葛藤、猜疑心と言った人間の負の側面が見え隠れし、互いに人間不信を抱き合って牽制し合う場面もかなりあります。推理的側面と心理的側面の絶妙なバランスは、サスペンスを楽しみにして買ったユーザーにとっては期対通りのものを魅せてくれることでしょう。 サスペンスだから二周目以降は面白くなくなるのではないだろうか……そんな不安を誰しもが抱くことと思います。名探偵ホームズは一番最初に読んだ時が一番面白いに決まってますし、ポートピア連続殺人事件を連続して二回プレイしても面白くないでしょう。ですがそんな心配をよそに鎖は 二周目以降も飽きずに楽しめます。 ポイントは、普通のギャルゲーの様に一人のヒロインを追いかけている間に他のヒロインが黙っているのではなく、他のヒロインも各自行動を起こして何らかの事件を引き起こし始める点。それでも、勝手な行動ばかりとって邪魔ばかりするヒロインをどうしても守りたいと思わせるところが、このゲームの上手いところ。 というのも、通常邪魔ばかりするヒロインですが、主人公が追いかけたヒロインだけは実に献身的に主人公をサポートすべく行動するからです。プレイヤーが選ぶか選ばないかによって行動が180度変化するのが味噌です。初期設定として、各ヒロインは全員主人公に好意的な側面があります。これを上手く使って嫉妬などの感情が主人公を妨害する行動にうつらせているわけです。 ただし、一人だけ例外があるんですよね……(ネタバレとして、反転して次章にて後述)。 ルートによって事件がまったく異なる展開を見せるために二周目以降も楽しめる……ということがご理解いただけたことと思います。 各ヒロインの表の顔と裏の顔を知った後、プレイヤーが最後まで守ろうと思えるのは誰になるのでしょうか。
何故鎖はこれ程にも面白いのでしょうか。 それは主人公とプレイヤーの驚くほどの一体感を感じられるからでしょう。陵辱シーンがプレイヤーの怒りを炊きつけるのに一役買っていることは先程述べましたが、どうもそれだけでは無く、主人公の性格にもその要因がありそうです。理論的な主人公に対して、周りの面子はパーティーのピンチを招くトラブルメーカーだらけです。そんな中で全員を助けようと苦心する主人公の姿がプレイヤーとのシンクロ率を高めるのですが、彼のヒロインに対する態度が一番重要になってくるのではないでしょうか。主人公香月恭介は、スーパーマンであると同時に一人の男です。もう一歩踏み込んで言うならば、全員を助け出す力を持っていると同時に一人の女の子しか守ることが出来ないのです。彼が愛すると決めたヒロインとそれ以外のヒロインとの間には明確な差があります。それは「生死を共にする」か否か。彼は愛すると決めたヒロインと、最後にどんな危険が待っていようとも行動を共にします。危険な場所に女を連れて行くことはしない……という選択肢があるのも関わらずです。絶対的な信頼感がそこにはあります。生き死にを共にする程の決断……これ程の愛の深さ証明は無いでしょう。そんな熱い行動をとるからこそ、プレイヤーは主人公とヒロインを心の底から愛しいと思えるのです。二人の生死を縛り付ける心と心を繋ぐもの――それが「鎖」なのです。 ――さて、本編の批評とは別に言いたいことがあるような無いような。これはプレイした方だけにしか分からないかと思いますが、某エンディングでのユーザー批判はどうかと。「エロが濃くても薄くてもうちのゲームは面白いんだ!」と言うプライドを持ってゲームを出して欲しい。それだけの実力を今回見せることが出来たんですから。……そもそも雫もエロが濃いとは言えないし(ぼそっ) 以下、先述したネタバレのための反転記述。以下反転。 一人だけの例外、それは明乃です。パッケージで正ヒロインの様に載っているにも関わらず、一番悲惨な扱いを受けています。明乃以外のヒロインが恭介に好かれてハッピーエンドを迎える中、彼女にはハッピーエンドが無いのです。彼女には二つの結末があります。誰からも犯されない結末と、犯人に犯された挙句、恭介に犯される結末です。この二つの結末は、彼女の行動と酷似した結末です。彼女は常にあたふたとしており、一貫した意思を持っていません。彼女は他のヒロインと同様に主人公の妨害をしない反面、自分から行動を起こそうとしないのです。結果、愛されないが何もされないか、愛されてもいないのに犯されることを許容してしまうのです。自分から行動しなくては人の信頼を得ることは不可能であることが明乃編では指し示されています。 最後に。 クリアーした時に何か不安が残るような――後ろを振り返ると自分が別世界にいるのではないかと思うような――不思議な感覚。そんな不思議な魅力がこのゲームには宿っています。鎖はLeafを「あの頃」に引き戻してくれました。古き良き時代が再降臨した……そんな感じがします。 これぞ私の愛したLeafだ! |