みずいろ

ブランドNEC/Interchannel 発売日2002.3.7
通常版6800円 限定版7800円
ハードDC ディスク数1枚
ジャンルADG 
原画秋乃武彦
ねこにゃん
葵渚
綾瀬悠
 シナリオ片岡とも
米村純一
高嶋栄二
音楽リバーサイド・ミュージック
Ebi
なかちゃん
 
音声フルボイス ボーカル曲あり

ストーリー
 ある日、主人公はひとりの女の子と出会った。父親に連れられてやってきたその女の子は毎日泣いてばかり。はじめはうっとうしく思っていた主人公も、次第に女の子を笑わせてみたいと思うようになる。「お母さんに会いたい」。女の子の願いをかなえるために、主人公は少ないお小遣いを使って1枚のハガキを買う。それは、幼い子供が単純に考えたこと。お母さんに手紙をかけばきっと会える。でも、その時、女の子がはじめて笑った。

 数日後。女の子が目をきらきらさせながら書いて出した手紙の返事はまだこない。ハガキを出した次の日から、女の子はポストをのぞきに行ってはしょんぼりともどってくる毎日を過ごしていた。そんなある日、女の子が出した手紙がもどってきた。不思議に思った主人公が父親に聞くと、父親は悲しそうな目をしながら主人公の頭を優しくなでた。それが意味すること…。主人公はもう1枚ハガキを買った。

 それからしばらくして女の子宛に手紙が届く。ハガキを手にとって喜ぶ女の子。「よかったな」。主人公がそう言うと、女の子は満面の笑みで主人公にこう言った。「ありがとう。おにいちゃん…」。

 はじめてお兄ちゃんと呼ばれた冬の日。そして月日は流れて……。

キャラクター名私的お気に入り度声優属性
片瀬雪希■■■■■■■■■■10/10綾川りの義妹・正統派
早坂日和■■■■■■■■■■10/10後藤邑子幼なじみ・ぽんこつ
小野崎清香■■■■■■ 6/10河本明子幼なじみ・ロリ
進藤むつき■■■■■■■■ 9/10吉住梢後輩・元気っ娘?・内気?
神津麻美■■■■■■■■■■10/10佐久間紅美先輩・天然・おっとり系
石川冬佳■■■■■■ 7/10根谷美智子年上・強気・家庭教師

主要搭載システム
BGM及びボーカル曲
●オートメッセージ
●スキップ(既読判定あり)
●バックログ
●CG鑑賞
●音楽鑑賞
●シーン鑑賞
●おまけ
●BGM26曲
●OP歌
 みずいろ
 佐藤裕美
●挿入歌
 Smile
 佐藤裕美
●挿入歌
 スカーレット
 佐藤裕美
雑感
個人的名曲
 オートメッセージ、文章表示スピーど共に0〜100の範囲で細かく設定できるため、なるべく文章を読むのに集中したい私には好印象。おまけで「探偵片瀬健三郎」というギャグシナリオを楽しめます。こういうところに凝るのがねこねこらしいですね。  鍵盤楽器、管楽器、打楽器と豊富に使われています。あちこちで使われるトライアングルやツリーチャイムに季節感が現れていて良いと思います。全体的に落ち着いた上品な曲が多いですね。これだ!という決め手には欠けるのですが、嫌いな曲がないというのもポイントが高いです。

●みずいろ
●たからもの
王道の中の「王道」を目指して


 みずいろは、ねこねこソフトの放った第3弾のソフトであり、美少女ゲームではかなりの認知度を持っています。批評するのはコンシュマー版ですが、原作は2001年4月13日にPCでアダルトゲームとして発売されています。2002年にDCとPS2に移植され、PCでは2002年と2005年に再販、PS2でも2004年にベスト版が発売されるなど、未だに根強い人気を持ってユーザーに迎えられています。私が購入したのはDC通常版ですが、初回限定版は箱に入っており、テレホンカードとねこ缶が付属しています。コンシューマ版では、PC版からHシーンを削除する代わりに、オリジナルキャラクター石川冬佳を登場させた他、新日和ルート(通称新ぽん)とイベントCGが追加されています。

 ねこねこソフトは、みずいろで美少女ゲームの「王道」を実現することを目的にしました。兄のことが大好きな義理の妹、同じ学校に通う幼なじみ、自分を慕う後輩、天然ボケの先輩……。登場するのは、確かに王道を行くヒロインばかり。彼女たちと繰り広げる日常もまた、美少女ゲーム世界ではありふれたものばかり。だからこそ、ある種の安心感をもって遊べる点が、本作の利点でしょうか。ここでは、みずいろが目指した王道の中の「王道」について迫ることにしましょう。


分かりやすい伏線が感情移入を容易にする


■シナリオ
 過去パートと現在パートに分かれており、過去の影響を現在に反映させるゲームシステムを活用し、できるだけプレイヤーとキャラクターの情報量を一致させながら進行していきます。所々でヒロインと主人公の独白を挿入しつつ、幾つかの伏線を張っていくわけですが、伏線と過去のエピソードがかなり分かりやすいかたちで関わっているため、展開が読みやすくなっているのが本作の特徴かもしれません。そのためか身構えずに自然体でゲームを進めていくことができます。ですから、プレイヤーはある程度、主人公とヒロイン双方の感情を理解することが可能なのです。驚くべき展開がないのに一定の感動を得られるのは、このように感情移入を極めて容易にしたためです。また、起承転結がしっかりいる点も王道を王道たらしめた要因でしょう。

■キャラクター
 ねこねこソフトの絵は、他のソフトメーカーにはない特徴があります。文字で表現するのは難しいのですが、一番のポイントは目にあるのではないかと思っています。特徴的だからといってアクが強いというわけでもなく、特段絵に対する不満を聞いたことはなく頭身バランスも良いので、比較的万人向けの絵と言えるでしょう。
 そして、設定こそがみずいろの生命線です。このゲームは、ヒロインと主人公の人間関係としての属性(幼なじみ・義妹etc...)を強く意識したつくりになっています。ゲームが過去パートと現在パートに分かれているために、過去の影響が現在の属性に強く反映されているのが目に見えて分かるのです。これが幼なじみなどの設定に重みを持たせており、ただの記号的な意味合い以上のものを引き出すことに成功しています。

■テキスト
 独白調の文を散発的に登場させることによって、ゲームの雰囲気を一気に変化させるパターンが幾つか見受けられます。難解な文はなく分かりやすくテンポ良く読んでいける文章が多く、だからと言って描写が少ないわけでもないので、美少女ゲームの中では良質な部類に入ると思います。

■シチュエーション
 各ヒロインは、主人公とそれぞれの「アイテム」に関わるエピソードを持っています。そのアイテムに込められたヒロインの想いを、タイトルの「みずいろ」と絡めてシナリオでしっかりと昇華させている点が良かったです。想いは日を追うごとに変化していきますが、形に残った物(アイテム)は変化しません。変化しないアイテムに、変化するヒロインの気持ちを重ねることで、ジレンマを生み出すことに成功しています。つまり、登場人物たちは、流れゆく想いをアイテムと言う楔で繋ぎとめているのです。このジレンマが、妹である雪希との関係に葛藤する主人公の気持ちと合わさってシナリオに微妙な緊張感を与え、面白いラブコメ作りに貢献しています。

■ゲーム性
 過去パートと現在パートに分かれてゲームをプレイしていきます。最初に過去パート、過去パートが終われば現在パートとなりますが、過去パートの選択が、登場人物の現在の感情や動向に影響を及ぼすところが面白い点です。システム的に見れば、選択肢によってフラグが立つか否かですので他のADGとまったく変わりませんが、過去と現在という明確な色分けをしたことで、特色が出せていることは一筆に値するでしょう。

■グラフィック
 背景は結構綺麗。数も20枚以上あるかもしれません。十分ギャルゲーで使えます。イベントCGはヒロインによってかなりばらつきがあります。雪希が30枚に対して清香は16枚、冬佳に至っては12枚しかありません。出来はかなり美しいです。立ち絵が元々綺麗なので、それがイベントCGでも生きています。立ち絵は各ヒロイン5以上はあります。服装と表情もコロコロ変わり、見ていて飽きません。この項目は全体的に合格点を出せますね。


総合得点■■■■■■■■ 82/100
おすすめ度■■■■■■  7/10
ボイス■■■■■■■■■■ 10/10
シナリオ■■■■■■■■  8/10
テキスト■■■■■■■■■   9/10
キャラクター1■■■■■■■■  9/10
キャラクター2■■■■■■■■■■ 10/10
音楽■■■■■■■■  9/10
演出■■■■■  5/10
システム1■■■■■■  7/10
システム2■■■■■■  7/10
シチュエーション■■■■■■■■  9/10
グラフィック1■■■■■■■■    4/5
グラフィック2■■■■■■■■■■  5/5
みずいろの空が齎すハッピーエンド


 果たして何が、みずいろをギャルゲーの「普通」で「王道」たらしめるのでしょうか。幼なじみ、義妹、天然の先輩……確かにありがちな設定です。しかし、彼女達の性格や行動まで普通であるとは必ずしも言い切れないところがあります。シナリオにしても、先が読める展開ばかりですが、だからと言ってそれが「王道」に繋がるとは限りません。先が読めるのはありがちだからではなく、先が読めるように作っているからなのです。では、一体どこが王道なのか?
 それは、エンディングではないでしょうか。笑顔でゲームを終わることが出来るハッピーエンド。そこにはわだかまるものなどなく、ただただ喜びが満ち溢れているばかりなのです。後腐れなくすべてを無理なく消化できていること……それが「普通」であり「王道」なのだと思います。あまりに考えすぎて消化不良を起こしているゲーム、意外と多いです。そうしたゲームの制作スタッフは一度原点にかえってみると良いかもしれません。その意味では、本作はお手本となるゲームのひとつだと思います。逆にプレイヤーサイドから評価すると、入門編としては最適なのですが、ベテランユーザーが改めてプレイしたところで新しいものを見出せるものではないでしょう。あくまで原点回帰用の一本です。

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