みずいろ
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王道の中の「王道」を目指して
みずいろは、ねこねこソフトの放った第3弾のソフトであり、美少女ゲームではかなりの認知度を持っています。批評するのはコンシュマー版ですが、原作は2001年4月13日にPCでアダルトゲームとして発売されています。2002年にDCとPS2に移植され、PCでは2002年と2005年に再販、PS2でも2004年にベスト版が発売されるなど、未だに根強い人気を持ってユーザーに迎えられています。私が購入したのはDC通常版ですが、初回限定版は箱に入っており、テレホンカードとねこ缶が付属しています。コンシューマ版では、PC版からHシーンを削除する代わりに、オリジナルキャラクター石川冬佳を登場させた他、新日和ルート(通称新ぽん)とイベントCGが追加されています。 ねこねこソフトは、みずいろで美少女ゲームの「王道」を実現することを目的にしました。兄のことが大好きな義理の妹、同じ学校に通う幼なじみ、自分を慕う後輩、天然ボケの先輩……。登場するのは、確かに王道を行くヒロインばかり。彼女たちと繰り広げる日常もまた、美少女ゲーム世界ではありふれたものばかり。だからこそ、ある種の安心感をもって遊べる点が、本作の利点でしょうか。ここでは、みずいろが目指した王道の中の「王道」について迫ることにしましょう。 分かりやすい伏線が感情移入を容易にする ■シナリオ 過去パートと現在パートに分かれており、過去の影響を現在に反映させるゲームシステムを活用し、できるだけプレイヤーとキャラクターの情報量を一致させながら進行していきます。所々でヒロインと主人公の独白を挿入しつつ、幾つかの伏線を張っていくわけですが、伏線と過去のエピソードがかなり分かりやすいかたちで関わっているため、展開が読みやすくなっているのが本作の特徴かもしれません。そのためか身構えずに自然体でゲームを進めていくことができます。ですから、プレイヤーはある程度、主人公とヒロイン双方の感情を理解することが可能なのです。驚くべき展開がないのに一定の感動を得られるのは、このように感情移入を極めて容易にしたためです。また、起承転結がしっかりいる点も王道を王道たらしめた要因でしょう。 ■キャラクター ねこねこソフトの絵は、他のソフトメーカーにはない特徴があります。文字で表現するのは難しいのですが、一番のポイントは目にあるのではないかと思っています。特徴的だからといってアクが強いというわけでもなく、特段絵に対する不満を聞いたことはなく頭身バランスも良いので、比較的万人向けの絵と言えるでしょう。 そして、設定こそがみずいろの生命線です。このゲームは、ヒロインと主人公の人間関係としての属性(幼なじみ・義妹etc...)を強く意識したつくりになっています。ゲームが過去パートと現在パートに分かれているために、過去の影響が現在の属性に強く反映されているのが目に見えて分かるのです。これが幼なじみなどの設定に重みを持たせており、ただの記号的な意味合い以上のものを引き出すことに成功しています。 ■テキスト 独白調の文を散発的に登場させることによって、ゲームの雰囲気を一気に変化させるパターンが幾つか見受けられます。難解な文はなく分かりやすくテンポ良く読んでいける文章が多く、だからと言って描写が少ないわけでもないので、美少女ゲームの中では良質な部類に入ると思います。 ■シチュエーション 各ヒロインは、主人公とそれぞれの「アイテム」に関わるエピソードを持っています。そのアイテムに込められたヒロインの想いを、タイトルの「みずいろ」と絡めてシナリオでしっかりと昇華させている点が良かったです。想いは日を追うごとに変化していきますが、形に残った物(アイテム)は変化しません。変化しないアイテムに、変化するヒロインの気持ちを重ねることで、ジレンマを生み出すことに成功しています。つまり、登場人物たちは、流れゆく想いをアイテムと言う楔で繋ぎとめているのです。このジレンマが、妹である雪希との関係に葛藤する主人公の気持ちと合わさってシナリオに微妙な緊張感を与え、面白いラブコメ作りに貢献しています。 ■ゲーム性 過去パートと現在パートに分かれてゲームをプレイしていきます。最初に過去パート、過去パートが終われば現在パートとなりますが、過去パートの選択が、登場人物の現在の感情や動向に影響を及ぼすところが面白い点です。システム的に見れば、選択肢によってフラグが立つか否かですので他のADGとまったく変わりませんが、過去と現在という明確な色分けをしたことで、特色が出せていることは一筆に値するでしょう。 ■グラフィック 背景は結構綺麗。数も20枚以上あるかもしれません。十分ギャルゲーで使えます。イベントCGはヒロインによってかなりばらつきがあります。雪希が30枚に対して清香は16枚、冬佳に至っては12枚しかありません。出来はかなり美しいです。立ち絵が元々綺麗なので、それがイベントCGでも生きています。立ち絵は各ヒロイン5以上はあります。服装と表情もコロコロ変わり、見ていて飽きません。この項目は全体的に合格点を出せますね。
果たして何が、みずいろをギャルゲーの「普通」で「王道」たらしめるのでしょうか。幼なじみ、義妹、天然の先輩……確かにありがちな設定です。しかし、彼女達の性格や行動まで普通であるとは必ずしも言い切れないところがあります。シナリオにしても、先が読める展開ばかりですが、だからと言ってそれが「王道」に繋がるとは限りません。先が読めるのはありがちだからではなく、先が読めるように作っているからなのです。では、一体どこが王道なのか? それは、エンディングではないでしょうか。笑顔でゲームを終わることが出来るハッピーエンド。そこにはわだかまるものなどなく、ただただ喜びが満ち溢れているばかりなのです。後腐れなくすべてを無理なく消化できていること……それが「普通」であり「王道」なのだと思います。あまりに考えすぎて消化不良を起こしているゲーム、意外と多いです。そうしたゲームの制作スタッフは一度原点にかえってみると良いかもしれません。その意味では、本作はお手本となるゲームのひとつだと思います。逆にプレイヤーサイドから評価すると、入門編としては最適なのですが、ベテランユーザーが改めてプレイしたところで新しいものを見出せるものではないでしょう。あくまで原点回帰用の一本です。 |