もしも明日が晴れならば
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くすくす氏の原画と言うことでマークしていた、もしも明日が晴れならば略して「もしらば」。私の2006年新作PCゲームはこれで開幕しました。 しかしながら、マークしていたとは言え購入一週間前まで、このゲームが良作かバカゲーなのかまったく判断し兼ねておりました。ストーリーの項を見てもらうと分かるかと思うのですが、一見バカゲーっぽい紹介文なんですよね。ただ、公式のサンプルCGを見ると真面目な感じにも見えますし……。決定打を与えてくれたのは、いつもは落とさないデモムービーでした。穏やかな歌に無理の無い丁寧な構成、そして楽しげでいてどこか悲しげな終わり方の素晴らしい出来! これを見て、ようやく良作だと確信してメロンブックスに赴くことが出来ました。やはり新年一発目は良いゲームをプレイしてモチベーションを高めたいので(^^; そんな私の期待通り……いや、期待以上に素晴らしい出来を見せてくれたのか、もしらば? すべての要素が物語の演出のために結集 まず、購入動機であるキャラクター評価から。くすくす氏の絵はシナリオを飲み込む魔力を秘めております。ですが、それ程アクは強くないので、シナリオがしっかりしていれば話にじっくり溶け込む絵です。特に本作の様な純愛系のストーリーなら尚のこと。結論を先に述べると、くすくす氏の絵は大成功であったと言えます。絵、性格、ボイスが三位一体となってシナリオに溶け込んでいました。絵だけが突出することなく、ゲームのパフォーマンスを底上げすることが出来たのはシナリオが良かったから。美少女アドベンチャーならではの勝因ですね。絵も性格も満点です。 ボイス。私はあまり声にこだわらない人間なんですが今回は参りました。全体的に良かったのですが、特に明穂。あんなにキャラクター付けに合った母性愛溢れる声はテレビでも滅多に見られない。エロゲーでもきっちり「演技」がされているんですね。「萌えー萌えー」と萌えボイスの呪縛に捉われていた私は、目から鱗が落ちる思いでした。西田こむぎさんってこんな声も出せるんだ……。今まで西田ボイスであまり好きなキャラがいなかったんですけど、世界が広がりました。また、とにかくヒロインが泣くシーンが多いんですけど、上手いのでボイスは飛ばさずに全部聴くべし。 グラフィック。草薙が担当していますので、背景に関しては心配無し。イベントCGですが、塗りは綺麗ですが枚数がやや少ないのが残念。立ち絵枚数はそこそこです。 演出。本作の演出はかなり良かったと思います。特に、各キャラの後ろ向きの立ち絵があることが新鮮でした。折角良い原画家使っているのに顔が見えないなんて意味が無いじゃないかとも思えますが、むしろそこを評価したいですよ。「このゲームは絵だけで売ってるんじゃないんだ」と言う意気込みが感じられます。ここにも、絵だけでキャラクターを終わらせない工夫があったんですね〜。これぞまさに名演出。 後ろ向き絵とキャラのアップ絵を利用しての距離感の表現にも高得点を与えたいところ。地味ですが、これまでギャルゲーであまり出来ていなかった「穴」が埋められています。また、エフェクトも豊富で、ため息をついたり汗が飛んだり火の玉が浮いたり(公式参照)、見ていて飽きさせない工夫がなされています。各章毎のキャッチアップも良かったかな。 ゲーム性。章構成になっており、1章〜4章で各ヒロイン当番割り当てがなされています。5章以降で個別ルートに入るのですが、とにかく共通ルートが長い。2周目以降は1章が飛ばせますが、それでも長い。個別ルートも量はあるので配分的には問題ありませんが、これはちょっと……。難易度としては、基本的にストーカーしていればOKなので簡単です。また、本作は主人公だけではなく、ヒロイン視点でもストーリーが進行します。ザッピングは使い方によっては感情移入がしにくくなってしまうのが難点なのですが、本作では上手く使われていますので、逆にヒロインに対して感情移入しやすくなっています。ただし、やや使いすぎの感もあり、重要な場面でうっかり使って後半の展開を読みやすくし過ぎている面もありますが、おそらくこれはわざとだろうなあ……。そう言った意味では、完全にゲーム性を排除してしまっていると言えなくも無いですな。 Hシーン。純愛ものにしては、結構頑張っている方だと思います。各キャラ3回ずつ。必ず着衣プレイがあります。そして、千早以外全員ニーソつけたまましてます<千早は和服なので已む無し。クリエイターの魂を感じますね。私もニーソは大好きですので嬉しい悲鳴。やはりニーソは白が良いと思う……! シナリオについて。幽霊の明穂と学園生活を送るわけですが、明穂とは生前恋人同士だったと言う設定が重要。どの場面でも明穂が出てくきますが、明穂が幽霊であるが故に対等に付き合いきれないもどかしさ。それでも明穂が好きと言う確かに存在する気持ち。いつまたいなくなってしまうか分からない幽霊の明穂と人間の女の子たちとの間で揺れ動く主人公の心、そして主人公が好きな幽霊の明穂と人間の女の子たちの心が繊細に描かれます。幽霊と言う設定を十二分に生かした点は評価出来ますね。ザッピングで、如何にヒロインにも感情移入出来るかがポイントとなりそう。 ストーリー中、かなりご都合主義な事態が起こりますが、ある程度は受け入れていかなくてはなりません。そもそも幽霊がいること事態が奇跡ですからね(^^;
本作はあまりにも陳腐なエピローグのためにテーマが若干見え難くなっている感がありますが、一貫した強い想いがこめられています。 「出会い」があれば「別れ」もある――実に有り触れた台詞です。しかし、別れがあったからと言ってその人に対する気持ちが消滅するわけではありません。人の「想い」は絶対に消えることが無いのです。そこに直球勝負を仕掛けてきたのが「もしも明日が晴れならば」です。「想い」を「想い出」に変えるのかそれとも「想い」のまま留めておくのか。多くの場合、残された「想い」は「未練」と言う後ろ向きな単語で表現されます。しかし、未練は幸せなくして残りえないんですよね。幸せを切り刻んでまで「未練」を断ち切り「想い」を「想い出」に変えることが「死を乗り越える」ことなんでしょうか。それは違うと本作は述べています。もしその想いを想い出に変えて良い時が来ればそうすれば良い。しかし、想い出にせずに永遠に続く恋だってあって良いのです。それは決して後ろ向きな考え方では無いことを本作は示しています。 人の幸福のかたちは様々です。本作のストーリーはあまりにも過酷な一面がありました。しかし、そんな過酷な彼らの姿は、温かくとても優しい想いによって包まれていることに気付くことが出来ます。明穂編――本作を購入されたら是非ともプレイされることをお勧めします。そこにこそもしらばの真髄がある……! |