Prismaticallization

ブランドアークシステムワークス 発売日2000.8.24
定価6,090円 
ハードDC ディスク数1枚
ジャンルADG 
キャラデザ森藤卓弥 シナリオ池田修一
音楽川口貴志 
音声なし ボーカル曲あり

ストーリー
夏の避暑地
快適な環境で受験勉強を、との名目で連れてこられた主人公
明確な目的を持てないまま
無意味に怠惰に過ぎていく一日
そして、5人の娘たちとの触れ合い…

しかし、ある奇妙なオブジェを拾ったことで
不思議な感覚にとらわれることに…

繰り返される毎日。
常に付きまとう、退屈と倦怠。
しかし自分からは何も変えられない。
ただ、その場に流されるだけでしかない。
……では、どうすればいい?
この不安と焦燥とを癒すには、どうしたら?

キャラクター名私的お気に入り度声優属性
鳴川澄香■■■■■■ 7/10 年下・元気っ子
柊明美■■■■■■ 7/10 幼馴染み・元気っ子
沢村雪乃■■■■■■ 7/10 年下・内気
木ノ下さより■■■■■■ 7/10 年上・おっとり系
琴原みゆ■■■■■■ 7/10 ロリ・不思議系

主要搭載システム
BGM及びボーカル曲
●スキップ(既読判定あり)
●CG鑑賞
●音楽鑑賞
●BGM17曲
●OP歌
 Smile
 Water Clock
●ED歌
 With you
 Water Clock
雑感
個人的名曲
 スキップ前提のゲームなので、スキップ機能は優秀で物凄く早さで飛ばしてくれます。他は特になし。ただ、バックログは欲しかったですね。  静かな印象の曲が多いです。作業感の強いゲーム内容の割に、音楽はしっかり作られており、曲数も少なくはありません。
 OP歌はスローテンポでエコーがかかっているまったりした感じのもの。ちょっとギャルゲーでは聴いたことのないタイプの歌です。でも何だか聴いているとクセになるんですよね。何なんだろうこれ……。

●Smile
謎のパッケージの特殊構造アドベンチャー


 少し前のギャルゲーのパッケージは、見ただけでは内容がさっぱり想像がつかないものが幾つもありました。メジャーどころではKanonやAIRがそうで、パッケージ裏を見ても特に説明がないので「分かっている人」以外は一体どんなゲームなのかと、さぞかし不思議に思ったのではないでしょうか。本作はそれ以上にパッケージ表面が不可解で、背景が真っ白で何もない中、少女が後ろを向いて首だけ半分振り返っているというもの。裏面には多少説明が書いてありますが、ちょっと素人には手が出しづらい感じがします。そしてその予感は当たり、ゲーム内容も相当変わっていたのでした。
 のあ、私がプレイしたのはDC版ですが、前年にPSで発売されたのが原作です。


記録と解放が繰り返される循環世界


■シナリオ
 内向的な主人公が、宿泊することになったペンションで出会った少女達と同じ一日を過ごし続けるというもの。典型的なヒロイン救済型で、ヒロインの抱える悩みを解決してあげたときにループを脱出することが出来ます。ただ、ゲームシステムが特異なせいか、それぞれのエンディングに辿りつくまでの展開は他の「ループ物」とは一線を画しています。際たるは、登場人物の大半がエンディングに至るまで時間がループしていることに気付かず、そこに疑問を見出さないことでしょう。「ループしている情報」――現在以前の周の情報――がキャラクターの意識として持ち越されず、エンディングに至っても「それまでの苦労」が報われる印象がないのが特徴です。エンディングを迎えるには当然周回を重ねる必要があるのですが、その周回一つひとつをパラレルワールドとして処理しているわけです。しかも、パラレルワールドでありながら、正解に辿り着けないと起点に戻ってしまうとのです。謂わばこれはリセットボタンのある人生です。提示される1日の行動パターンの中から最良の選択を得られるまで永遠にリセットボタンを押し続ける……それが本作のシナリオです。

■キャラクター
 キャラデザは森藤卓弥氏。「プリズマ大先生」として有名ですが、その辺りの経緯は他のサイトへお任せ致しましょう。絵はセンチメンタルグラフティに似ているという意見が大半を占めています。確かに線の細い繊細なタッチは似ており、鳴川澄香が沢渡ほのかにソックリだとは思いますが、それ以外のキャラはそれほど被る印象はありません。そもそもセンチの絵は大好きなので私としては問題なし。顔パーツのバランスが良く万人受けするタイプの絵なので、センチを知らない人でも問題ないでしょう。
 性格・設定面。主人公は哲学的用語と豊富な知識を並べ立て、能動的な行動や他人との積極的な関わりを回避しようとする傾向があり、かなりの変人です。ヒロインはそれぞれに悩みや劣等感を抱えており、それを隠すように、またはその弱点を自己弁護するように振舞う傾向が見られます。結果、どこかとっつき難くいじけたような性格のキャラが多いように感じてしまいます。この性格は彼女達の過去や置かれた環境に関係しているのですが、背景事情は多くは明かされません。ただ、すべてを詳らかにするには1日というゲーム内時間はあまりにも短く、また各キャラの精神面を集中して追っていく本作にとっては社会的地位や個々の詳細なバックグラウンドは必要ないので問題はありません。

■テキスト
 主人公のナレーション+会話で進んでいく通常のADG。ですが、このナレーションがかなり珍妙。比喩的でとにかく理屈っぽくて深く考えすぎ。その際たるものが、有名な冒頭のジャンケンでの台詞です。「グーで負けた。グーで負けるというのは、保守的なために敗北したかのような、苦い後悔が残るものだ。」と言う一節。ジャンケン一つでここまで語る主人公もなかなかいますまい。これを名調子と理解するか迷調子と非難するかは趣味の問題ですが、面白いことは面白いので、私は好きです。

■演出
 OPムービーはヒロインの線画がアニメーションするというあまり見ないもの。ヒロインについての説明やスタッフロールは一切なしで、独特の不思議な雰囲気を醸し出しています。
 本編の演出面ではイマイチ。目パチ・口パク一切なし。SEも凝ったものはなし。声もなし。

■シチュエーション
 本作は、一体相手が何を考えているのか、自分は相手のことをどう思っているのか、そして自分自身どう感じているのか……そんな心の探りあいをずっと続ける内容となっております。そのためか、イチャイチャするようなシーンはなく、感情のぶつけ合いになってしまう殺伐としたシーンばかり。心が痛むという程でもありませんが、甘ったるい展開を求めると肩透かしを食うでしょう。

■ゲーム性
 いわゆる「ループ物」に分類されるんですが、そのループの方法が実に独特です。
 主人公はある一日を繰り返していくのですが、その一日の中の「状態」を「記録」することが出来ます。具体的には、その日の天候――例えば「雨天」状態――を本編進行中に「記録」するかどうかの選択を迫られます。ここで記録した「状態」は次の周回以降の記録したポイントで「解放」され、その後の展開に影響を及ぼします。例えば「記録」した次の周回で天候が晴れていた場合、「状態」が「解放」され、天候が雨になったりします。これを駆使して、特定の状態で雨にならないと発生しないイベントを発生させたりするわけです。「記録」出来る「状態」の数は5個までで、1個も「解放」出来ないとリセットされてしまいします。上手く「記録」と「解放」を繰り返すことで、エンディングを目指します。
 つまり、本作は特定の「記録」がないと発生しないイベントを上手く繋ぎ合わせて、エンディングへ導いていくというフラグ管理ゲームなのです。これはおそらくオリジナルの手法で、少なくとも私は他のゲームで遊んだことがありません。何周も繰り返すことが前提なので、1周当たりはスキップを使えばなんと「2分」で終わります。ですからストレスは貯まりませんが、難易度はかなりのもの。通常のADGとは毛色がまったく違うので、注意して下さい。クセが強いですが、はまる人ははまると思います。

■グラフィック
 立ち絵は各ヒロイン5パターン前後。表情は変わりません。
 背景は曖昧ですが15枚前後だったように思います。おそらく実写を加工したもので、モザイクやエンボスがかけられたようなものなのであまりパッとしません。昔よく使われた手法ですが、流石に2000年代になるとイマイチ感が漂います。
 イベントグラフィックは、ほとんどの場合、背景の上からキャラ絵を切り抜いて配置する形。つまり、背景は一部を除き通常の背景を流用しています。ちょっと手抜きっぽい感じはしますが、キャラ絵のクオリティーが高いので、これはこれで悪くないかもしれません。


総合得点■■■■■■ 72/100
おすすめ度■■■■■■■■  8/10
シナリオ■■■■■■■■  8/10
テキスト■■■■■■■■  9/10
キャラクター1■■■■■■■■■■ 10/10
キャラクター2■■■■■■  7/10
音楽■■■■■■■■  8/10
演出■■■  3/10
システム1■■■■■■  6/10
システム2■■■■■■■■■■ 10/10
シチュエーション■■■■■■  7/10
グラフィック1■■    1/5
グラフィック2■■■■■■  3/5
流されるだけでは何も変わらない


 本作で面白いのは、プレイ中に最初から最後まで主人公の意思を操作出来ないことにあります。プレイヤーは、主人公の行動や思考を選択するのではなく、飽くまで状況作りしか行いません。例えば、天気が晴れているという状況に対して「テニスをする」か「釣りをする」か選ぶのではなく、「晴れている」か「雨が降っている」という状況しか作り出せません。この状況に対して、主人公は予め決められている一定の行動を行います。つまり、主人公の行動は予定調和に過ぎず、あらゆる行動は「状況」によって規定されているのです。用意されている様々な状況の中からベストの状況を探し出した時、ループからの脱出が可能となります。
 これらの状況の集合体が、主人公が冒頭で拾うループの元凶でもある「プリズム」です。そしてこのプリズムの中で最も良い状況を見つけ出していくのがプレイヤーなのです。
 これだけプレイヤーとキャラクター(主人公)が分断されたアドベンチャーゲームも珍しいですが、パズルのようにプレイヤー自身が試行錯誤しなくては攻略出来ないゲーム性は、最近の「テキストを読んで終わり」というアドベンチャーゲームには見られない面白さです。本作のキャッチコピーは「流されるだけでは何も変わらない」ですが、これはキャラクターの行動について述べているのではなく、メタ的な解釈になりますが、プレイヤー自身に「流されるだけ(ただ読んでいるだけ)ではクリアー出来ないよ」と伝えているのです。

 ところで、このプリズムは作中で二つ登場します。詳しくは明かされませんが、どうやらこの二つは互いに連動若しくは共鳴し合っているようなのです。プリズムの一つは主人公が所持し、もう一つは別の人物が所持しています。二人は共に前に進み出せず停滞気味の思考に陥っており、どちらかがこの思考から脱却しない限り、プリズムの連動によりループは続きます(前述した通り、ループの元凶はプリズムですから、どちらかがこれを破棄すればループから免れることは出来ると思われます)。これがループの仕組みだと思います。

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