パンドラの夢

ブランドPAJAMAS SOFT
NEC/Interchannel
 発売日2002.9.12
初回限定版7900円 
ハードDC ディスク数1枚
ジャンルADG 
原画大野哲也 シナリオ和亀時彦
まろにぃ
丸谷秀人
秋葉恵
音楽OdiakeS 
音声フルボイス ボーカル曲あり

ストーリー
 新学期を控えた夏の終わり。一週間に渡る恒例の美術部合宿が主人公を含む4人の部員たちで行われようとしていた。合宿の前準備のために学園を訪れていた4人は、工事中で立入禁止になっている洋館の地下室で女の子の姿をしたロボットを発見する。こうして、偶然に出会った看護用ロボット「スウ」とともに彼らの合宿はスタートした。

 「合宿」と銘打っただけの何気ない日常を楽しむ主人公たち。思い思いに過ごした一週間が終わる8月31日。彼らが帰宅しようとした矢先、突如大きな地震が起きる。その時、校舎の時計の針が逆転しはじめ…。そして、気がつくと、合宿初日の8月25日が始まっていた。

キャラクター名私的お気に入り度声優属性
橘蘭■■■■■■ 6/10松本菜々美天然・後輩
永源寺美紀■■■■■■ 6/10須本綾奈メガネっ娘・先輩
スウ■■■■■■■■■■10/10大波こなみメイドロボ
源陽詩美■■■■■■ 7/10潮岬夕子幼馴染み・天然
源春華■■■■■■■■■■10/10日向裕羅妹・ショート
小野寺櫻■■■ 3/10北都南謎の少女

主要搭載システム
BGM及びボーカル曲
●オートメッセージ
●スキップ(既読判定あり)
●バックログ
●ヴィーナスシステム
●CG鑑賞(クリアー後)
●音楽鑑賞(クリアー後)
●シーン回想(クリアー後)
●BGM29曲
●OP歌
 パンドラの夢
 かないみか
●ED歌
 玩具箱の未来
 みとせのりこ
●ED歌
 Endless Loop
 TAKAKO
●ED歌
 鳥のように抱いて
 みとせのりこ
●ED歌
 楽園のゆりかご
 みとせのりこ
雑感
個人的名曲
 バックログ中の音声再生が出来ないのが残念ですが、それ以外は問題無し。NECのシステムはオートメッセージのテンポが良くて好きです。ただ、クリアー後の音楽鑑賞で歌が聴けないのが残念。良い歌なのに……。
 ヴィーナスシステムとはVisual(視覚的)Effective(効果)Novelty(斬新)Unite(合体)System(システム)の略。メッセージが縦書きに綴られたり、セリフがキャラクターの感情に合わせて吹き出しで表現されたり、背景の雰囲気を漫画調に演出したり…とくるくると変化する演出効果を楽しめます。
 実際のクラシックも存在します。全体的に静かで綺麗な曲が多い印象です。歌は上手い……がOPの電波加減はどうかと思った。

●わたしの中の……
●記憶の彼岸
●Pink Banana
●鳥のように抱いて
ギャグゲー……? その実態や如何に?


 本作は2001年にPCで発売されたゲームをDCに移植したものです。私は原作を未プレイです。購入動機事態が、初回限定版で豪華そうな箱に入っていながらも1500円で販売されていて安いからと手を出したに過ぎませんでしたし、内容にはさっぱり期待していませんでした。パッケージの表面に描かれていたヒロイン「スウ」の顔が可愛かったのは良かったのですが、いざ購入後に封を開けて説明書の全ヒロインの顔を見てみると非常にクセの強い顔でありまして、少し躊躇いつつゲームスタート。するとオープニングムービーが歌と共に流れてきたわけですが、これがまたとんでもない電波ソングでして、これはとんでもないバカゲーをにあたってしまったのではないかと思った私は一気に引いてしまいまして、それ以降さっぱりやる気が起きずに一年以上も積んでおりました。

 クリアーした今だから言えるのですが、私は途轍もないミスを犯していたことに気付きました。パンドラの夢はバカゲーなどではなく中々良いゲームだったのです。


演出力が繰り返しを覆い隠す


 本作のジャンルはいわゆる「ループ物」です。美術部所属のメンバーたちが夏休みの合宿を共に過ごすのですが、合宿が終了して帰ろうとした瞬間に時間が突然合宿開始時に戻ってしまい、このループが繰り返されていくというものです。ループ物はループする世界からの脱出と何故ループするのかという謎解きが基調となるパターンが多いです。時間がループすると言うことは同じことの繰り返しと言うことでもありまして、ストーリーの核心に迫るまで退屈になってしまう恐れがあります。この弱点を和らげてプレイヤーをだれさせないために豊かな演出効果が存在しています。
 パンドラの夢では、文章や登場キャラクターたちのセリフが漫画の吹き出し調に表されます。キャラクターの顔は目まぐるしく変化し、様々なシーンにおいて画面がスクロールするなど演出が洗練されており、今見ても斬新なスタイルを確立しています。他にも目パチ口パクも実装されてプレイヤーを視覚的に飽きさせない工夫が施されているのです。

 私は謎や謎解きの多いゲームが好きです。その点で謎の多いループ世界を描いた本作は当たりでしたが、一人一人のヒロインに謎を解く鍵を持たせて、全員をクリアーすることによって「パンドラの夢」の世界の全体像を知ることが出来る、と言う魅せ方の上手さも重要なポイントでした。それも全員が異なる周回でなくては攻略出来ず、ループを重ねるごとに世界が変化していく様も面白かった。演出に頼りすぎて単調な展開を繰り返すこと無かった点も褒められるところかと思いますね。


総合得点■■■■■■ 68/100
おすすめ度■■■■■■■■  8/10
ボイス■■■■■■  7/10
シナリオ■■■■■■■■  8/10
テキスト■■■■■■   7/10
キャラクター1■■■  3/10
キャラクター2■■■■■■  6/10
音楽■■■■■■  7/10
演出■■■■■■■■  9/10
システム1■■■■■■  7/10
システム2■■■■■■  7/10
シチュエーション■■■■■■  6/10
グラフィック1■■■■■■■■    4/5
グラフィック2■■■■■■■■  4/5
崩壊は創造へのセレナーデ


「夢」という単語を想像した時に二つの意味が浮かび上がります。一つは未来に何をしたい、といった将来に向けての「夢」。もう一つは眠っている時に見る「夢」。

 登場人物たちはループからの脱出と言う希望をもちながらゲームを進みますが、私はループする世界自体もまたループの終わりを望んでいる様に感じました。
 本作はヒロインたちとの関係を深めつつループから脱出していくストーリーが繰り広げられることは確かですが、 ループ世界と向き合うことによって世界そのものを終わらせることによってあるべき元の世界へと戻る話、つまり「夢」から目覚める話でもあるのではないでしょうか。

 ここから、本作のストーリーは二部構成であることが伺えます。一つはヒロインの抱える問題を解決することによってループ世界とは異なる新たな世界を創造していくという将来へ向けた「夢」の話。 もう一つはループ世界と真摯に対峙することによって主人公自身がつくりあげた「世界」という「夢」から目覚める話。もっと言うならば、ヒロインの部と主人公の部に分かれているのです。私としては本作の楽しみ方は、ヒロインたちの部を全員終わらせた後に主人公の部(最後のループです)をプレイするのが良いかと思います。

 開けてはならないと言う箱を開けた瞬間に、ありとあらゆる災厄が世界中に飛び出していったと言うパンドラの箱。そんな箱の中でただ一つ最後に残っていたのが「希望」でした。
 夢から目覚めると言う希望を抱いた世界をどう生き抜いていくか。世界崩壊が世界創造へと繋がっていく繊細且つ密接なリンクを感じ取れたなら、プレイヤーは本作に秘められた「強さ」を認識出来ることでしょう。

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