パンドラの夢
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ギャグゲー……? その実態や如何に?
本作は2001年にPCで発売されたゲームをDCに移植したものです。私は原作を未プレイです。購入動機事態が、初回限定版で豪華そうな箱に入っていながらも1500円で販売されていて安いからと手を出したに過ぎませんでしたし、内容にはさっぱり期待していませんでした。パッケージの表面に描かれていたヒロイン「スウ」の顔が可愛かったのは良かったのですが、いざ購入後に封を開けて説明書の全ヒロインの顔を見てみると非常にクセの強い顔でありまして、少し躊躇いつつゲームスタート。するとオープニングムービーが歌と共に流れてきたわけですが、これがまたとんでもない電波ソングでして、これはとんでもないバカゲーをにあたってしまったのではないかと思った私は一気に引いてしまいまして、それ以降さっぱりやる気が起きずに一年以上も積んでおりました。 クリアーした今だから言えるのですが、私は途轍もないミスを犯していたことに気付きました。パンドラの夢はバカゲーなどではなく中々良いゲームだったのです。 演出力が繰り返しを覆い隠す 本作のジャンルはいわゆる「ループ物」です。美術部所属のメンバーたちが夏休みの合宿を共に過ごすのですが、合宿が終了して帰ろうとした瞬間に時間が突然合宿開始時に戻ってしまい、このループが繰り返されていくというものです。ループ物はループする世界からの脱出と何故ループするのかという謎解きが基調となるパターンが多いです。時間がループすると言うことは同じことの繰り返しと言うことでもありまして、ストーリーの核心に迫るまで退屈になってしまう恐れがあります。この弱点を和らげてプレイヤーをだれさせないために豊かな演出効果が存在しています。 パンドラの夢では、文章や登場キャラクターたちのセリフが漫画の吹き出し調に表されます。キャラクターの顔は目まぐるしく変化し、様々なシーンにおいて画面がスクロールするなど演出が洗練されており、今見ても斬新なスタイルを確立しています。他にも目パチ口パクも実装されてプレイヤーを視覚的に飽きさせない工夫が施されているのです。 私は謎や謎解きの多いゲームが好きです。その点で謎の多いループ世界を描いた本作は当たりでしたが、一人一人のヒロインに謎を解く鍵を持たせて、全員をクリアーすることによって「パンドラの夢」の世界の全体像を知ることが出来る、と言う魅せ方の上手さも重要なポイントでした。それも全員が異なる周回でなくては攻略出来ず、ループを重ねるごとに世界が変化していく様も面白かった。演出に頼りすぎて単調な展開を繰り返すこと無かった点も褒められるところかと思いますね。
「夢」という単語を想像した時に二つの意味が浮かび上がります。一つは未来に何をしたい、といった将来に向けての「夢」。もう一つは眠っている時に見る「夢」。 登場人物たちはループからの脱出と言う希望をもちながらゲームを進みますが、私はループする世界自体もまたループの終わりを望んでいる様に感じました。 本作はヒロインたちとの関係を深めつつループから脱出していくストーリーが繰り広げられることは確かですが、 ループ世界と向き合うことによって世界そのものを終わらせることによってあるべき元の世界へと戻る話、つまり「夢」から目覚める話でもあるのではないでしょうか。 ここから、本作のストーリーは二部構成であることが伺えます。一つはヒロインの抱える問題を解決することによってループ世界とは異なる新たな世界を創造していくという将来へ向けた「夢」の話。 もう一つはループ世界と真摯に対峙することによって主人公自身がつくりあげた「世界」という「夢」から目覚める話。もっと言うならば、ヒロインの部と主人公の部に分かれているのです。私としては本作の楽しみ方は、ヒロインたちの部を全員終わらせた後に主人公の部(最後のループです)をプレイするのが良いかと思います。 開けてはならないと言う箱を開けた瞬間に、ありとあらゆる災厄が世界中に飛び出していったと言うパンドラの箱。そんな箱の中でただ一つ最後に残っていたのが「希望」でした。 夢から目覚めると言う希望を抱いた世界をどう生き抜いていくか。世界崩壊が世界創造へと繋がっていく繊細且つ密接なリンクを感じ取れたなら、プレイヤーは本作に秘められた「強さ」を認識出来ることでしょう。 |