Phantom 〜PHANTOM OF INFERNO〜
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「只者ではない」エロゲー ニトロプラスと言えばシリアスだったりアクショナブルな燃えるゲームを販売する、他のメーカーとは一線を画する風変わりなメーカーです。そのニトロプラスのデビュー作にして今なお代表格と言えるのがファントムでしょう。銃を構えた無表情の少女が佇むパッケージはプレイ前からこのゲームが「只者ではない」ことを感じさせます。それは、システムがMacromedia Directorによって構成されていることによっても分かることでしょう(違 絵は萌えキャラではありません。男は格好良く、女は美人に。ゴルゴ13系統と思ってもらえれば。 「美少女ゲームの枠を超えたハードボイルド真純愛物語」がこのゲームの宣伝句となっていますが、まさしく本作はハードボイルド。これまでに見たことの無いシナリオが繰り広げられます。かなり人を選ぶゲームではありますが、私としてはお勧めしたい名作。どこに魅力があったかを振り返ってみたいと思います。 こだわりの銃器と効果音 まず、オープニングムービーが凄い。歌は無いのですが、とにかく格好良いです。音楽とのマッチも素晴らしい。ただし、オープニングを見て合わないと思った方は回避されるのが無難でしょう。 ファントムの魅力を思い起こしてみると、プレイヤーをグイグイと惹き付ける息つく間もない展開と緊張感溢れる音楽、そして臨場感抜群の効果音が挙げられます。開始時点からプレイヤーは驚きの連続です。いきなり知らない場所で知らない少女に襲われてマフィア組織「インフェルノ」へと入ることになってしまう。まったく意味の分からないままストーリーが展開されるにもかかわらず、「一体何なんだ?」と思った時点でプレイヤーはファントムの世界にどっぷりと漬かってしまうことを約束させられます。「何だ?」と思ったことを確かめずにはいられない。それもすぐに。何故ならゲーム中のありとあらゆる瞬間に緊張感が漂っているから。緊張感を演出するのが先程述べた音楽と効果音なのですが、本作はとことん効果音にこだわられています。効果音の説明に入る前にもう一つの演出に触れておきましょう。本作は場面場面で使用する銃を選択するのですが、銃の造詣が事細かに画面上で説明されます。バイオハザードやパラサイト・イブをご存知の方は思い浮かべていただければと思います。銃の選択によって結果が変わることは無いのでアクセサリーの役目でしかないのですが、やたらと詳細な扱いようを見ると銃に対するスタッフのこだわりが感じられます。さて、ここで効果音でありますが20数個の銃の銃撃音がほとんど違うのです。一見無駄なこだわりに見えますが、実際にプレイしてみるとこのお蔭で臨場感が数倍も増して、プレイヤーも銃に対する愛着が湧いてくることと思います。また、車の効果音も複数用意されていたり、爆撃音や雨の音、人々のざわめきなどとにかく細かい効果音がファントムの世界を際立たせているのです。 また、本作には様々な人物が登場します。彼らは縦に横にと複雑な思惑を絡まています。こうした複雑な人間関係もまたファントムの魅力。人間関係といってもラブコメの様な「お友達」とか「兄妹」ではなく、「利害関係」と言うべきシリアスな大人の関係です。あくまでハードボイルドを意識した登場人物というわけです。そして彼らは抗争の中でバッタバッタと死んでいきます。どんな重要な人物でも死んでいくから嘘臭さが無い。映画のゴッドファーザーを想起させるシビアさが光ります。 気になるヒロインですが、萌えはまったく無いものと思った方が良いでしょう。ハードボイルドに萌えが登場しては興醒めですし、萌えキャラよりゲームの雰囲気を重視したプレイヤーに媚びないスタイルは賞賛に値します。ここで注意したいのは、萌えは無いが愛はあると言うことです。様々な事情を抱えたヒロインたちと過ごしていく内に「守ってあげたい」と思えるようになり、愛へと繋がっていく描写が上手い。生死を賭した「強さ」と「ピンチ」がそこにあるからこそ、強く守ってあげたいと思えるのです。 ただ、Hシーンはやや微妙。予め断っておくと実用性は皆無です。微妙と言うのは、ストーリーの流れとして必要だったかと言うことで、正直なところクロウディア以外は無くても良かったかな、と感じました。
何故ファントムが面白いのか。最終的にはプレイして感じてもらうのが一番なのですが、一つ私なりの答えを出すならば、非現実的世界の中の登場人物が、実は非常に人間臭いからであると思います。野望、復讐、殺意などの様々な負の感情が抱かれる過程が「本能」に基づかれて描かれているため、プレイヤーは心の奥底の計り知れないところでキャラクターに感情移入出来ます。勿論、愛情、同情、憐憫と言ったところも同じ。だから、非日常の世界に没頭出来るのです。ここに演出が加わることで魅力を増幅しているわけです。 御託を並べずに一言で言ってしまえば「熱い」「凄い」「格好良い」。 ハードボイルドのためにあらゆる障害を除去し、こだわるところにとことんこだわられた潔いゲーム。しかし、一見趣味のような風袋は、ギャルゲーというジャンルだからなだけ。まさにハードボイルドのためのハードボイルド、それがファントムです。通常の恋愛ゲームとはまったく内容が違いますし一癖も二癖もありますが、シリアスが好きな方にお勧めします。 |