リアライズ
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発売から半年を経ない内にあちこちで新品が格安で叩き売られていた感があるリアライズ。まあパッケージ表面が何だか可愛くない眼鏡っ娘で何だか買う気力が減退していくのは分からないでも無いですが(苦笑) それでも水無月イラストは大分癖が無くなってきた様な気がします。気がするだけかも(ぉ それでもあの高橋水無月コンビですよ? もう少し扱い良くても良いと思うのですが、これも時代の流れでしょうか……。などと嘆いていても仕方が無いわけで。かく言う私も4月はCanvas2プレイ中で、その次はCLANNADがあったので、本作をプレイしたのは少々時間が経ってからだったのですが(汗) そんなわけでリアライズです。本作はあの痕、To Heartで一世を風靡した高橋龍也、水無月徹両氏が手がけたゲームです。私は高橋氏の文が大好きでして、リアライズで久方ぶりの復活ということで非常に期待しておりました。しかしながらこのゲームの評判ですが、実は結構悪かったりします。そんなに面白く無かったかなあ……? 私は結構好きですよ、リアライズ。どの辺りに魅力がありどこが良くなかったのか、批評していきます。 見て聴いて、読んで楽しいリアライズ リアライズの世界観は独特です。限られた人間が「エゴ」と言う未知の能力に目覚め、エゴを操って生きています。エゴとは人の心に干渉する力で、使い方によってはエゴによって人の心を操りあるいは心を崩壊させることも可能です。まさに万能の力ですがエゴそのものにも力量が存在し、弱いエゴと強いエゴがあります。また、形も存在します。人によってエゴの形は武器の形をしていたり人形の形をしていたりと千差万別。 エゴは相手を倒すことによって吸収することが可能です。具現化したエゴを使って人々は戦闘を行うわけです。例えば鉄砲の形をしたエゴならば弾丸を発射し、剣の形をしたエゴならば切っ先を振るったりするわけです。勿論戦い方も形状に合わせて十人十色です。弱いエゴの人間は強いエゴの人間とエゴ同士を使って倒すことによって強くなっていきます。当然弱い者一人では勝てないので、何人かグループをつくって戦ったりもするわけです。そんなバトルが延々と繰り返されていく世界で、ある日突然能力に目覚めてしまった主人公を中心にストーリーが展開されていきます。 大まかなストーリー構成を振り返って思い当たる点があります。雫や痕をプレイされた方なら分かっていただけるかもしれません。「エゴ」はかの「毒電波」や「鬼の力」と共通するものを持っている様に思えてなりません。突如現れる不条理な力。いずれも圧倒的な力を持ち、抗うことを許さない強力なパワー。それらの強大な力を持ちながら、如何様に良い方向に扱っていこうかという路線はリアライズも変わらず、高橋イズムは健在であったと言えます。 そんなリアライズの魅力は、流れる様な読む者を虜にする文章と見る者を退屈させない演出力抜群の戦闘シーン、そして聴く者をゲーム舞台に引き寄せる臨場感たっぷりの音楽です。読んで見て聴いて楽しめるそんなゲームなのです。演出・音楽共に目立ちながらもストーリー主体であることを守っているのは、文章自体が読む者を惹き付けるものを持っているからで、高度な演出や綺麗な絵の表現が可能になった現在においても、アドベンチャーの根幹を成すのはやはり文章力なのだなあ、と改めて感じました。 演出について述べますととにかく動きが良い。エゴ同士の戦闘時はエフェクトを駆使して臨場感溢れるバトルを繰り広げます。同時に流れる音楽がまた素晴らしく、緊張感が漂います。 クリアー後に判明しましたが折戸氏やOdiakeS氏も参加しているのですね。しかもアップルプロジェクトのメンバーが音楽担当ですし、道理で惹き込まれるわけだ。
文章力が空恐ろしいほど高く演出も音楽も良かった。ではどこが良くなかったのか? それは未完成ともとられ兼ねないシナリオのエンディングにあります。一応、雫で言う所の「トゥルーエンド」は存在し、そのエンディングではまずまずの終焉を見せるのですがそれ以外のエンディングが酷すぎます。トゥルーエンド以外の各ヒロインとのエンディングが半端な終わり方をしておりまして納得がいかない。さらに、ストーリー進行中に色々と人物が登場して意味深なことを言って去っていったりもするのですが、それについての説明がされずに終わっています。エンディングまでぶっ続けで飽きずに進ませるだけのものを持っていながら最後の最後で消化不良。これが本作の良くなかった点ですね。 しかし何故この様な事態が起こったのか……。おそらく意図的に行ったのでしょうが、大風呂敷を広げすぎた様にも思えます。テーマも舞台もあまりにも大きすぎた。雫や痕も普通の学園ものとは異なり問答無用のハッピーエンドで締め括った作品ではありませんでした。リアライズもその点では同じです。しかしながら雫や痕が名作足りえたのは、主人公たちが守ろうとしたものが国家的な大々的なものではなく、同級生であったり従姉妹であったりと身の周り3メートルの手の届くものだったからです。だから、多少無茶なエンディングでも収束を迎えることが出来ました。 それに比べてリアライズは扱うテーマも規模も大きすぎた感があります。最早、一個人がどうこう出来るレベルではありません。結果、纏めきれずに逃げの形をとった大人たちの姿や終局を有耶無耶にした各個人ルートが浮き彫りになってしまいました。プレイヤーとの距離の差が広く共感を与えにくい。これが本作の弱点であったのではないでしょうか。 ともあれリアライズは面白かった。久々に文章に酔えた。結末は一癖ありますが、夢中になれるゲームの一つには間違い無いと思います。 |