レコンキスタ
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伝奇系の妖しげな臭いが漂うダークな構成のパッケージに惹かれて購入。メーカーは、当時活動休止していたねこねこソフトのスタッフが集まって作ったコットンソフトです。伝奇物は当たり外れが大きいですが、ねこのスタッフなら大外れはないだろうと踏んだわけです。このメーカーのゲーム傾向は、ホームページを見る限りでは純愛学園物が多いようで、本作は異色の存在ということになります。ただ、ネット上の意見を見る限りでは、コットンソフトの中では今のところ最も評価を得ている作品でもあります。 初回限定版には、コットンソフトのマスコットがあしらわれたハンカチと、主題歌・ミニドラマとシステムボイス・壁紙・CMムービーが入ったエクストラCDが付属します。CDの入れ物が結構豪華です。 主人公4人体制 ■シナリオ 都市伝説と思われた「首刈り女」に出会ったことから、隠されていた死者蘇生の秘術にかかわることになり、ヒロイン共々トラブルに巻き込まれてゆくストーリー。この首刈り女がストーリーの鍵を握っており、首刈り女の行動はどのルートでも基本的に変わりません。 本作は全3章で構成されています。3章と言っても、話に前後があるのではなく、それぞれの章で主人公が変わるのです。その中で1章は主人公が2人いるので、合計4人の主人公がいることになります。主人公に応じた回想シーンを挟むことにはなりますが、それ以外の時間軸は同じです。勿論、ヒロインは首刈り女とは別に用意されており、個別エンディングがありますが、これらのヒロインが首刈り女の行動に影響を及ぼすわけではありません。あくまでメインストリームは首刈り女であり、他ヒロインのルートはサブエピソードに過ぎないのです。つまり、ストーリーは彼女を中心に回っているのであり、本編は「首刈り女の行動を4つの視点から眺める」構成になっているのです。 問題は、これらの視点こそ違えど、明かされる情報量が同じである点です。最初の1周でほとんどの謎が解けてしまうため、2周目以降がひどくつまらなくないものになっているのです。ヒロインのルートや主人公の違いによって、解ける謎を分散させておけば、もっと面白いものになったはずなだけに、勿体無いところです。 ■キャラクター ねこねこソフトの絵……というのが一番分かりやすいでしょうか。嫌味のない万人向けの絵で、姿勢や等身などにも狂いは見られません。大抵のプレイヤーは抵抗なく見られるはず。 血縁関係や過去がストーリーに深く関わっており、経歴・設定は意義のあるものになっています。特に主人公のひとり「槙野慶吾」は、親子3代に亘って関係するキャラが登場するので、よくよく整理しながら進めていく必要があります。性格は、強味と弱味がシナリオ後半のクライマックスで逆転するのが見所です。普段強気のヒロインが、終盤で弱さを見せつけ、逆に普段ぼんやりしているヒロインが後半でしっかり者に変わるのです。 ■テキスト 主人公4人体制ですので、それぞれの主人公のバックグラウンドに応じてテキストの雰囲気が変わってきます。また、説明的なシーンが多く、大抵人から聞かされる形になります。こうした場面では、感情を抜きにして事実だけが述べられることが多く、出来るだけ分かりやすくするような努力が伺えます。 ■演出 オープニングムービーは神月社氏。水面が揺らいだり、砂塵が舞ったりと綺麗なんですが、その他はイベントCGを繋ぎ合わせてキャラクターの人物紹介に終始しているだけです。歌と曲のカット割りがバッチリなんですが、CGを見せまくるだけで風情が無いのが残念です。 効果音はポイントが高いです。流れる「音」で舞台を判断させるなど、音の要素が絡むことが多いのですが、そこをテキストだけではなく、実際に効果音を流しているところが評価出来ます。例えば、信号機の音や、キーアイテムである風によって回る糸車の、カラカラと回る音は、中々良い味を出しています。 画面効果では、雨が降ったり、炎が揺らめく演出があります。その他、シナリオの展開によって起こる事故や破壊行為により、背景の絵も変わる点は、手抜きがなく良かったと思います。 ■ゲーム性 全3章構成。第1章では主人公が2人おり、途中で何度か切り替え画面が出て、どちらのルートを進めるか決めます。これと他にも出る選択肢によって途中でどちらのルートに入るかが最終的に決まります。主人公によって攻略出来るヒロインが決まっているので、ストーキングしたヒロインを攻略出来る方に決まるのです。選択肢自体は簡単で、攻略に手間取ることはないでしょう。全員のエンディングを見ると、第2、第3章が現れ、それぞれ別の主人公のルートが現れます。この新主人公はそれぞれ攻略出来るヒロインが1人しかおらず、読み進めるだけです。つまり主人公は4人いますが、結局それぞれ同じヒロインを攻略出来るわけではなく、ヒロインの数しかルートが存在しないということになります。 独自設定として「年表」というシステムがあります。ここにはゲーム中の出来事が記されていき、途中に「サブエピソード」が現れ、クリックすると本編中で語られなかった話を楽しむことが出来ます。 ■Hシーン 第2章のヒロインを除き、各キャラ1回ずつ。主人公の娘であるもみじのHシーンは存在しません。第1章のヒロインは、とある状況から人間性を失っていくことになりますが、人間性を保てる間に最後のHをしよう……というパターンが多いです。2章・3章はまったく別パターンです。2章以外は短くて声優が力を発揮出来る場面が少なく、実用性はありません。 ■グラフィック 背景はかなり綺麗です。特に距離的に近くにあるものはしっかり描かれており、影や汚れ、映りこみなどにも気が使われています。比較的、輪郭のはっきりした人口的な物が多いです。逆に遠くのものはそこそこ見られるレベルに落ち着いています。 立ち絵は基本的に各キャラ1枚。手と表情が変わることで変化を演出しています。手は3パターン前後、表情は6〜7パターンほど。 イベントCGは差分抜きで78枚。7割方、キスしたりHしたり抱き合ったりといったラブシーンです。残念ながら印象的な絵はありません。絵は綺麗ですが、構図は無難なものばかりです。もっと動きのある構図が欲しかったです。
死者復活の儀式を通して、死生観を表現しようとしているゲーム。 本編ラストシーンの「魂は心の中に生きる」というコメントから、死者復活は否定されたように思えなくもありません。しかし、私はこの言葉だけでは否定には弱い気がします。何故なら、このコメントは生きている人間が一方的に主張しているだけだからです。復活した人間側から復活について否定的なコメントがあれば説得力があるのですが、それはなかったのです。ということは、実はこのゲームは復活の是非については明言していないと考えた方が良いでしょう。 それどころか本編中でクローズアップされたのは、何かを取り戻すためなら人間何だってやるんだという狂気の場面だったように思います。トラブルを巻き起こす敵役だけでなく、ヒロイン達まで敵に勝るとも劣らない狂気を見せています。死者復活の儀式――これが狂気の沙汰であったとしても、その望みが叶うとすれば、それは時代を問わず実行されるでしょう。それについては、本編でも肯定されていることです。そして、その「狂気」こそが、脈々と受け継がれていくのです。魂という形をとって人の心の中で……。 |