世界ノ全テ -remind of you-
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本作は、同年4月に発売された「世界ノ全テ」にシナリオと音楽と男性ボイスを加え、背景をオールリファインして発売されたゲームです。内容は追加前の「世界ノ全テ」と、世界ノ全テの続編にあたる追加シナリオ「remind of you」の二つで構成されています。DVDですが、この内容で価格は6800円と大変お手頃となっています。ちなみに私は「世界ノ全テ -remind of you-」で初めて「世界ノ全テ」に触れています。前作は持っていないと言うことです。 このゲームの特徴の一つとして、登場人物が全員関西弁を話すというものがあります。全員が関西弁で話すゲームなんて始めてでは無いでしょうか。これまで関西弁で話すキャラクターが登場するゲームは何本も出ていますが、それはキャラクターの特徴づけのためだけの言わばアクセサリーであり話し方も不自然でした。しかし、本作で関西弁はアクセサリーではなく日常の言葉として何の違和感も無く扱われています。肝心な話し方もバッチリです。大阪にいた私から見ても、方便が方々で使われていて関西弁クオリティーそのもの(優しい感じなので京都弁に近いですね)。関西に住む方にとっては嬉しいゲームとなったのではないでしょうか。 そんな世界ノ全テですが、隠れた名作との声が高いゲームです。何だか途轍もない秘密が隠されていそうなタイトルと極普通に進んでいく学園生活が語りかける世界ノ全テの真実とは? 若さが生み出す繊細な心理描写 このゲームをプレイするにあたって、私は取り返しのつかないミスを犯しています。メインヒロインである智子の攻略を一番最後に回してしまったのです。智子にはとある秘密が隠されているのですが、秘密が各ヒロインの分岐に入る前に共通ルートで明かされてしまうのです。ファーストプレイの共通ルートで驚いた後に智子編に入れば感動も一入なのですが、他のヒロインを攻略するたびに何度も共通ルートの秘密を明かすシーンを見て、最後に智子編に突入したところで感動は半分です。美味いステーキだって4枚も5枚も食べれば飽きると言うものです。本作の弱点がまさにここ。攻略順を誤ると一気に面白さが激減する点です。ですから、これから本作をプレイしようという方は最初に智子を攻略することをお勧めします。 このゲームの内容ですが、昔住んでいた街に引越してきた閉鎖的な性格をした転校生の主人公宮本浩が、友達や部活の仲間を通じて人と関わる楽しさを知りながら、自分と言うものを人にアピールしていく成長物語となっています。本作の魅力はヒロインとの恋愛よりもむしろここ――主人公の成長過程――にあります。優秀な兄と比べて学力的に劣る自分を卑下して自己嫌悪に陥りつつも、全てを自分の所為には出来ずに他人に責任を転嫁しつつ、どこかでそんな自分を受け入れてくれる人間を探し続けるがクラスに馴染めずに孤立する。そしてそんな自分を卑下して自己嫌悪する……この悪循環を繰り返す救い難い典型的な駄目主人公の人間臭さと、彼が仲間を見つけて前向きに成長していく際の繊細な感情描写に対する私の感情移入といったらありませんでしたね! そうだよこれ俺そのものだよ!(笑) まあ私の場合、兄や姉がいるわけではありませんし、何よりも未だに成長していないと言う点でどうしようもないものがありますが(笑) ……とまあ、そんな冗談は置いておきまして。 とにかく人の感情の表現がこれほどまでに繊細に描かれていて且つ同感させられるゲームは中々無いです。ただし、主人公の心理描写に納得出来るかどうかはプレイヤーがどんな青春時代を送ってきたかに大きく左右される気がする。例えば、入学してすぐに入ったテニス部でバリバリのスポーツライフを過ごしていたり、話し上手でいつも周りに人が集まってきていたり、バレンタイデーにはいつもトラック3台分のチョコレートを貰っていたりした人達は、あまり共感出来ない内容だと思いますし、ましてやどこかで挫折した経験が一度も無い人にはこのゲームで繰り広げられる成長劇を絶対に共感出来ないと思う。と言うよりもして欲しくない。 それ程微妙な若さ故の揺れ動く心を描いた物語ですよこれは。 キャラクターと絵。 ヒロインたちの絵は可愛いですが、塗りが全体的に微妙に重たい感じがして地味目です。どのキャラも現実にいそうな極普通の性格。一方男キャラが良い味を出してます。サブキャラを大切にしているゲームには好感をもてますが、このゲームは男キャラたちがいなければ成り立たないでしょうね。また先述の通り、全員関西弁を話します。 背景は普通の出来。電車に乗ると窓の外が動く演出効果があって意外とこういうところにも気を使っているんだなあ、と。 Hシーンは薄いです。純愛ものですからこんなものかと。ですが、一部陵辱シーンがあったりしますので注意。
実はここに書くことを迷っています(汗) いつも最後の欄では対象ゲームの語りたかったであろう本質を私なりに明らかにしていくわけですが、本作ではこのゲームの言いたかったことをきっちり明文化しているんですよ。しかもそれがタイトルとバッチリ合うものだから最早私が語るべきことなんて無いわけです。 思えば、本作のタイトルは何て大袈裟なんだろうと。「世界ノ全テ」ですよ? 私が本作を購入した時、世界の全てを表現しようだなんて一体このゲームはどんなゲームなんだと思いましたよ。どんな奇想天外なストーリーが繰り広げられるんだろうかとドキドキしました。地球が出来上がった46億年前にタイムスリップするような物語なのか、人類創造の謎に迫るアカデミックな作品なのか、はたまた神話世界に飛んで謎の敵キャラと戦うことになるファンタジックアドベンチャーなのかと。しかし、私の予想はそれこそ予想だにしなかった形で外れました。何故ならこのゲームが扱う「世界」とはそんな大掛かりなものではなく、主人公と登場キャラクターで完結する恐ろしく小さなものだったのですから。 それでもプレイ後に納得出来てしまうのは何故なのでしょうか。それは、人と人との繋がりという見えないものが途轍もないパワーを持っているからではないでしょうか。それは時として人をどこまでも突き動かし、時としてどんな勢いを持つものや巨大な圧力をも跳ね返す力を秘めています。そして、愛すると誓った人との繋がりは「世界の全て」に匹敵するほどのパワーを持っているのです。彼と彼女の繋がりは、形ある物では為し得ないことすら達成する力を持っているのですから。 世界ノ全テ。 それはとても愚かしく……そしてとても美しい愛の形なのです。 |