雫 リニューアル
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現在、この業界はLeafという会社抜きには語り得ないでしょうね。少なくとも私にとってLeafという会社の持つ意味は大きいです。 良くも悪くも話題には事欠かないこの会社の、原点とも言うべきゲーム。それが本 作の原作である「雫」です。 雫から始まるリーフビジュアルノベルというジャンルは、ADGにおける新世界を 確立し、今尚伝承され多くのプレイヤーを魅了し多くの信者を生み出し続けています。 そんな歴史を物語る原点の一つである雫がリニューアルされました。どこまで原作の雰 囲気を損ねることなく再現できたのか。また、原作から本作が発売されるまでの約8 年間、どれだけの成長を表すことが出来たのか。 得てして批判を受けることが強いリニューアル版。今では当時のスタッフの多くが Leafを去っています。 原画も変わりフルボイス化して発売されたリニューアル版雫。ムービー、教室の扉が開く時のバイオハザードチックな動作、バトル時のRPG級の演出などなど様々な演出を加え、本作は時代の流れを感じさせると共によりいっそうの緊迫感を付加して再降臨しました。そんな雫の世界を原作を交えて批評していくこと としましょう。 圧倒的な存在感が語る狂気 アリスソフトとエルフという二大勢力が断固たる地位を占めた当時、一体本作の何 がユーザーの支持を集める要因となったのでしょう。斬新なシステムを使い、音楽も 良かった原作ですが、やはり注目を受けたのはそのシナリオではないでしょうか。 それることなく狂気という世界を描いたシナリオは、ストレートにプレイヤーに衝 撃を与えるものでした。有り得ない能力を使い、様々な造語が飛び交う様は、その部 分だけ一見すると単なるバカゲーで終わりかねません。そんな雫という世界をまとめあ げたプレイヤーを画面から離さない秀逸なテキストは、今読んでも納得のいく素晴 らしい出来。テキストがシナリオをしっかりサポートしているからこそなせるわざ と言えます。また設定をプレイヤーに受け入れさせるだけの、正ヒロインである月島瑠 璃子というキャラクターの存在感が光っています。 名言です。 月島瑠璃子というキャラクターの存在感は圧倒的ではあったし、EDの有り方も納 得のいくものであったのに対し、他のキャラクターはどうだったでしょうか。藍原瑞穂 は太田香奈子という存在がある以上、必要な存在となりえました。新城沙織は雫という世 界の中では最も一般性を備えたキャラであり、現実味を持たせるためには必要だった のでしょう。ですが、二人とも今一つEDが在り来たり過ぎるというか、インパクトの無 い淡白な終わり方となっています。また、叔父である長瀬教諭は殆どストーリーには絡 んできません(その割にはやけにインパクトの強い人物ですが)。 ですがしかし、このゲームにはヒロインを超える存在感を放つ存在がいたのです……。
そのキャラクターとは電波会長月島拓也に他ありません。 彼の異常性、非現実性と、何よりも彼の放つ「狂気」が、このゲームの本質と言え るのではないでしょうか。 制作者は雫というゲームにおいて、ハッピーエンドとバッドエンドの他に、トゥル ーエンドというEDを用意しています。トゥルーエンド……それは真実のED。制作者 の意図したゲームの本質が語られるEDです。そして雫における真実とは、瑞穂編 や沙織編のラストで語られる恋物語はないですし、瑠璃子編のハッピーエンドで語られる それでもありません。 真実とは、瑠璃子編トゥルーエンドで語られる月島拓也と月島瑠璃子、二人のその 後の狂気の世界。狂気の扉を開いてしまった人間のもう一つの世界。そこにこそ雫の 本質が見出せるのです。雫とは月島拓也と月島瑠璃子の二人のために存在する世界と言って も良いでしょう。 人間の本能が歪んだ結果を顕著に表した雫。 狂気の世界に触れたことの無い方は、Leafの原点である本作をプレイしてみる と良いのではないでしょうか。そして雫という世界に存在する真実を見つけてほしいと思います。リニューアル されましたが、その「本質」は失われていないままだったのですから。 |