水夏
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さて、今回の批評はサーカス往年の名作水夏を取り上げます。 多くのPCゲームユーザーの注目を集め、サーカスというメーカーのポジションを固 めた一作、水夏。ダ・カーポの現在の地位はこの水夏が無ければ無かったことでしょう。 水夏は全4章からなるゲーム形式をとり、1〜3章はサウンドノベル形式で4章は通 常のADG形式をとっています。本作で主人公のポジションが与えられているのは4章で プレイヤーが操るキャラだけであることから、4章は1〜3章のまとめ的な位置づけと なると言えます。果たしてサウンドノベル形式との使い分けがどこまで効果を持ったのか は疑問ですが、4章のみ通常のADG形式をとったのもこのためではないでしょうか。 ただ、このシナリオ形式をとったことにより、どのヒロインから攻略するといった選 択は出来ず、一本道的なストーリーが展開されることとなってしまったところが、良く も悪くもこの水夏の特徴です。一本道であることにより、シナリオがグッドエンド、バッ ドエンドのいずれで終わったかが4章終了まで分からないため、ある程度まとまった時 間のある時にプレイしたいところ。また、グッドエンドは二つあるのですが、この 二つのグッドエンドを見ることによりアフターストーリー的なものが用意されています。 裏寂れた村で巻き起こる夏の物語はプレイヤーに一体何を語りかけたのでしょうか。 光る意外性の演出 見目に可愛いヒロインたちと綺麗なグラフィック、そして演技派声優陣を使った水夏 ですが、水夏は萌えを全面に打ち出したキャラゲーではありません。立派な、シナリオで売りに出たゲームです。 水夏の面白さは、各章で展開されるあっと驚く逆転劇です。プレイヤーが思いも寄 らなかった「意外性」がポイントとなるのであります。そのために本作には多数のギミック が用意されています。その一つが1〜3章でのプレイヤー操る男性キャラとヒロインとの 視点の切り替わり。これによりプレイヤーがキャラに対して持つ情報量を限定し、あ っと驚くラストを演出することを可能にしているのです。プレイヤーに違和感を与え ないように上手く視点を切り替えていく技量には、正直なところかなり感心するものが ありました。さほどテキストは上手いとは言えず、サウンドノベル形式をわざわざとった意 味があったのかと問いたくなる1〜3章ですが、その点は賞賛に値します。あるいは サウンドノベル形式をとったのはどこか謎めいた雰囲気作りのためである、と解釈する ならば納得いきますね(^^; 意外性からプレイヤーを常盤村に誘い込むことに成功した水夏。4章はきっちりとま とめあげることに成功したのでしょうか?
通常のADG形式の4章。前述ではまとめ的な位置にあるとした4章ですが、実際のと ころはあまり1〜3章を生かしきったストーリーは展開されていなかったりします。そし てやや分かりづらく説明不足的な印象を受けることもしばしば。1〜3章ではラスト にプレイヤーを驚かせた水夏ですが、そこではやや説明不足的なところがあっても最後で 謎は明かされたし、だからこそ「意外性」のあるシナリオであると評価できたのですが、 4章ではその意外性を演出した視点切り替えが無いために、プレイヤーの想像力に任せ きってしまう点がかなり多く感じました。そして4章に絡んでくる非常に重要なキャラであ る妹のちとせにボイスが無いことは残念で仕方が無いです……(例によってアルキメデスの忘れ物には実装というサーカス商法なんですがね)。登場回数が多いにもかかわらず そこだけボイスが無いというシーンの数々ではかなり違和感を感じてしまいました。 思うに、1〜3章が意外性で勝負したのに対し4章は感動劇で勝負した感がありました。感 動劇の演出のために、それまで不足しがちだった恋愛要素と萌え要素を組み込み、一気 に畳み掛ける戦術。なるほど、確かに萌え要素は受け取ったし感動も多少はありました。 ですが、やや説明不足過ぎやしないか、というのが印象。 水夏は面白かった。ですが、贅沢を言えば4章にもう少し1〜3章との関連を持たせて も良かったのではないでしょうか。若干ゲーム性が足りない気も。 それでも面白いのは事実。システム面に大きな不満は残るも、シナリオ重視な諸兄に は是非ともお勧めな一本。 え? システムに文句言ってるのは私だけですか?(汗) |