車輪の国 向日葵の少女
第一回
「車輪の国 向日葵の少女」は2005年発売ですから4年近く前のゲームということになります。
評判が良いようなのでずっとプレイしたいと思っていたのですが、今まで不思議とゲーム屋で姿を見かけることはありませんでした。
プレミア品ではないので、巡り合わせが悪かっただけなのですが、先日、通常版の新品をようやく見つけることが出来たのでプレイ記を付けることにします。
少し前のゲームであり、アマガミもまだ終わっていない状況ですから、更新はゆっくり行う予定です。
説明書には空き容量3GB以上必要と書いてありますが、公式サイトを見ると500Mになってます。しかし、実際には1.32GB。なんだこりゃ。
アプリケーションを始動すると、メーカーロゴが出てきて、いきなり若本規夫が野太い声で「あかべぇそふとつぅ」と叫び爆笑。
この人、どこにでも出てるなぁ。そして何を喋らせても面白いなあ。
短いプロローグの後、ムービーが始まります。
イベントCGを使いながらヒロインを紹介する構成ですが、モノクロ線画を合間に散りばめているのが印象的です。
それにしてもこのゲーム、プロローグからして只者じゃない雰囲気が滲み出ています。
ギャグっぽい導入なんですが、途中からそのギャグがギャグではないことが分かり始めてさあ大変。
人は死ぬわ、見知らぬはずの犯罪者は実は幼なじみだわ、教官は若本規夫だわ……。
「特別高等官」なる犯罪者を監視する職業に就くための試験を行う、街ひとつを使った合宿場が舞台になるようですが、この先何が待っているのでしょうか。
第二回
ロイエンタールの……大馬鹿野郎ーっ!?
一体何なんだ!? この法月とかいうオッサンは。
ゲーム開始早々、このゲームの異常な世界観に頭痛がしてきましたよ。
人間、あまりに価値観が違い過ぎるものに遭遇すると、怒りと恐怖からそれを排斥したくなるわけで。私も思わずAlt+F4を押しちまいました。
久々にゲームで気分が悪くなる光景を見てしまいました。こういう暴挙がまかり通る世界には住みたくないものです。
テンション下がったけれど、とりあえずヒロインファーストインプレッション。
◆日向夏咲……ぼんやり天然系幼なじみ
説明書で最初に紹介されるに相応しい端正な容姿ながら、性格は超内気で対人恐怖症。この手の性格で正ヒロインって珍しいですね。
幼なじみらしいのですが、夏咲自身が主人公を幼なじみと認識していないのでまったく設定の意味がありません。
幼なじみってのは、互いのことをよく知っているのが武器だというのに……。まあ、今後何かあることは間違いないでしょう。
そして夏咲に課せられた罰は「異性との接触禁止」。
あのー、私にとってそれ、当たり前のことなんですが。
◆三ツ廣さち……ポニテ赤髪元気っ子
元気を体現しているような外見で、やっぱり元気っ子。
超サバサバしていて馬鹿っぽいのに、実は頭が良いという不思議な女の子です。
どうもこの子とも幼なじみらしいのですが、やっぱりそれを認識されていないようです。
主人公、影薄すぎです。
さちに課せられた罰は「1日12時間しか活動できない」。
睡眠も含めて1日12時間とは……これ、滅茶苦茶きついですな……。
◆大音灯火……ツンデレ委員長
キーキー五月蝿い説教系のくせにわがままという、しょーもない委員長です。
かなり存在感がありそうなんですが、時々見せる寂しげな表情の方が印象的で、儚い感じがしてしまうのは私だけでしょうか。
灯火に課せられた罰は「親権者の命令に服従」。
親が教育ママなだけにきつそうな気もしますが、学生は学業が本分なわけですから別に良いんじゃないでしょうか。
以上。攻略出来そうなヒロインが3人とかなり少ないです。
その分、濃密なシナリオを期待しておきましょう。
今回はかなり本気モード。一周目からメインヒロインの夏咲を攻略する方向でいきます。
それにしても、主人公がプレイヤーに対して「あんた」とか話しかけてくるのは何とかなりませんかねー。
昔はよくありましたが、主人公に感情移入できないんですよね。
第三回
卯月セピア……こいつ只者じゃない。
普段は名前もおかしけりゃ言動もおかしい飛んだ狂人。しかしそれは世を忍ぶ仮の姿なのだ!って奴ですな。
夏咲を攻略しようと思ってたんですが、どうやらシナリオが一本道っぽい感じです。
さち→灯火→夏咲の順で強制的に進めさせられる模様。
ということで現在さち編進行中なんですが、退屈しないですねー。
素直に面白いと言えない辺り、私も最近ツンデレですねー。
まあ、ともかくセピアが超良い味出してるってことは確かです。
この男、密かに罪人じゃないしヒロインの指示も厚いし、何かと侮れません。
洞窟での一言にはしびれましたよ。振動パックでしびれちゃうとは正にこのこと。
「サブキャラの使い方が上手いゲーム=良作」というのは鉄則なので、今後にも期待できそうですね。
……あれ。一本道と思ってたら分岐発生?
え、何? もしかしてこの状況で寸止めっすか?
もしかして、これが私に課せられた罰って奴ですか!?
もー、勘弁してくれよー! お風呂って最高に好きなシチュエーションだってのにー!
主人公もいきなり真面目君になってないで少しは橘純一を見習ってくれよ!(怒)
※橘純一についてはアマガミプレイ記を参照
根っこは真面目な主人公に若干の好感と大いなる怒りを覚えながら次回へ続く。
第四回
な、何なんだ、この打算のない笑顔はっ!?
こんなにも美しい姉妹愛があるなんて、世の中間違ってる!?<何かあったらしい
しっかしこのゲームの設定は上手いというかズルいというか……。
日本をSF小説に出るフィクション世界としておきながら、ほとんど日本と変わらない文明レベルと構成員。
ところがそこは、日本とは真逆の刑法「特別高等法」が支配する世界なのです。
法律ってのは一種の権威と価値観の象徴みたいなもので、これを見せ付けられるというのは、どうにも気分が良くありません。
狭量なようですが、守ってきた価値観に挑戦されているような気分になるわけですよ。
敢えて舞台を「日本ではない」としているところも当て付けのようです。
その一方で、この法律に反対している人々もいるわけで……。
悔しいのは、そんな世界の中でプレイヤーが第三者的視点を強要されることです。
どんなに腹立たしい法律でも、プレイヤーは「あんた」と呼ばれ主人公になりきることが出来ずに眺める他ないのです。
煽りに煽っておいてこの何とも言えない疎外感を味あわされる屈辱と言ったらありません。
しかしながら話は本当に面白いのだから困ったもので、仕舞いには「いつになったら俺は話に参加出来るんだ!」という焦燥感をもページを捲らせる原動力にしてしまうのですから、大した構成力だと思います。
果たして、まなはどうなるのか! 次回、さち編終了予定。
第五回
さち編・灯火編クリアー。
面白かったので、プレイ記を放置して進行させてしまいました。
さち編……そんなのアリかよ(泣)ってくらい清らかな終わり方でした。
普段、只のハッピーエンドなんてつまらねーとか言ってる私ですが、今回ばかりは上に絆されて途中からお約束を願ってしまいました。
そして、傍若無人の法月が何もせずに帰っていった時は、上手くいったと胸を撫で下ろしました。
それなのに、あんなラストシーンが用意されているとは……。思わず「エッ」とか叫んでしまいましたよ。
さちもまなも本当に頑固で。それでいて本当に真剣に頑張っていたので。
でも、そんな二人だからこそ、あんな結末でも「ハッピーエンド」に変えてしまえるんでしょうね。
新感覚のエンディングでした。
続いて灯火編………こっちは大したことありませんでした。
ひたすら灯火がオロオロしている姿が描写されるばかりで、テキストの7割近くは無意味だったような気がします。
シナリオもかなりお約束な内容。急進派とミスターコンサバに挟まれて「どうすんのよ俺!?」って奴を想像してもらえば良いでしょう(謎)
それと、磯野が面白すぎる件。
私がギャルゲーで出会ってきた爆笑サブキャラのトップを長らく守っているのは、同級生2の長岡芳樹であります(もう誰も知らないかも……)。
芳樹とかなり路線は違いますが、磯野も良い線行きそうです。間違いなく、トップ10には入ります。
ただ、こいつは芳樹とは違った意味でキーパーソンっぽいのよね。その意味でも、今後にまだまだ期待が持てそうそうです。
次回、夏咲編。
第六回
夏咲編クリアー。
何なんだろう。このゲームを進める度に嫌な思いばかりが蓄積されていきます。
夏咲編は、言ってみれば理不尽の塊のようなシナリオです。
そりゃねぇ……働いてれば無数の理不尽に遭遇するわけで、日々が矛盾との戦いですよ。
でも、それって給料を得るためだから我慢できるわけで……。
仕事以外でそんな目に遭ってる人を見れば、やはり感情のある人間ですから同情もすれば怒りも覚えます。
そんな同情と怒りを誘うのが夏咲編。
五章との幕間の時点で書いてるわけですが、全然問題が解決してません。
一体どうなるんだこの話。そしてこのやり場のない怒りをどう処理してくれるんだこのゲーム。
第七回
な、なんだってぇええっ!?
あんたがあんたで、俺は俺で……
やられた……完膚なきまでに俺の負けです。
今まで第三者としてゲームを観察してきたけど、たった今から俺は樋口健として生きていきます。
あー、久々に思いっ切り騙された。あまりの衝撃にこれまでの鬱憤が全部吹き飛びましたよ。
これだからエロゲーはやめられません。
第八回
第五章クリアー。
章構成で一本道かと思いきや、エンディングリストがあって一個しか埋まっていないところをみると個別エンドがあるようですね。
今回の周回はハーレムエンドだったらしく、最後に写真撮ってメデタシメデタシという大団円の結末でした。
それにしても、最後の最後までピンチの連続で心臓に悪いことこの上ありません。
これだけ緊張感を持続させられるギャルゲーも珍しいですよ。
テキストは平凡なのにグイグイ引きこまれるものがあるんですよねー。
テンポが良くてストーリー組立が上手いからですかね。ライターさん、結構優秀です。
それに、麻薬の一件でこれまであまり好きになれなかった主人公の株がグッと上がったので、後味もスッキリ。
期待通りの「良作」認定を与えることが出来そうです。
気になったのは最後までHシーンがなかったことでしょうか。
これ、本当にエロゲー?(汗) ハーレムならハーレムらしい奴を用意しておいても良いのに……。
まあ、Hシーン回想が綺麗に空いてるところを見ると、個別エンドでしっかりやってくれるんでしょう。
これから個別ルートを攻略すべくリスタートしますが、シナリオとしては大きな変化は望めないので、以後は各エンディングを迎えてから書くことになりそうです。
最終回
コンプリート。
予想通り、ヒロインによって結末が大きく変わるわけではなかったので、これでプレイ記は終わりとします。
ハーレムエンドとの違いはHシーンの有無とエピローグだけでした。
それでは総評に移りましょう。
総評。
良い意味でプレイヤーを躍らせるゲームでした。
世界観すべてを使ってプレイヤーをトリックに引っ掛けてきます。
第5章のあの瞬間のためだけにこれまではあったのではないかと思うくらいに。
あのトリックを見た瞬間、プレイヤーはきっとこのゲームに対する態度が変わると思います。
すべてが他人事でなくなるんです。
考えてみれば、この世界の人物と境遇はプレイヤーに近いようで実はあまりに遠いもの。
そんな状況と主人公の言動が主観性を排除し、やがてプレイヤーは客観性でストーリーを捉え始めます。
それが頂点に達した4章でゲームに対する関心が薄れ「どうせ自分とは関係ないし……」という感情が生まれるのは止むを得ますまい。
しかし、そんな無関心状態の生成こそが本作最大の味噌だったのです。
第5章で主人公と自分(プレイヤー)が初めて一体化した瞬間「ヤラレタ!」と思わずにはいられませんでした。
そしてその時、私は気付いたのです。
このゲームのテーマ……それは無関心主義へのアンチテーゼなのだと。
共通ルートが長すぎる上、個別ルートの存在意義がないなど、欠点は多いゲームです。
しかし、優れた世界観を利用した巧妙な罠は、それを補って余りあります。
噂に違わぬ良作でしたので、買って損をすることはないでしょう。オススメ。
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