ヤミと帽子と本の旅人
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ヤミと帽子と本の旅人。 タイトルが独特で長い本作は、人気原画家CARNELIAN氏を迎えて作成された ファンタジー調な物語です。その美麗なキャラクター群は、タイトル画面からも凄ま じいオーラを放っています。丁寧なグラフィックにも注目したですね。 ですが、本作はそんなキャラクター群に重きを置いたキャラゲーでは無いと見て良いかと。 どちらかと言うとシナリオ重視型のゲームでしょう。音響の項で述べた通り、本作はゲー ム中でBGMをほとんど使用せず、効果音で世界観を際立たせています。シナリオに自信 がないと出来ないことです。ごまかしがきかないからです。そこまでして、表したかっ た世界観とは何か? そしてそれはユーザーをうならせることの出来るものと成り得た のか? どちらにしろ、超のつくほどの美麗キャラクター群は、シナリオとマッチすれば凄ま じい効果を発揮するに違いありません。 暴走するシナリオにどこまで付き合いきれるのか さて、そのシナリオですが、ある日、一人の愛する女性が突然異空間に消えてしま いそれを主人公が探し回る物語、というもの。探し回る舞台が少々特異である「本の世 界」ということになります。 この様に概要のみを書くと恐ろしく単純ですが、実際の本作のストーリーは非常に 理解するのが困難でした。基本的に主人公の視点のみで語られる本作は、比較的、主人 公とプレイヤーの情報所持量が同じです。回想するところではきっちりと回想シーン をいれ、プレイヤーと主人公がシンクロするような構成でつくられています。テキストも 自然であり、感情移入は出来るタイプのゲームでした。 しかし、本作はプレイヤーを置き去りにしてしまったゲームということも言えます。主人公とプレイ ヤーの情報量が同じであるところまでは良かったのですが、問題はその他の登場人物のあ り方にありました。何の説明も無く、次々と脈絡無い会話を始めるキャラクターたち。それ に混乱する主人公。そしてさらに混乱するプレイヤー。本作のマイナスポイントは説明 不足の一言に尽きます。各キャラがいきなりよくわからない単語を発したかと思うと、そ れが結構重要な単語であったりして、しかも最後まで説明が為されないものもあったり するのです。これは独自の世界観を打ち出す形をとったゲームにおいて非常に残念としか 言いようがありません。 ライターのみが分かるシナリオをつくっても駄目なのです。
難解なシナリオに変わって、キャラクターたちは非常に魅力溢れていました。CARNE LIAN氏の画力も多分な影響を与えていますが、何よりも個性があり、各キャラが実に たっていたと言えます。皆が独自の世界の中でも違和感の無い存在感を発していました。こ の点は本作の最も成功した点でありましょう。 キャラゲーでは無く、シナリオを特化したはずであるヤミと帽子と本の旅人。しかし、 目立ったのはむしろキャラクターの個性でした。それはシナリオがあまりにも説明不足 であり、ライターの自己満足に終わっているからです。 おそらくプレイヤーは一周目は良く分からないままゲームを終了することでしょう。二周目以降で世界観を理 解し、ゲームに入っていけるかもしれません。いずれにしても、シナリオを理解すること が出来なければ、本作の良さは永遠に分からないままです。そしてそれはプレイヤ ーの責任ではありません。理解に苦しむ設定を生み出したライターの責任ですね。本作がパワ ーを発揮することが出来るかはプレイヤーの忍耐力次第。その意味で、本作は人を選ぶ ゲームとなってしまったのです。 |