劉 海臻伝

第一幕  胡弓弾き

 嫌な風が吹いてきた。

 女はそう呟いた。そしてもう一度、イヤな風・・・。と呟いた。

 時は漢末期。各地で戦乱が相次ぎ、上庸では黄巾族という集団が蜂起したと噂されている

 そんな時代。

 女は暫く天上の月を見上げていたが、やがてため息を一つつき

 傍らにあった胡弓を手にすると、ゆっくりと曲を奏で始めた。

 女の名は劉 海臻。北海に生まれ南皮へと流れ着いた胡弓弾きであった。

 その器量と音楽の才能を買われて、土地の名士の養女となった。

 だがその事に関して海臻自身はなんの感慨も抱いては居ない。

 たまたま流行病が起こり、たまたま両親が死に。何も才能のない自分がただ唯一

 売ることの出来た胡弓弾きとしての才能だけを武器に流れ歩き、その結果が今の形であるだけだと

 彼女自身は考えるようにしていた。

 元来感受性が強く、やや悲観的な考え方をする彼女にとっては、そうサラリと流すことが

 自分の心を護るための術であった。

 「何か・・イヤなことが起こりそうな予感・・・・・。」

 弾いていた胡弓を途中で止めて、海臻は呟いた。そうしてもう一度月を見上げる。

 月は薄もやの中にその姿を隠していた・・・・・・。



  NEXT  /  TOP




楽天モバイル[UNLIMITが今なら1円] ECナビでポインと Yahoo 楽天 LINEがデータ消費ゼロで月額500円〜!


無料ホームページ 無料のクレジットカード 海外格安航空券 解約手数料0円【あしたでんき】 海外旅行保険が無料! 海外ホテル