これでよかったんだと、何度自分に言い聞かせても残る気持ち。
明日になれば忘れてる。
なんて都合のいい事がおこってくれればいいのに。












    華〜もういいよ〜













「跡部くん、きいてる?」
「あ、わりぃ。なんだ」
「…ううん。なんでもないの。」





そう言って、口をマフラーで隠すように少し俯く。
冬真っ只中の2月。
俺の部活を終わるのを待っているを、本当は車で送ってしまいたいのに、
こいつが『歩きの方が好きだから。』という理由で、歩いてこいつを家まで送っている。
空はもう真っ暗で、電灯の明かりだけが俺達を照らす。
無言のまま歩く。
少し気まずい思い。
あいつとは…となら、こんな沈黙も気まずいとは思わなかった。
むしろ心地よいぐらいだった。
楽だったんだ。あいつの隣は……。






「部活…大変そうだね。」
「あぁ。」
「…最近になってからだよね。こんなに遅くまで練習するようになったの。」
「そう、か?」
「うん。…何か、あったの?って、もしかしてあたしの、せいかな?」
「別に。お前のせいなんかじゃねぇよ。…気にするな。」





『気にするな』
自分にむけて言った言葉か。
このまま、自分の気持ちに嘘をつき続けて、こいつが隣にいる生活をおくっていくのだろうか…。





「跡部くん。」
「あ?」
「もうすぐ、約束の期限だね。」
「約束の期限?」
「もしかして、忘れてる?あたしが、言った事。」
「…わりぃ。覚えてねぇ。」
「あたしさ、跡部くんに、期限付きでいいから付合ってって、
言ったんだよ。それまでに、あたしの事好きになってくれてたら、そのまま付合ってもらおうと思ってたんだけど…。」






そういう付き合いだったか。と、何ヶ月か前の事を思い出す。
あの時はもう放心状態だったから、うろ覚えだった。





「やっぱり、ダメだったね。跡部くんおねえちゃんのことがまだ好きなんだよね。」
…」
「彼女として、もっとそばにいれば好きになってくれるかなって思ったんだけど…。
そばにいて、もっとわかっちゃった。跡部くんの気持ち。あたしには、全然むいてないよね。」
「俺は…。」
「ごめんね、無理につき合わせちゃって。今まで、ありがとう。」





スタスタと先を歩くの腕を掴んで、こっちを向かせる。


、まてよ!俺はまだ何も言ってねぇ!」


グイと振り向かせたに、なんだかあの時の、氷帝の校門のところで言葉を交わしたとかぶってみえた。
泣いてねぇ、けど、笑ってもない。今にも涙がでてしまいそうなのを我慢して我慢して、唇を噛み締めてる。
こういう所は、双子だなって思ってしまう。





「だって、跡部くん、いつもおねえちゃんを目で追ってるもん。
それに、一度も、あたしの事…名前で呼んでくれたことないよね?いつもって…。
あたし、思ったの。これ以上頑張ってもむだだって。」
「っ…!」
「本当に、もういいの。ごめんね、今まで。ありがとう…。」






俯いた顔から、涙が見えたように思った。
こんな時なら、抱きしめてやるのがいいんだと思う。
でも、俺が抱きしめたいのは、抱きしめなきゃいけないのは、こいつじゃない。






「悪い…。」
「ううん、いいの。あたしが悪いんだから。」
「悪い…」
「跡部くん、ほんとうにいいの。」
「悪い…」
「跡部、くん…」
「悪い…」







俺は何度、『悪い』と言ったのだろうか。
あまり覚えていない。
俺は結局、もどっちも傷つけた。最低だ。
空の暗さよりもさらに暗い、どん底に落ちたような気がした。





「跡部くん。」





俺も俯いてしまい、の腕を掴んだままじっと下をみつめて
いたらが、さっきとは打って変わった元気な声で話しかけてきた。





「最後にね、お願いがあるの。」
「…?」
「最後に、デートしよ。おねえちゃんも一緒に。」
も…?」
「あたし、おねえちゃんにも、跡部くんにも言わなきゃいけないことが、誤らなきゃいけない事があるの。
二人一緒の時のほうが…いいと思うから。」





そう言って笑った顔には、もう涙なんてなくて、あったのはいつも見ていた笑顔だけ。
でもその笑顔も、泣いているように見える。





「跡部くんの暇な日でいいから、教えてね?」
「あぁ。」
「あと…今度話す事きいても、あたしの事…嫌いに、なんないで…。お願いだから…。」
「…わかった。」
「…それだけ。じゃぁ、また明日ね、跡部くん。送ってくれてありがとう。」





まだあいつの家にはついていない。
けどあいつは走っていってしまった。
その姿が見えなくなるまで、俺はずっと見ていた。








これが、俺がみたの最後の笑顔だった。


  


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書くの遅くてすいません↓↓言い訳させてもらえれば、パソコンぶっこわれてました…。
んでもって永眠してしまったMyノートパソコン↓↓
また父と共同です(T□T)

2006.3.8  片桐茜



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