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ある港に停泊中のゴーイングメリー号。

今日の留守番は、めずらしく、サンジとウソップだった。

残りのクルーは、皆、それぞれ思い思いの用を足しに街へと降りていった。

サンジが残ったのは、ルフィが釣り上げた海王類を解体するため。

ウソップは新型卵星を思いついたとかで、朝から男部屋で作業を続けている。



・・・こんだけありゃ、当分困らねぇ・・・



サンジは愛用の包丁を手に、甲板でせっせと、捌いていく。

ある程度の大きさまで切り分けておかなければ、

キッチンで作業する事は出来ない。

一心不乱に包丁を走らせるサンジ。食に向いた海王類は以外と少ない。

その中でも、めずらしい海王イカであった。

足の太さからして半端ではないが、甘味が合って実に美味い。

それにめったに調理する事のない食材とあって、サンジは朝から張り切っていた。

鼻歌の一つも口ずさみながら、これから自分が作るであろう料理のレシピを

次々と思い浮かべていく。

まさに、コックの醍醐味、至福の時間であった。







ズガァーーーーーンーーーーッ





轟きわたる、1発の銃声。海に向けていたサンジの背に衝撃が走る。

油断は確かにあった。

白昼の出来事。船は港に停泊中・・・。

それでも普段のサンジなら気づいていたかも知れない。

だが、今日は目の前の食材に気を取られすぎていた。

咄嗟に身をよじったが、銃弾はサンジの左肩を深々とえぐりとっていった・・・。



「何もんだ、てめぇら!」



甲板にわらわらとよじ登ってくる、男達。見るからに人相が悪い。



「聞くまでもねぇって事か・・・。」



肩から溢れ出る鮮血、それでも、先頭の一人を海に蹴り落とす。

片手で肩を押さえ、右から左から襲い掛かってくる男達を次々と片っ端から蹴り飛ばしていく。



「オイッ、てめぇ、どこ狙ったんだ!ピンピンしてるじゃねぇかっ!」



「あ、ボス、すんません。当ってはいるんですが・・・。」



「まあ、いい。てめえら、ちょっとどけ!」



サンジはまだ、男達の人垣の中。

その人垣の一部がすっと割れると、ボスと呼ばれた男が、

ゆっくりとサンジの正面に進み出て来た。



「なかなか、おもしれぇ事してくれるな、ホンの2、3分で10人か・・・

 仕方ねぇ、こいつは俺がやるから、てめぇらはとっととお宝を捜せ!」



「てめぇら強盗か・・・。」



サンジの肩からの出血は止まらない。下向きの角度から、斜めに肉をえぐり取られた。

肩を押さえるサンジの指の間から、ごぼごぼと赤い血が湧き出てくる。



妙にのっぺりした、だが、どこにでもいそうな下衆な海賊。

とてもサンジの相手ではない、そう思わせる。



「ムートンショットォーーー!!!」



いきなりのサンジの大技、相手の腹に見事に決まる。

だが・・・。



「ぐっ・・・っふ・・」



逆にうずくまり、呻いたのはサンジの方。



「かてぇ・・・」



「ほう、なかなか、いいケリじゃねえか。」



ニヤニヤと笑いを含んだ、男の声。



「クソッ・・タレ・・・。ナミさんのお宝を守らねぇと・・・

 ポワトリーーーヌゥーーーーッ!!!」



再び、男の胸を蹴り飛ばすが、ビクともしない。

男はそのままサンジの足を掴み、反動をつけてサンジの腹を殴りつける。



「グッ・・ハァ・・・ァッ」



サンジの身体が宙を飛び、そのまま甲板へと叩き付けられた。



「残念だったな、俺は「ガチガチの実」の能力者。体中の皮膚がダイヤモンド並みに

 固いんだよ。てめぇの蹴りもなかなかだが、俺には効かねえな。」



床に倒れふすサンジを上からケリ飛ばし、身体が浮いた所に、もう一発パンチが入る。

一瞬意識が遠のきかける。



「サンジっ!」



その時、男部屋から、ただ事ではない様子を聞き付けウソップが上がって来た。



「ウソップ・・・来んじゃねぇ・・・」



床に転がるサンジを見つけ、思わず飛び出したウソップ、

あっという間に5、6人の男に取り囲まれる。



「動くんじゃねぇぞ、この男がどうなるかわかってるな。」



サンジの首を押さえ付け、ボスが怒鳴る。

硬直して固まるウソップ。その時、船の中を捜しまわっていた男達が戻って来た。



「ボス、めぼしいお宝はねぇみたいです。」

「ちっ、骨折り損か・・・」



ゴーイングメリー号は略奪はしない。襲ってくる海賊から頂く事はあるが、

ゾロとサンジの喧嘩が起こす船の修理代とルフィの食費でほとんど使い切る。

もっとも、ナミが上手く隠しているのかもしれないが・・・。



「バカじゃねぇか、てめぇら・・・へっ、ごくろーさまってとこだ。」



どんな状態であろうと、それでも空口をたたくのは止めない。



「うるせぇ、てめぇ、まだ懲りねぇのか。」



2発3発とサンジを殴りつける。殴られる痛みと、出血による貧血、

サンジはかろうじて、意識を保っている状態だった。



「タ・タバスコ星!」



見かねたウソップの卵星が、ボスの顔面を直撃する。



「ぐわぁーーー!!!てめぇぇぇぇーーーーそれをよこせぇーーー」



それでも卵星を警戒してか、ウソップのゴーグルを取り上げると、

顔を拭って、それをかける。

ウソップの顔面、腹、頭、容赦なく男の拳が降り注ぐ。



「ウソップーーー」



助けに入ろうとしても、身体が言う事を効かない。



「こんなシケタ船、用はねぇ、行くぞ!」



原形を留めなくなったウソップを放り捨て、

来た時と同じように、唐突に男達は帰っていった。







「クソ・・・ウソップ、大丈夫か・・・。」



返事はない。

自分の油断が招いた事態。

この、肩のキズさえなければ、もう少しマシに戦えたはず・・・。

普段の自分なら、あんな不様な姿を晒したりはしない。



「ウソップ、ちょっと借りるな・・・」



サンジはウソップの頭からバンダナを取り、

自分の左肩をきつく止血する。



「クソ、まだ、頭がフラフラするぜ・・・」



サンジは、くわえた煙草に火をつけ、ゆっくりと煙りを吐き出すと、

そのままゴーイングメリー号から降りていった。





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