本当にあったかもしれない怖い話
「手作りの物なら受け取ってくれるかも知れん。もともとはここから始まったんや。いくつか意見が出た中で、最初の頃の最有力候補は5円玉のネックレスだったんや」 「なんでだよっ!」 堪らず火村は突っ込んだ。なにをどういう風に思考したならばそんなものがお祝いになると思うのか。それが、どうしても理解出来なかったからだ。 無理矢理こじつけるならば5円=ご縁で、ご縁がありますようにってやつだろうが、結婚が決まっている人間にそれ以上ご縁があってどうする。 「5円とはいえ、結局は現金やんか。本人の首に2重に巻けるくらいの作ったら、1万円くらいにはなるやろ。お祝い代わり」 「祝いというより、嫌がらせだろう、それは。少なくとも俺は欲しくない」 「ええ〜、ゴージャスやん。ピカピカ黄金色に光る5円玉のネックレス」 「つーか、もうそれは、欲しいとか欲しくないとか言う問題じゃねぇよ。そんなに大量の新5円玉をどっから集めるっていうんだ。大阪中の銀行渡り歩くつもりだったのかよ」 思わず叫んだ火村にアリスはチッチッチッと指を振る。 「あほやなぁ火村。新品やなくても5円玉をピカピカにする方法はあるんやで。1も2もなくサンポール。これに付けると表面の汚れが落ちて、5円玉が新品に蘇るんや。バスタブに栓して、2000枚の5円玉をなるべく重ならないように並べるやろ。そこにサンポールの5本もぶちまけて1晩おいてみ、輝ける5円玉のできあがりや」 ものすご〜く楽しそうに語るアリスを見て、火村は別の意味で又してもため息を漏らす。 ここまで話が盛り上がって、しかも5円玉をピカピカにする具体案までがあったにも関わらず、よくぞ思いとどまってくれたと。 なので理由を聞いてみる。 「で、なんでそれはやめることになったんだ」 「ツレが冗談めかしてと本人にその話振ったら、電話の向こうでそれだけはやめてくれて絶叫されたらしい。それで、本人がそこまで嫌がるならやめよて。出来とったら綺麗やったと思うんやけどなぁ〜」 遠くを見ながら目をキラキラさせるアリスに、火村は決心する。 こいつと友人でいる間、俺は絶対に結婚しないと──
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