19. ANOTHER TIME
「涼、起きろ。30分経った」 「う〜ん。迅樹、もうちょっと」 「だーれが、迅樹だ。ほら、起きろって」 「ん〜。あれ? 赤石さん?」 「寝ぼけてるんじゃないよ。リハだ」 「そっか、ここで仮眠取ってたんだっけ……」 「お前、先輩を目覚まし代わりに使うなよ。そういえばお前、寝言いってたぞ。夢、見てたのか?」 「なんか、長い夢を見てた様な気がするけど、あんま覚えてない」 「長いって、30分程度でそんなに長い夢って見られるのかよ」 「さあ? でも、はっきり覚えてることが、ひとつだけあるんだ」 「何?」 「杉崎さんの出てくる夢だった」 「そっか。コンサートの直前に、いい夢見たな。成功するぜ、このツアー」 「夢見なんかで、そんなこと判断しないで欲しいな。ツアーが成功するのは、俺たちの実力でしょ」 「ハハ……、よく言った。確かにそうだな。今だからいうけど、僕たち全員、お前が戻ってくるの、心待ちににしてたんだぜ」 「光栄です。待たせてゴメンね」 「まったくだ。ほら、行くぞ」 赤石に促され、涼はゆっくりと立ち上がり、ステージへと向かう。 涼は帰ってきた。 光り輝くステージへと。 実力に見合う、自信と共に。 そして── もう二度と、彼がステージを降りることはない── FIN
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