「大友先生、ちょっといいっすか?」 とある金曜の午後9時過ぎ。 ノックの音にドアを開けて顔を出すと、2年の清水が立っていた。 週末のこんな──学園生の多くがろくでもないことをやらかしているか計画している──時間帯に、寮監の部屋のドアをノックする奴の目的は大方決まっている。 友達にはちょっと言えないディープな相談ごとってのを俺に持ち込む為だ。 因みに、ある意味お悩み相談のスペシャリストな筈の前任者(神父)のところには、こういう生徒はやってきていなかったらしく、そういう生徒が来た時は──みたいな内容の引継を俺は受けていない。 身内以外の女性から電話がかかってきても絶対に生徒には取り次がないこと、だなんて──携帯の持ち込みが許可された今となっては──殆どあり得ないことなんかより、よっぽど引き継いでって欲しかったにも関わらず。 大体、二十代前半の、しかも学校って社会しか知らない男に出来るアドバイスなんてタカが知れてる──つーか、ぶっちゃけあまりお役は立てない。 だが、いくらお役に立てなくて、例え今現在の俺が諸事情あって他人の相談事のれる気分ではなくたって、ジャージの上下に裸足という出で立ち──つまり、あからさまにくつろいでま〜すって状態──で「今は忙しいからまた今度」だなんて言い訳が出来るはずもなく「あ〜ん、手みやげあるのか。だったらいいぞ」だなんて、冗談めかした口調で応じるしかない。 「生徒相手にたかんなよ。って、実はあったりして。コレ、洗ってあるからそのまま食って」 と、清水が差し出したビニール袋には、なぜか金柑が──どんなに少なく見積もっても──30個以上は詰め込まれていた。 ☆ ☆ ☆ 「直ちゃんっ! どういうことなのっ!」町中で、いききなり自分の彼女に胸ぐらを掴まれたあげくに、そのまま喫茶店に引きずり込まれた俺も大概不幸だが、もっと不幸だったのは、その場に居合わせた三角の方だろう。 何かとお忙しいご身分だというのに、巻き込まれる形で俺たちの別れ話に同席する羽目になったのだから。 三角としては、こうなったのは自分にも責任の一端があると思って、援護射撃のために同席してくれたらしいが、それは違う。 俺が彼女を放っておきすぎたのだ。 元々、不動産関係の会社に勤める彼女と俺は休みが合わせにくい。 俺も彼女も一応週に二日間休みはあるが、俺の休みは土日で、彼女の休みは火曜とその他1日ってだけですれ違い気味である上に、たまに合った休みでさえ互いに──というか主に俺の方に──雑用が入る場合が多かった。 春・夏・冬と年に3回も長期休暇がある学校教員が、余所から見れば楽そうで、しかも暇そうに見えるのは解らないでもないが、実際はそんなに暇でもない。 特に、教職1年目というのは、毎回毎回慣れない指導案及びその他資料づくりに四苦八苦する上に、やたらと出席しなければならない研修会も多い。あげくに俺ときたら、寮看を兼任しているのだから、毎日をやり過ごすだけで手一杯状態だ。 そんな中で、俺が彼女のために唯一したことといえば、今年のお盆休みを向こうの日程と合わせたことだろう。 例えそうするために、あの邪悪そうな笑みを浮かべる保健医にありもしない恩──絶対にあいつは、自分が中原先生と一緒に宿直をしたかったんだと俺は確信している──を売られてたとしても、そんなことは彼女の知ったこっちゃない。 彼女の知っているのは、やれ学校行事だ、やれ研修会だ、やれ寮がらみの雑用だと、彼女を放っといているばかりいる俺の姿だ。 そして今回──やっぱり学校がらみの雑用という理由で誘いを断った俺が、のんきに生徒と連れだってとある──しかも、彼女が大好きな──アーティストのコンサート会場から出てきたところを運悪く彼女に目撃されたのだ。 チケット発売当日に仕事をしていて、どうしてもチケットを手に入れられなかった彼女は、どうせ暇だからと、その会場にグッズを買いに来る気になったらしい。 そんなこと思わないでくれていりゃ、こんなことには……と後から思いはしたものの、考えてみれば、この件があろうとなかろうと俺と彼女の恋人な関係は余命幾ばくもなかったのだろう。 そうでなければ、一方的にまくしたてるだけではなく、彼女の方にもうちょっと聞く耳ってものがあっただろうから。 でも、俺だって最初から彼女を怒りを解くのを諦めきっていた訳じゃない。 店内の客と従業員の視聴覚を全て集めているのを知りつつも、彼女の言葉の合間を縫って、あそこは教育文化会館で、三角が幽霊部長をつとめる(幽霊部員ならともかく幽霊部長ってアリかよと思うけど、生徒会長を頭に据えときゃまず部は安泰だってのがその理由だろう)ブラバンの定期演奏会が行われる予定で、今日はその打ち合わせだったってことは言ってみた。 だけど、俺にとっては紛れもない事実であるその主張も、彼女には言い訳にしか聞こえなかったらしく、最終的にはコップの水をぶっかけられて、フラれ男のいっちょ上がり。 まあ、それでなくとも俺に対する不満と怒りが蓄積していたところに、この仕打ち──それが例え誤解だとしても──では、彼女でなくとも堪忍袋の緒が切れると当事者の俺でも思いはするが、そう思ったところで足かけ4年もつきあい続けた女に、こんな形で振られるのはキツかった。 その場に居合わせたせいで、俺のとばっちりをうけて水難に遭ったあげくに、その後年上の泣き言を聞かされる羽目になった三角──俺だって年下にそんな話をするのはどうかと思うけど、面倒な説明なしに愚痴れる三角が一番話しやすかった──には「そう思うなら俺に愚痴ってないで、彼女に土下座でもして謝ってこいよ。なんなら俺も一緒に謝ってやるし」というありがたい言葉を頂戴したが、そうしたところでもう駄目なのは、誰でもなく俺自身が知っている。 三角に愚痴っている内に気づいた悲しい事実。 俺は、彼女を失ったことではなく、自分の運の悪さを嘆いてる── ☆ ☆ ☆ 「お前、アレ、どーした訳?」とりあえずもらった金柑をひとつ口に放り込んでその爽やかさを味わった後に、冷蔵庫から缶コーヒーを取り出して清水に差し出しながら俺は尋ねた。 「田舎のばーちゃんですよ、ばーちゃん。俺が一回うまいっていったら、毎年毎年大量に送ってくんですよ。いくら好きでも段ボール一箱はキツいっす。ってな訳で、無理矢理ダチに配って歩くもんで、毎年この時期の俺のあだ名は『金柑星人』ですよ」 と、顔をしかめて愚痴りながらも、そのばーちゃんに送ってくるなとは言わない辺りが、清水のババ孝行なところだ。 同じような経験がある俺は、思わず微笑んだ。 「あー、ばーちゃんって何でか例外なくそうだよな。俺も大学生の時、スイカ4玉送ってこられたことあるよ。寮にいる時だったらまだしも、一人暮らしの俺にどう処分しろってんだよな」 「どうしたんですか?」 「頑張って飯代わり2個までは食った。残りは遊びに来たダチに無理矢理1個ずつ持たせた」 「やっぱそうなっちゃいますよね〜」 ははっ、と力無く笑ったかと思うと、清水は急に唇を噛み俯いた。 その様子に俺も気を引き締めた。 彼のこの仕草はいよいよ話が本題に移る合図だからだ。 ──さてさて、どんなびっくりどっきり告白が飛び出すことやら…… お願いですから『実は俺も権田や鬼頭みたいにスカートはいてみたいんです』みたいな、これ以上食欲がなくなる内容じゃありませんように。だなんて祈っていることは、決して口には出せない、でも事実。 そんなことを考えながら、気詰まりなこの時間をやり過ごしていると、清水が意を決したように顔を上げた。 「単刀直入に聞きます。男同士でヤる時って、どうやったらいいか先生ご存じですか?」 「なっ──」 なっ──の後何が言いたかったのか自分でも解らないまま、俺は絶句した。 いや、確かに今までだって『僕、××先輩が好きなんです。どうしたらいいでしょうか』とか『実は俺、△△先生と付き合ってるんですけど、最近彼の態度が冷たくて。やっぱ、俺が子供だからでしょうか』とか『俺の恋人、中等部の1年なんだけど、手ぇ出したらやっぱ犯罪?』だとかの、答えようのない──というか、思わずそんなの俺の知ったことかと吐き捨てたくなる相談を受けたことはある。 とはいえ、本当に吐き捨てる訳にはいかないので、その度に『渡す渡さないはともかく、その先輩への気持ちを手紙に書いてみたら』とか『期末試験前だから単に忙しいだけだと思うけどね』とか『自分でそう思うならやめておけ』とかいう、我ながらいい加減だと感じるアドバイスをしてやり過ごした。 つーか、それでなんとかなってきたのは、奴らがアドバイスを望んでいた訳じゃなくて、単に自分ひとりではもてあましてしまう胸の内を誰かに吐き出したかっただけなんだ──と気づいたのは、つい最近。身をもってそれを実感したからだ。 とにかく! 知ったこっちゃないってことならともかく、そんなん知っててたまりますかってな内容を質問されても俺に答えようがある筈がない。 それとも何かい? 俺は生徒達から、いかにもそんなこと知ってそうな人としてカウントされちゃってるとでも言うのかよ。 ──それは嫌だ……嫌すぎる…… 「先生?」 清水に顔の前で手を振られ、俺は我に返った。 「あ、いや……なんつーか、その…アレだ」 我に返ったところで、何を言えばいいのかなんて解る訳もなく、俺はただ間を持たせるためだけに、訳の解らない台詞を口にした。 こうしている間に何かを考え出さなくちゃ、と思いはするものの、頭は空回りするばかりでいいアイディアなどさっぱり浮かんでこない。 ああ、なんだか頭痛がする上にめまいまでする。 いっそ、このまま救急車で運ばれてしまいたい──と赤いランプと救急隊員に思い浮かべたところで、俺は思いだした。 ウチの学校には、その手のことの専門家がいることに。 そう、白衣に今時黒縁めがねのあの男だ。 「ほら、彼。そういうことは俺じゃなくて、保健医の天王寺先生に相談した方がいいんじゃないかな。ヤり方を教えてくれるかどうかはともかく、全く知識のない俺よりは、色んな意味で適切なアドバイスくれると思うし、なっ。そうしようや清水」 こんなことを言っていることが天王寺に知れたら、やっかいごとを押しつけるなと怒られそうだが、知ったことか。 適材適所という言葉があるように、相談事にもその種類によって適役がある。 ──もし、天王寺が清水に手取り腰取り教えてあげる気になっちゃったら、ごめんね中原先生。 と、彼と恋仲だと噂される──真相の程はともかくとして──中原先生には、一応心の中で謝りはするものの、所詮他人事。 頼まれたからといって、ほいほいそんな気になるような奴に惚れたのは中原先生の責任だ。 そんなこんなで、すっかり気持ちが楽になって、清水の肩をポンポンと叩いていた俺は、いきなりその手を強い力で握りしめられ驚愕した。 「し、清水?」 下から俺を見上げてくる清水の視線は、怖いほどに真剣で、俺は彼の名を呼びながらも、思わず身体を後退させた。 だが、背後の壁に行く手を阻まれ、殆ど下がれないままにその動きを止めざるを得なくなる。 「天王寺に相談して教えてもらったところで、こっちがヤられるのがオチでしょ。でも、俺、ヤられるんじゃなくて、ヤりたいんだよね」 ──はっ? それがどうした? 「結果的にヤり方が解ればいいんじゃないのか?」 俺の言葉に、清水はチッと舌打ちをしてみせた。 「その辺の考え方が、俺の話を他人事としてしか聞いてなかった証拠だよな。自分に置き換えて考えてみろよ。自分の女を喜ばせたいからって、テクニシャンの男に試しに自分がヤられて見ようと思う? いくら女顔の直海ちゃんでもそんなこと思わねーだろ」 ──お説、ごもっとも。 清水の態度と言葉使いの豹変ぶりに驚きながらも、この時の俺にはまだ、そんなことを思う余裕があった。 その余裕が吹き飛んだのは、いきなり膝を立ててこちらに向かって来た清水が、そのまま俺を壁に押しつけた時だ。 「し、清水、お前何する気だっ!」 「今更解りきったこと聞くなよ。体験実習に決まってんじゃん。それとも何? 一応、天下の和泉澤学園生な俺に『そりゃあ、ナニだろ』って、頭悪そうな台詞を言わせたい訳?」 いや、それこそいくら俺だってこの状況がどういうことであるか想像出来ない訳じゃないが、現実として認識はしたくない、それだけだ。 「別に、どんな台詞も聞きたくないから、早くどけっ!」 言って、清水の身体を押しのけようとした俺だが、いかんせん体格に差があるので──というか、そもそも俺が太刀打ちできそうな体格の持ち主なんて全校生徒の五分の一位しか存在しないが──ただもがいたあげくに、体力を無駄に使っただけだった。 大体、なんで今の俺ってば、ジャージ上下だなんて世にもガードの甘い服を着てるんだ──いや、くつろいでたからだけど──じゃなくって、とにかく神様でも仏様でもこの際悪魔でもいいから誰か助けてくれっ! 壁に押しつけられながら、とかなんとか思っている内に、両手をがっちり掴んで俺の動きを封じた清水の顔がどんどん間近に迫ってくる。 ──もう駄目! と、俺が顔を背けながら、思わず目を閉じた時── ゴンッ! 鈍い音がして、俺の両手は突然自由を取り戻した。 一体全体何が起きたのかと、恐る恐る目を開けた俺の視界に最初に飛び込んできたのは、車に轢かれた蛙のような格好で意識を失っている清水の姿と、その脇に転がる──つい先日、例のばーちゃんが送ってきた──高崎みやげのダルマだった。 流石ばーちゃんがくれたダルマ、本棚の上から落ちてきて俺を助けてくれたのかと思ったのはほんの一瞬。 たちまち俺は、頭上から振ってきた声に、そんな奇蹟が現実には起きやしないことを知らされる。 「救世主、三角定規、ただいま参上」 ──あ、三角。……って、出て来んのが遅すぎんだよ! 俺は、窮地を救われたことも忘れて、目の前の生徒会長に心の中で悪態をついた。 ☆ ☆ ☆ 「大体、あの状況で、なに目ぇ閉じてんだよ。もしかして俺のしたことって親切じゃなくて、余計なお世話だった訳?」清水の失神を単なる不幸な事故として処理し、ルームメイトに引き取らせた後、ようやく落ち着いた俺に、三角は開口一番聞き捨てならないことを抜かした。 「んな訳あるか。大体っていうなら、大体お前こそ、なんでもっと早く助けに出てこなかったんだよ」 俺の言葉に、三角はあきれた表情を浮かべる。 「あそこに俺がのこのこ寝室から出てったら、話がこじれるだけでしょうが。それとも学校中に生徒会長と大友先生はデキてるって噂を広めたかった訳?」 「いや……それはちょっと──いや、かなり嫌かも」 ここで注意を喚起するが、三角がウチの寝室に隠れていたのは、誓って俺たちがそーゆー関係だからではなく、清水が突然やってきたからだ。 そして、ウチに三角が居たのは、なんつーかまあ……俺が三角に彼女──いや既に彼女だった女というべきか──のことを、しつこく愚痴っていたからだったりする。 だからして、そんな不名誉な上に頭の悪い奴らに絡まれる機会が増加しそうな噂を囁かれる筋合いはない。 まあ、筋合いがなくても囁かれるのが噂ってやつだけど。 「だろ。だからこそ、ダルマ抱えて本棚の陰からタイミング伺ってたんじゃん。文句言う前に感謝してよ」 「お前、口のききかた──」 偉そうにふんぞり返る三角に一瞬腹を立てかけたものの、俺は途中で口をつぐんだ。 考えてみれば、こんなに迷惑をかけまくっているのに、一度もまともに三角に感謝の言葉を告げていなかったことに気づいたからだ。 「いや、確かにその通りだ。色々ありがとう、三角。本当に」 多分、思いがけなかったであろう俺の素直な感謝の言葉に、三角は大げさに目を見開いて見せた。 「いや、ま、なんか、改めてそんなこと言われると、こっちも背中が痒くなんだけど……」 照れくさそうにそういうと、三角は思いついたように「あっ」と声を上げた。 「そういや、先生。清水のこと無罪放免にしちゃってよかった訳?」 「ん〜、まあ、許し難いとは思うけどな。よっぽど知りたくて切羽詰まってたんだろうし許してやるさ。それにあいつ、目が覚めたら絶対にこう思うぜ。天罰って本当に下るんだって。そう思ってれば、もう滅多なことはしてこないだろ」 俺の言葉に、三角は肺が空になるんじゃないかと心配になるくらいの大きなため息をついてみせた。 「あのね〜、先生。本気で清水の言ったこと信じてるわけ? あんなの先生に相談するふりして、そっち方面に話もってく作り話に決まってるでしょーが」 「えっ! マジ?」 本気で驚く俺に、三角はやれやれと言わんばかりに肩をすくめた。 「先生ガード甘過ぎ。それでも和泉澤の卒業生かよ」 「──って言われてもなぁ。俺の友達みんなノーマルだったし」 「ある意味すごいよ先生。それ、何も考えずにしかも目隠ししながら地雷原歩いてるのに、偶然今まで無事でした並に強運じゃん。まあ、友達も良かったんだろうけど」 「俺が? 強運?」 「先生が自分は運が悪いって嘆いてるのは知ってるけどさ。それって紙一重じゃん。全てにおいてギリギリセーフってことは、アウトは1個もないってことでしょ。それ、そうそうあることじゃないよ」 「そうか?」 「そうだよ。事実、今回もちゃんと無事だったじゃん。偶然俺を呼びつけて愚痴ってたおかげで。するとこうならない? 彼女に振られたことも幸運だったって」 三角の言葉に、俺はう〜んとうなり声を上げた。 「そこまで言うと、ちょっとこじつけっぽい気もするけど……まあ、そういうことにしとくか」 「そうそう。な、先生は幸運なんだよ。だって──」 三角は一旦ここで言葉を切る。 なんだ、気になるじゃないかと俺は三角に言葉の続きを促した。 「だって──なんだよ?」 「俺と出会えただろ、直海ちゃん」 「……」 にやりと笑ってこう告げると、三角はじゃあなと手を振り、この部屋を後にした。 いつもならば「なーにが、俺と出会えただ。寝言は寝て言え」ぐらいは余裕で言い返す俺が、無言で三角の背中を見送ったのには理由がある。 三角が初めて俺のことを『直海ちゃん』と呼んだからだ。 彼は俺がこう呼ばれるのを嫌っているのを知っていて、どんなにタメ口になった時でも、先生という呼び方だけは決して崩さなかったから。 それに、誰に何度呼ばれても嫌でしかなかった『直海ちゃん』という呼びかけが、三角の口から発せられると、そんなに嫌じゃなかった自分にもびっくりしていた。 ──つーか、三角。それってなんの作戦? |
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