Alice──AL0000A


エピローグ

「うわ〜、感じわる〜」
 アリスがシステムの再起動をしていた、丁度その頃。
 キャロルを傍らに置いて、風間は自宅のソファで悪態をついていた。
 以前、火村に受け取りを拒否された遺言状と共に、管理責任者のセンター登録に関する書類を全て同封し、風間がアリスに持たせた封筒には、超小型の盗聴器が仕込まれていた。
 わざわざ携帯電話で火村の声紋を取ってまで、アリスのプログラムを書き換えてやった風間には、その結果がどうなるか知る権利がある筈だから。
 まあ、突然アリスが目の前に現れて、火村がどういう反応をするか、興味があったというのが、本当の理由ではあるけれど。
 そうした結果、風間はやっぱりアイツは好きになれないという結論に達した。
 あの封筒の中には、きちんと管理責任者を書き換える手順を記した文書も同封されていたのに、それを見もしないで、あっさりその手順を踏まれたら、大抵の人間は気を悪くするというものだ。
「あ〜あ、あほらしい」
 呟くと、風間は手にしていた受信機を床に落とし、靴の踵で踏みつぶした。
 これ以上、彼らの様子を盗聴していたところで、自分の気分が悪くなるだけだ。
「まっ、いいさ。僕にはキャロル、君が居るしね。300年も前のアンドロイドの1体くらい、あの若造に譲ってやるさ」
 そう、自分に語り掛ける風間の悲しげな表情に、気付かぬ振りでキャロルは応える。
「ええ、そうですね──」

FIN


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