My Favorite Story.


図書室から借りて来た本を開いてみてびっくりした。

名探偵とその親友が主人公の推理小説は超人気のシリーズで。
新刊は図書室でも順番待ちだった。

やっと僕の番が来て、昼休みに借りて来た。
教室に戻って開いてみたら中から地下鉄の定期券。

よく見てみたら持ち主は一言も話した事もないクラスメイト。
本を返す時に入れたままにしちゃったんだろうか?

返してあげたほうがいいよね。
そう思って彼の方を見たら目が合った。

話しかけようと思ったのに目を逸らしてしまった。
だって、僕はずっと彼の事が好きだったから・・・。

帰る時に必要だよね。
だとしたら、タイムリミットは放課後まで。

何度か話しかけようとした。
だけど必ず邪魔が入ったり、声が出なかったり・・・。

僕は何を緊張しているんだろう。
告白するわけでもないのに。

『本の中に定期入っていたよ。』
それだけですむのに。

あっと気が付いた時には、もう放課後で。
僕はぼんやりと、彼が部活をやっているのを見ていた。

とにかく部活が終わるまではどうしようもない。
僕は借りて来たばかりの本を開いた。

そういえば、僕が推理小説を読み出したのも、彼が読んでいるのを見たから。
彼の事が知りたくて、同じ本を借りて読んだんだった。

名探偵の隣で笑っている親友がうらやましかった。
僕も彼の隣で笑ってみたかった。

でも、僕にできるのはこうやって遠くから見つめるだけ。
一言、声をかけることもできないなんて・・・。


ボールが目の前に転がって来た。
走って取りに来たのは彼。

彼は僕に気が付いて、笑いかけてくれた。
僕の心臓が跳ね上がる。

「その本、俺も読んだよ。そのシリーズ、好きなの?」
・・・僕に話しかけてくれているの・・・?

「うん・・・。」
かろうじて、それだけ答える。

「そっか。どの話が一番好き?」
彼が笑顔で話しかけてくれる。

それは、本の中で見た一シーンのようで・・・。
ずっと前からの親友のようで・・・。

「ああ、先輩が呼んでる。またな。」
そう言って踵を返す彼。

「あ、あの・・・。」
僕は思いきって声をかけた。

勇気を出すなら今しかないと思った。
声も、手も、脚も震えている。

「あの、僕・・・。」
彼がゆっくりと振り返る。


───物語の結末は、最後の章を読むまでわからない───




─The End.─

2004.5.14




※桐島沙夜香様のサイト『Half and Half』で、
 ちょっと前に上げられていた短編『タマゴの中の真実』があまりにも好みだったので、
 ミラー番を踏んだ際に『たまごの中の真実』みたいな短編とお願いしますと
 リクエストして書いて頂きました。
 好きだという割に、思い切りよくタイトルを間違っているのが、すごく私らしい(爆)
 カタカナだったんですね。ごめんなさい。
 桐島様、素敵なお話を本当にありがとうございました。
 これは、タイトル通り私のお気に入りの話です♪

この話を書かれた桐島沙夜香さんのサイトはコチラ→『Half and Half』

このお話、秘かに冴木が書いた『彼』視点の話があったり。
お暇でしたら、覗いてみてやって下さい。

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