BLISSFUL RELATION -1- |
“ずっとふたりで居ったから”て言えん言葉もあるよ。 たとえば別々の仕事は嬉しないなとか・・・一緒にどっか遊びに行こか、とか。 ふと洩らしたらもう、いまのままでは居られへん気ぃがして。 おかしいやろ。 こんな不安に囚われるやなんて。 でもな、こんな関係がずっと壊れてしまわんこと心から願ってた。 KinkiKidsが好きやから・・・それを崩してしまうんが、なによりも怖かったんや。
「オレ、もうオマエと歌うたいたないねん」 あまりにも唐突につきつけられたコトバが、ホンマに自分に向けられたモンやと理解するまでに数秒かかった。 「ちょっ・・・ちょっと待てや剛。本気で言うてんのか?」 頭ん中に浮かぶハテナマークをかきわけながら今日、なんか変なコトでも言うたかを必死で思いかえす。 剛がヘソ曲げるトキは大抵、俺が原因やから・・・。 「本気や。せやから明日のカウントダウン・ライブ、出ェへんから」 「ゲ・・・剛正気か?それはマズいやろ。仕事なんやし・・・俺らだけやナイんやで?」スッと立ち上がって楽屋を出ていこうとする剛を追いかけるように腰を浮かせる。 引きとめる上手いコトバが見つからんのと理由にサッパリ心当たりナイのんが重なって気ィばっか焦ってくる。 「な、ホラ・・・一緒にうたってくれてるみんなに悪いと思うやろ?イノッチとか、ギター弾いて練習しとったやんか。リーダーやって怒んで・・・なぁ、剛ぃ?」 いっつもやったら他人に迷惑かけるんがいっちゃんキライな剛が、この辺で『ウソやてウソ』とか言うてフザけるハズや。 俺に思い当たるコトがないんやったら、また剛のタチの悪いジョークに決まっとる。 「いーかげんにせェよ!この忙しい時期にダダこねよって・・・」 大ゲサに廊下にまで出るんを追ってワザと大きな声で言う。 誰かがききつけて出て来んのを謀ってまたしょーもないコントでもするつもりなんやな・・・にしても、そんならそーで先言うといてほしーわ。 一瞬でもドキッとするっちゅーに。 「俺のドコが気にいらんのよ、剛。俺はこんなに剛のコト想ってんのに・・・」 そう言っていつもの調子で肩に手をかけようと近づく。 最近のマイブームは剛の恋人ヅラして歩くことやから、こんなセリフもスラスラッと出てくる。 『そんなコト言うとって、よォ恥ずかしないなぁ』と剛は困った表情して言うけど、そんな反応がたまらなく面白いからやめられへんのや。 「こんな一途な俺を見すてんの?つよ・・・」 言いかけたコトバをさえぎるように剛は、サッと身をひいた。 肩に置いた手でからだごと引きよせようと力を込めたとたん、傾けたいきおいで俺の手をはらう。 「・・・ゴメンな・・・」 ボソッと呟いた声に気をとられて一瞬反応が鈍ると、そのスキをつくように剛は回れ右をして楽屋にすべり込んだ。 ふだんのボーッとした動きからは考えられへん素早さにア然としながら俺は締め出された扉の前に立ちつくした。 「オイッ!?剛・・・つよし?ナニしてんねん。ホンマに怒るぞ!」 向こうからカチッとカギをする音が響いてきて我にかえる。 剛があんなコト言いだした理由も、こんな強硬手段にでなあかんかったワケも全然わからんし・・・身に覚えもナイ、と思う。 「俺、おまえになんかしたんか?そーやったら・・・あやまるし。言うてくれんとわか らんねんけど・・・」 「・・・少し、ひとりにさしてくれんか?たのむわ」 ドンドンと扉を叩きながら抗議すると内側から剛の声が、小さくそれだけ応えると物音ひとつしなくなった。 「あれ・・・光ちゃんどしたの?締め出し?」 「あーイノッチ、まぁそんなトコやな。それよかV6リハやなかったん?」 「んーちょっと忘れモノ。でも・・・大丈夫なのか?」 たまたま戻ってきたらしいイノッチが心配そうに扉を眺める。 なぁーんやいかにも『気遣ってます』ゆう表情が妙にしゃくに障るんは、剛の行動のわけが俺にはさぁっぱりわからんからかもしれん。 「いつものことや、気にせんでええよ。そんなコトより早よ行かなあかんのやないの?」 「おぅ。じゃまたあとでな」 かるく言葉を交わしてうけながす。 ステージそでへと走ってく人影をなんとなく見えなくなるまで見送った。 「とは言うてもな・・・」 あいかわらず楽屋ん中からはなんも聞こえんのを確かめてから呟く。 ココロは、何故かさざ波のようにざわついて落ち着かない気持ちのままで楽屋をあとにした。
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